7-3(槇原13)
[槇原]
隠し部屋からデータを盗んだ次の日、学年主任が私を呼びに来た。
「槇原先生、ちょっといいかね?」
学年主任がそういった瞬間、私はドキッとする。
昨日の事が、バレたのか?
分からない。でも、ここでついて行かないという選択肢はない。
私は冷静を装いながら、答える。
「はい。」
私はそう言い、学年主任のもとへ行く。
「ついてきたまえ。」
私は学年主任とともに、教室を出て行く。
明日の12時に休暇の船が出発する。
その時に、武田が証拠をもって外に出ることが出来たら、私達の勝ち。
それまでに、武田が証拠をもっていることがばれてしまったら、ゲームオーバー。
私はもう、戻ってこれないかもしれない。
もし私まで拷問部屋に連れていかれるようなら、残るは、武田だけ。
SS制度崩壊が成功するかは、武田が証拠を守り切れるかどうかにかかっている。
学年主任は、廊下を曲がったところで、立ち止まる。
そこには、昨日田中先生を連れて行った男たちがいた。
教頭が、「捕まえなさい」と言った。男たちは私に近づいてくる。
学校側は、正式に、私を敵だと認定したということだ。
もう、何を言っても無駄だ。言い訳も通用しない。
おそらく、学校は私が犯人だという証拠を持っていいない。それなのに、私を捕える。
学校はなんとしてでも、制度を守りたいのだろう。だからとりあえず、怪しい人を捕まえてみる。確信はなくていい。可能性が少しでもあれさえすれば、強制的に連行する。そういうことなのだ。
学校がそういう対応をしてくるのだとしたら、こちらとしては圧倒的に不利だ。
私は必死に抵抗するが、あっさりと捕らえられた。
無理やり引っ張られながら、地下へと連れていかれる。
鉄の重い扉。
ガチャガチャと鍵を開ける音が響く。
この先が、拷問部屋。
私は唇を噛む。
「おい、進め。」
男が私の背中を押してくる。私は暗い廊下を恐る恐る歩く。
廊下の右にも左にも、牢屋。
そしてその牢屋には拘束するための鎖がついている。
その光景は、とても現実のものと思えなかった。
左の前から四つ目の牢屋。その中に黒い影が見える。
「田中先生!」
私が叫ぶと、田中先生は顔を上げた。
「まきちゃん……?」
田中先生は、いつものような明るい声ではなく、今にも消えてしまいそうな小さな声で言った。
田中先生は、昨日連れていかれたばかりだ。たった丸一日で、こんなに人は変わるのかと驚くほど、田中先生は、やつれていた。
きっと、寝る間もなく、拷問されていたに違いない。目の下にはクマがあり、髭も生え、まるで別人だった。
「田中先生……。」
私は田中先生に何と声をかけたらいいのか分からなかった。
私が田中先生を見ていた時、ぐらっと視界が揺れる。私の腕を男が強引に引っ張ったのだ。そのまま男は、私を田中先生の向かいの牢屋へと引きずり込む。
そして勢いよく離したため、私は尻餅をつく。
私の目の前に、学年主任が立つ。私は学年主任を見上げる。
逃げ場のない状況下では、学年主任の圧力が倍増したように感じる。
「調べなければならないことがあるから、服を脱ぎなさい。」
学年主任は、普段通りの変わらない口調で、そう言った。
”学年主任”として指示を出すときと、まったく同じように。
学年主任の言葉に、田中先生はびくっと身体を強張らせる。そして、意識がはっきりしたのか、いつも通りの口調で、叫ぶ。
「やめなさいよ! まきちゃんは何も知らないわよ。全部私がやったことなんだから!」
「君は黙ってなさい!」
学年主任は田中先生の方に目をやり、怒鳴る。そして、すぐ私の方に目を戻した。
学年主任は、私の立場を認識させるように、上から見下ろして言った。
「この学校が、どういう所なのか、君はよく知っているであろう。無駄な抵抗はやめなさい。取り調べが済んで無実が証明できれば、元の場所に戻してやろう。だから大人しく、服を脱いでこっちに渡しなさい。」




