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カゲビト  作者: 永眠布団
第三章 新たな任務

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第18話 『情報交換』



「それにしても、……その、なんでしょう」


「流石にこればかりは仕方ねぇよ」


「……ん」


 真城達は波嵐市へと入るや否や、一直線に波嵐高校へとたどり着いた。

 そうして今は、高校と目と鼻の先にあるコンビニのトイレを利用して、それぞれが波嵐高指定の制服へと着替えた所であった。

 真城、切矢、立花と順番に着替え終え、コンビニ前の駐車場に集まって、呟いた言葉がソレだった。


「まぁ、着替える前から分かってた」


「と言っても、本当にこれで入るんです? ……変に悪目立ちするだけなんじゃ」


 切矢と真城はそれぞれ顔を見合わせて今一度、立花を確認する。


「だ、ダメで……しょう、か?」


 目の前には波嵐高の制服に着替えた立花。

 そんな立花の姿を見てやって、二人して顔をしかめる。


 その理由は、制服が壊滅的に似合ってない……からではない。

 いやまぁ、それも理由の一つと言えばそうなのだが、根本的な部分はそうじゃない。


「本部だって馬鹿ばっかじゃないだろうに……こうなる予想は立てられなかったのかね?」


「誰も指摘しなかったんですかね。……ていうかむしろよくこのサイズがありましたよね。作ったんでしょうか?」



 二人が顔をしかめる理由それは、――立花の身体のサイズに問題があったのだ。

 

 ……というのも、元々立花は中学生。

 しかもその中でもとりわけ身長が低く、小柄なのだ。

 なにせ、真城が初めて出会った時も小学生と勘違いした程である。


 故に当然、高校生の制服が似合うはずもなく。

 完全に制服に着られている形となっていた。


「でもまぁ今が夏服で良かったよ。冬だったらブレザーとか袖が長すぎて手が出なかったんじゃないのか?」


「いやぁ、そういった場合なら本部がちゃんと長さを調整してくれるのでは?」


「あ、あの……そんなにみ、見られるのは、は、恥ずかしくて、その」


 まじまじと二人の男から品定めのごとき視線を受け、立花は両手で顔を覆い隠す。

 その手の隙間から微かに見える立花の顔は、リンゴの様に赤く染まっていた。


「あぁ、悪ぃ。……にしても流石に目立つな、これだと」


「どうします?」


「う~ん、ん? ちょっと待ってろ。ひなた、リュックを貸してくれ」


「ん」


 何かを思いついたのか、切矢が立花の背負うリュックを要求する。

 立花は頷き、素直にリュックを渡すと切矢がその中を確かめる。


「……あったあった、これだこれ」


「これは?」


「“変装マシン”」


 切矢が差し出したのは……小さな画面のついた腕時計の様な代物だった。

 真城は最近の電子機器系の知識には疎いので詳しくは知らないのだが、いわゆる“スマートウォッチ”と呼ばれる物ではなかろうか?


「これが……“変装マシン”なんです? なんか俺の持ってるイメージと違うと言うか、もっとこう“グルグルメガネ”とか“鼻メガネ”、“付け髭”なんかの小物類を想像するというか……」


「パーティーグッズか何かだろ、それ」


「それでその“変装マシン”は何に使うんです? いくら変装しても背丈はどうにもならないのでは?」


「いいや、この“変装マシン”にはもう一つの機能があってな。それを使う事でいわゆる透明人間になれるのさ」


「……どういうことです?」


 切矢の持つアイテム、“変装マシン”。

 名前からして別人になり変われるというのは想像に難くない。

 しかし、別人になれる事と透明人間になれる事では、イマイチ点と点が繋がらない。


「“黒箱”の機能については知ってるか?」


「部屋の壁全域を影で覆って、部屋内部に影人を閉じ込めるっていう?」


「あぁ、だが“黒箱”にはそれ以外にも、部屋の外から見た人間の視界を誤魔化すって機能もあるんだよ」


「そういえば、確かに」


「その機能の応用さ。全身“影纏い”をした影の表面にその“人間の視界を誤魔化す”加工を施すんだよ。別人のアバター……テクスチャを貼り付ける感じだな。んでその別人のテクスチャをあえて貼らずに、周りの背景と同化出来るようなテクスチャを貼り着ければ……理論上は透明人間にもなれるって寸法さ。まぁ俺が今説明したほど簡単な代物でもないんだけどな。要するに機能のロジック、論理の話ではって事さ」


「ほぇ~……」


 切矢からの説明を受けて、真城は言葉を失う。

 確かに話を聞く限りだと、透明人間になれるという話は本当らしい。

 神崎は本当に変な物を作る天才だ。いや、本当に。


「じゃあ、それを使って立花さんには潜入してもらうわけですね。それなら確かに目立たない。……因みに、俺達の分は無いんです?」


「あぁ、これ一つしか持ってない。これはその昔、神崎が作った試作品なんだが、借りた後そのまま返すのを忘れてたやつなんよ」


「えぇ……」


 

 等々。

 そんなこんなで紆余曲折を交えながらも三人の準備が整うと、潜入調査を開始する。


「それじゃ、簡単な手順を確認するぞ。まずは手分けして“幽霊騒動”に関する情報収集。並びに影人化を起こしている生徒達の確認と可能なら排除。と、こんなところか。とりあえず今が14時だから……授業が終わる16時半まで調査して、一度屋上にでも集まろう。それ以降の事はそこでの情報交換次第って事でどうだ?」


「了解です」


「ん」


 切矢の言う大まかな手順を把握して、真城と立花も頷く。

 それと同時にそれぞれが別々の方向へと動き出す。



……


…… ……



 そうして時は過ぎ――。



 時刻は16時半の少し前。

 波嵐高校の屋上……ではなく、波嵐高校の周囲に建てられた家々のその一つ、三階建てのアパート。その屋上に真城達は集合していた。


 何故、波嵐高校の屋上に集まっていないのか?

 それには真城達の誤算があったからだ。



 大体の場合、高校の屋上というものは立ち入り禁止となっている。

 それは単純に“怪我の防止”や“自殺の防止”などと理由は様々あり、少なくとも波嵐高校もその例にもれずに立ち入り禁止となっていた……はずだった。


 鍵がかかっているのなら、いつもと同じ手口で影を使って鍵を開け、侵入してしまえば良いのである。

 そんな風に考えていた時期が、真城達にはあったのだ。


 しかし、初めに切矢が屋上にやって来た時、不思議と屋上の扉に鍵はかかっていなかった。

 そうして『なんだ?』と警戒しながらも屋上へと足を踏み入れた、……その結果、



「ねぇ、スマホのバッテリー貸してくれなぁ~い。残り3%なんだけど~~」


「草ァ~、亜希(あき)さぁ何にそんなに使ってんの?」


「欲しいキャラ出ないんだよねぇ、これ絶対確率いじってるわ~」


「ねぇぇぇえええええ!! またすり抜けたんだけどぉ、おかしくない?? また課金しなくちゃじゃん!! ねぇ、山田(やまだ)ァ」


「ハイハイ、分かってるって。……てなわけで分かるよね? こっちもお嬢達がうるせぇんだ。早く今月分の金、払ってくんね?? まだ痛めつけないと分かんない??」


「がっ……ヒュッ、もう出せるお金無いんだって……言って、……グェ!?」


「あのさぁ。出せる出せないじゃない訳よ。払えってんだよ、分かる? 無いなら無いなりに何かあるでしょ? 頭使えよ、能無しがよぉ~、別にお前の金じゃなくても良いんだよ? ほら、色々思い当たるのあるでしょ? どうなのよ、明日までに持ってこれるの??」


「ねぇえ早くしてよぉ、コイン無くなっちゃったじゃん」


「私も私も!!」



「…………、」


 とまぁ、不良達のたまり場の一つである事が分かったからだ。

 故に、


(何だ何だ、いじめの現場か?)


 切矢は気づかれないようにそっと扉を閉めると、一度屋上から距離を取る。


(あいつら勝手に鍵開けて屋上入ったな!? いや、むしろ日頃からこうだからって既に教職員が諦めてる可能性すらあるぞコレ……)


 少なくとも、ピッキングのようなものの類で無理やり鍵をこじ開けた痕跡はなかった。

 それならそれで、切矢ももっと早くに気が付いた。

 無理やり開けた跡が無いのなら元々鍵がかかってなかったか、或いは生徒の誰かが職員室なりから鍵を盗んで開けたかどうかである。

 ……が、今はそれがどちらでも構わない。

 切矢には正直、興味がない。というよりも問題なのは、


(どうする!? 集合地点に屋上が使えなくなったぞ!!)


 時間からしてそろそろ真城と立花もやって来る頃合いだ。

 早く別の地点を探さないと面倒だ。

 真城はともかく、立花があの集団に見つかれば……一目で怪しまれてしまう。

 まぁ、二人だって早々に異変に気付くだろうし、不用心に屋上にツッコまないとは思うが、しかし……。

 一応、専用端末で屋上が使えなくなった事を端的なメッセージで伝えておく。

 

 そうして、校舎の窓から辺りの様子を確認し、


(あの三階建てのアパート。あそこにしよう、あの高さからなら向こうからこっちの様子も伺える!!)



……


…… ……



「問題はあったが、……とりあえず情報交換といこうか。どうだった?」


 仕切り直しとばかりに切矢はゴホンッと一つ咳払いをすると、真城と立花を見渡して本題を切り出した。

 それに対し、最初に話し始めたのは真城だった。


「俺は稲守賢史(いなもりけんし)について調べてた」


「稲守っていうと、“幽霊騒動”の?」


「はい。稲守の影人が今回の事件を引き起こしている元凶ですからね。どういった経緯で影人化を引き起こしたのか……それが分かれば、或いは影人の狙いも絞り込めるんじゃないかと思って。資料によれば“稲守はいじめを受けていた”って事らしいので、もしかするとその加害者がターゲットって事もあるんじゃないかと」


「なるほどな、……それで結果は?」


「それなんですが……稲守をいじめてたって具体的な生徒については資料にも載っていなかったので、こっちで調べて回ってました。主に稲守が所属してたA組のクラス全体で“いじめがあった”って話は聞き出せたんですが、主犯格については分からないのか……庇ってるのか、結局分からず終いのままでした」


 かんばしい成果は得られなかったものの、真城はとりあえずでも現状までを報告する。


「そうか。……でもそうなると庇ってるって線が濃厚だろうな。資料では“稲守の両親の財布からお金がいくらか抜かれてたってのが後の調べで分かった”ってな話だし、いじめの内容的には少なくとも“恐喝”があったわけだ。……そんな場面をクラスの誰も見てないし聞いてないなんて事はまず無いだろうから。そうなると……クラスのリーダー的ポジションの奴とかか?」


「どうでしょう? ……それについてはまた調べようとも思っているんですが、正直そういった範囲までいっちゃうと、それはもう水樹さんの管轄では? って思わないでもないんですよねぇ」


「……それもそうだ、な。現状だとまだ稲守の影人がどういった目的なのかも定かじゃないし、とりあえずは影人が復讐対象として狙ってくるならA組の生徒の可能性が高い、って事までで良いかもしれないな。これからの情報次第ではあるが」


 そこまでで一度、真城と切矢は話を区切る。


「話は以上か?」


 そういって切矢は話を真城から立花へと向けようとするが、


「あ、いえ一応、もう一つだけ」


 と更に真城が情報を提示する。


「稲守が夏休み期間中に行方不明になったっていう裏山にも少しだけ行ってきました」


 裏山というのは波嵐高校の裏手にある山の事。

 高校の裏門から道路を挟み、すぐに麓の登山道入り口から登れるようになっている。

 決まった名前は付けられておらず、『波嵐校の裏山』などの愛称で呼ばれているんだかいないんだか。

 山と言ってもその標高は低くザっと200m程しかない。


「どうだった?」


 真城が裏山へ足を運んだ理由。

 それは資料通りなら、稲守賢史が最後に目撃された場所であるからだ。


 といっても、山に登ったのかどうかは定かじゃない。

 目撃されたのが山の麓。裏山へと登っていく為に整備された登山道入り口だった、というだけの話だ。


 稲守賢史が家に帰って来ない。行方が分からなくなった、という通報を受けて警察が調査を開始。

 それから数日間、特定の知り合いやクラスメイトの家へと聞き取り調査などが行われたはいいものの良い成果は得られず終い、また稲守賢史本人の死体なども見つかっていない事から、『事件に巻き込まれた可能性』もしくは『事故』『家出』など多方面での調査が現在も行われているらしい。

 これも資料に書いてあった事である。


「……特に何もありませんでした。軽く登っては見たものの、警察が調べた以上のものは見つかりそうになかったです。すみません、話を遮らせました」


「いや、いいさ。その山に影人達のアジトなり何なりがなくて良かったよ」


「……怖い事を言わないでくださいよ」


「はっはっは」


 これで真城の話は終了だ。

 続いて、切矢は立花に向き直る。

 それを受けて立花は頷くと、落ち着いてからゆっくりと喋り出す。


「わ、私は、その……聞き込みが、出来なかったので、生徒たちの話題について、み、耳を傾けて、ました」


「……あぁね、ひなたはまぁそうなるな。それで収穫はあったのか?」


「えっと……、ま、真城さんも言っていた、警察が調べたって件で、その、調査の事が噂になってた。け、警察に話を聞かれた生徒、が、他の生徒にも話したんだと、思う、けど……今はその話題のおかげ? で、『稲守賢史が行方不明になってる』って話は、多分、全校生徒が知ってる……と思う」


「マジかよ、それは凄いな。……でも、なんでまた」


 稲守賢史が行方不明となった件。

 それは夏休み中の出来事だ。

 夏休みにいなくなり、親が届出をだして調査が開始された。

 警察の聞き取り調査が行われたのだって資料によれば、夏休み期間中とのことである。


 そこが小、中学校であったなら、それぞれの生徒間での家も近い。

 話題が話題であるのなら、それが夏休み期間中であっても問題なく話題は拡散するだろう。

 話題の発信源も生徒のみとは限らない。

 時には親も参加して、或いは親が率先し、もの凄いスピードで話が散布される事となる。


 しかし、ここは高校だ。

 夏休み期間中に行われた調査など、噂として広がるのにも限度がある。

 それこそまず、物理的に生徒間での家が遠いのだ。

 生徒達が仲間内でのSNSを使用して発信したとしても、ほぼ全校生徒に行き渡るまで一体どれくらいの時間を有するのだろうか? ……それは切矢には分からないが、少なくとも夏休みが終了し、学校が始まってまだ半月しか経っていない。それだけの時間で、そこまで話が広がるものなのか?


 それに、言っては何だが『学生が一人行方不明になった』というただそれだけの事である。

 地域の民度などにもよって多少の変化もあるだろうが、少なくともこの街(波嵐市)は治安悪化が問題視されているのが現状だ。

 街の大人達ならいざ知らず、波嵐高校の生徒達がわざわざ好んで話題にする様な事柄か?

 そう考えると、少し疑問の残るものだ。


(…………、!!)


 と、そこまで切矢は考えて、一つの答えに行き着いた。

 『そうか、それで』と納得する。


「うん」


 切矢が思い至った考え。

 それと考えがリンクした事を察したであろう立花が頷いた。


「それが多分、“幽霊騒動”なんだと、思う」


「なるほどな、それが“幽霊騒動”の噂にも一役買ってるってわけか。“幽霊”の噂と“稲守が行方不明”という話。どっちが先に流行り始めたのかは知らないが……『“幽霊”の噂を知っていたなら、稲守の影人を目撃した時に影人の言動なんかからそれを“幽霊”だと思い込んで話題にする。そうなればその霊=行方不明の稲守だろうって話も聞きやすくなるだろうから、必然的に“稲守が行方不明”という話を知ることになる』。逆に『“稲守が行方不明”という噂を先に知っていたのなら、稲守の影人を目撃した時点ではそいつを稲守だと誤認して生存を考えるんだろうが、それを他人に伝えた時稲守(そいつ)は“幽霊”なんだよと言われてしまえば。……或いは、稲守の影人を目撃した時点でその言動から、人間じゃない=化物(幽霊)だと察して、自分から“幽霊”の噂を流す側になるのもアリか』。つまりはそうして二つの話が相乗効果で拡散するなら、その拡散スピードも確かに頷ける。“幽霊騒動”なんて言うくらいだ。生徒に何らかの危害が発生しているのなら生徒達がわざわざ話題にするのも納得だ。……ん? でも待てよ。それなら少なくとも二つの噂を関連付ける理由として一番重要な“稲守の(容姿)”が生徒達に知られてないと成立しないんじゃ――」


「うん。なので、こ、これを……」


 切矢の浮かべた疑問。

 それを受け、立花が専用端末のある画像を差し出した。


 見るとそこには、“波嵐高校の裏掲示板のスクショ画像”と、ある生徒のスマホ画面を立花が後ろから盗撮したであろう“友人同士のチャット画面”が表示されており、それら二つの画面には同様に稲守賢史の顔写真と、『その人物を目撃したら幽霊だから気を付けて!!』といった文章が記載されていた。


 どうやらどこの誰かかは知らないが、この()を画像付きで流している者もいるらしい。


「これは……ひどいですね」


 画面を見た真城も、顔を顰める。

 

 その行為に、悪気や悪意があるのか。

 或いは、親切心や面白半分といったものなのか。

 それを真城は与り知る事は出来ないが、よくもまぁこういった行為が出来るものだ。


 どんな行為をする際にも言える事だが、そういった行為をする前に一度、それをしたことで“他人が見たらどう思うか?”や“それをして本当に大丈夫なのか?”等といった事をよく考えてからやってもらいたいものである。


 切矢も真城の意見に同意しつつ、


「……とはいえ、こうやって噂が外にまで広まってくれたおかげで、それを水樹がキャッチして俺らの所に回ってきたわけだ。これを切っ掛けにその後の波嵐高校や波嵐市が改善されるかどうかは、俺らとその後の水樹の働きにかかってる。……しっかりやらないとな」


 と言って話を締めくくる。


「次は俺の番だな」


 そう言って、切矢が話をし始めようとした時だった。

 それを立花の声が遮ると、


「そ、それと……その話、以外にもう一つ、き、気になる話が、あって」


 言いにくそうに、おずおずと、


「あの、えぇと、任務とは、その……関係無いかもしれないん、だけど」


 しかし、しっかりと意志を持って、


「――“死神”って、呼ばれてる人がいるみたい、です」


 そんな事を言い出した。



「……“死神”? それは何だ?」


 “死神”と聞いて、まず思い浮かべるのは黒いローブに身を包み、大きな鎌を持った骸骨……だろうか?

 いわゆる、死の概念を擬人化した様な、そんな存在の事である。


 しかし、切矢が聞いているのはそういった言葉の意味ではない。


 その“死神”と呼ばれている人間。

 それは一体何なのか、誰なのかという事だ。


「そ、その……分かりません。ただ、何人かの生徒達が話してて、ゲームとかの話では、ない、みたいで。……“死ぬ人が分かる”、とだけ」


「死ぬ人が分かる? それってつまり……“その人がいつ死ぬのか、死期が分かる”人間がいるって事か?」


「かもしれない、です」


「うーん、……どう思うよ? 真城」


 立花からの謎の情報を聞き終えて、切矢は自身の考えに行き詰ったのか話を真城に振ってくる。

 しかしそれに対する真城の答えとしては、


「そうですねぇ……。その真偽はさて置いて、この世には“幽霊が見える”なんて言う霊能力者もいるみたいですから、“死神が見える”人間がいたとしてもそこまで驚く事ではない様にも思いますね。まぁ少し前までの俺なら『そんなのあるわけない』の一言で済ませたでしょうけれど、“影狩り”に入ったことで“影操作”だの“念話”だの“瞬間移動”だのと色々な異能がある事を知りましたから……そういう能力が発現した人間がいても不思議じゃない、ってくらいには考える余地がありますよ。ただまぁ、そういう能力が実在した場合、同時に死神の存在も証明しちゃう感じになりそうですけど」


 といった具合に、当たり障りないような事しか答えられない。


「……そうだよなぁ。やっぱ落とし所としてはそんなもんだよな」


 話を聞き、切矢も頷く。

 切矢の意見も真城と一緒なのだろう。


 死神の件を報告し終え、立花の話は終了する。



「んじゃあ、今度こそ俺だな。……俺の話はかなり驚くぞ。悪い意味で」


 真城と立花の話を全て聞き終えた切矢は、そんな不吉な事を告げながら話を始める。

 その内容は切矢が、校内を見回って気が付いた事だった。


「神崎が懸念してた波嵐市の“影人工場”化。その可能性が高まった……というかほぼそれが起こってる」


「……マジですか」


「あぁ。全校生徒の確認とかは出来てない。が、とりあえず一年生だけに絞って授業中に意識して見ていたんだが、今回の限られた調査時間だけでも、――三体の“擬態”を発見した」


「「……っ!?」」


 “擬態”。

 それは影人が一般人に偽装しているものらしい。

 

 “影狩り”が影人を見つける方法。

 それは簡単に言えば、足元の影を見る事だ。

 足元に影が無ければ確定だ。それが一番わかりやすい。


 これは影人の“フェイズ2”が本体から分離して活動している場合。

 或いは、身体と人格を乗っ取った“フェイズ3”と“フェイズ4”で確認可能な事である。


 しかしその中、強力な“力”を持ち、“影狩り”を恐れない“フェイズ4”。

 そして、身体と人格を乗っ取った事で自由に活動を始めた“フェイズ3”以外の“フェイズ3”が稀にする行為だそうだ。


 身体と人格を乗っ取ったにも関わらず、あえて被害者と同じ環境での生活を続ける者。

 強力な“力”を掴むまで、“影狩り”から逃れようと狡猾に身を潜めようとする者、等々。

 その理由は様々だがとにかく……使える影を纏わずに、あえて足元にある普通の影を装って一般人を偽装する影人を、“影狩り”では“擬態”と呼んでいるのである。


 影人は影が自我を持ったその瞬間、その本体の人間がいままでどうやって生きてきたかの記憶さえも同時に入手するらしい。

 故に、影人がやろうとさえ思うなら、元の被害者を装って、周りの人間を騙して生活する事も可能なのだとか。(出来るからといっても、それをあえてやる影人や好んでやる影人は少数派ではあるのだが)



「一つの学年でこれだけの“擬態”がいるんなら、『それぞれ個々で誕生した影人が、偶々どいつもこいつも“擬態”して隠れてる』なんて線は薄いだろう。まず、何者かの組織的な動き。息がかかってると見るべきだ。それこそ安易に行方不明者を出して……“影狩り”に見つかりにくくする為に、とかな」


「……三体も、ですか」


「一年の中で三体だ。と言っても、まだ一年生全員を確認したわけでもないしな。多分もっと増える。それに加えて二、三年。他にも街の住人も合わせれば……一体何体になるんだか」


「…………、」


 あまりの事態に、真城と立花は言葉を無くす。

 切矢が前置きで『悪い意味で驚く』と言った意味がよく分かった。

 神崎の言っていた嫌な予感、懸念が的中した訳である。


「真城。すまんが初めに言っておくぞ」


 押し黙る真城へと、切矢が口を開く。

 少し言いにくそうではあるものの、それでも、これだけは伝えておかなければならない。といった強い意志が乗った言葉だった。


 真城の目をしっかりと見てハッキリと。



「想定よりも影人の数が多い場合。それと非常時を含めて敵を斃した方が早いと俺らが判断した場合、――俺らは、“影牢”での捕獲よりも影人を斃す事を優先するからな?」



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