表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傍観者  作者: Amaretto
第七章
49/56

7-7(武田7)

[武田]


 俺たちのクラスに、校長と、学年主任がやってきた。

 いきなりのことに、クラスはざわつく。

 俺は、この事態を想定済みだった。証拠のない槇原先生を連れていくくらいだから、学校は本気で証拠を持った人を捜そうとしている。

 だから生徒を調べることもあるだろうと、思っていた。



 10名ほどの生徒は、休暇のための帰省の準備中だ。

 だからクラスには20名ほどの生徒しかいなかった。


 俺と小田は、休暇申請をしたが却下された。

 表向きは、「勉学に励むため」という理由だったが、実際は、計画に関わっていそうな可能性があるからだろう。


 休暇のための船は本日の12時に出発だ。

 クラスメイトで鬼ごっこをしている最中、本当の証拠を持った人が、船に乗り込む。

 今はだいたい10時。出発まで、あと2時間。



「槇原先生は、体調不良のため、しばらくお休みすることとなりました。」


 淡々と学年主任が報告をする。全く事実と異なる報告を。

 クラスは一瞬ざわざわとしたが、学年主任の「ごほん」という咳払いにより、一瞬にして静かになる。


「あと、小田さゆり。武田智治。前に出なさい。」


 学年主任が、俺と小田を呼ぶ。学校は俺と小田を怪しんでるんだ。

 俺たち2人は、指示通り前に出る。


 昨日、槇原先生が戻ってこなかった。

 そして今、俺たちが疑われているということは、槇原先生はカモフラージュであることが既にバレている可能性が高い。本当の証拠を、俺か小田のどっちかが持っていると思っているんだ。


「小田、武田。君たちが持っているものを、今渡せば、手荒な真似はしない。大人しく、渡しなさい。」


 校長の発言に、俺たちは何も反応を見せない。誤魔化すような発言も無駄だからだ。


「出しなさい!」


 学年主任が間近で叫ぶと、迫力が倍層する。


「はい。」


 小田は大人しく、ポケットからUSBを取り出す。

 それを学年主任の前に出す。


 素直に出したのが予想外だったようで、学年主任は余計に怪しんだ。


「それをもって、こっちに来なさい。武田もだ。」


 俺たちは、校長と学年主任の後について行く。抵抗はしない。

 向かった先は、コンピュータールームであった。


「ほら、小田。さっきのものを出しなさい。」


 小田は学年主任にUSBを渡す。

 学年主任はそのUSBに保存されているものの中味を確認するため、

 USBを差し込み、データの中身を見る。


「……あんっ! やあ……! んっ……。」


 パソコンの画面に、アダルトビデオの映像と音声が流れる。

 校長と学年主任は予想外の中身に目を見開き、固まる。

 俺と小田は、USBの中身を知っていたから、驚かない。

 学年主任は怒りのあまり震えている。


「ほら、これがほしかったんでしょ? 見れてよかったね!」


 小田はニコニコと学年主任を煽る。本当に怖いもの知らずだな、と改めて思う。


「しかも、これ、学園ものじゃん! こういうの趣味なの? ほら、制服プレイとかってさ。もしかして、普段もこういうこと考えちゃったりしてる?」


 小田は最高に楽しそうだ。俺も、小田の発言につられて笑いそうになる。ちなみにダミーの証拠を用意したのが誰なのかは内緒だ。


 学年主任は「……このっ!」と言い、小田を殴ろうとした。

 俺は即座にその場から動き、学年主任の拳を片手で受け止め、学年主任を睨みつける。


「それは、さすがに教師として、ダメでしょ。」と俺は言う。


 学年主任は怒りを抑え込むように、拳を壁に強くあてた。


「君たち、証拠を、持っているのか、持っていないのか、どっちだ?」

 校長が口を開いた。その目は鋭い。


「持ってないよ。」


 小田は、校長に向かって言った。

 その答えに校長は、「そうか。」とだけ返した。


「小田、今までお前から、多くの有益な情報をもらってきた。だが、お前にだって容赦はしないつもりだ。

持っているのは、誰だ? 言いなさい。」


 学年主任が小田の前に立つ。そして、鋭い目つきで威圧する。

 でも、小田には、威圧など通用しない。だって彼女は、普通じゃないから。


「さあ、だれでしょう?」


 小田はニコっと学年主任に微笑む。


「持ってるのは、私のクラスの、”誰か”だよ。」


「誰なんだ! 教えなさい!」


「えー、でも、普通に教えたら面白くないからさ、ゲームをしようよ!」


「ゲーム?」

 学年主任は顔をしかめる。


「もう既に、クラスに残っていた18人は、どこかに逃げてる。だから、捕まえてみなよ。証拠を持った、誰かを。」


 小田は楽しそうに笑う。


「さあ、始めよう? この島を使った、鬼ごっこを。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ