↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傍観者  作者: Amaretto
第七章
45/56

7-3(槇原13)

[槇原]


 隠し部屋からデータを盗んだ次の日、学年主任が私を呼びに来た。


「槇原先生、ちょっといいかね?」


 学年主任がそういった瞬間、私はドキッとする。

 昨日の事が、バレたのか? 

 分からない。でも、ここでついて行かないという選択肢はない。

 私は冷静を装いながら、答える。


「はい。」

 私はそう言い、学年主任のもとへ行く。


「ついてきたまえ。」


 私は学年主任とともに、教室を出て行く。


 明日の12時に休暇の船が出発する。

 その時に、武田が証拠をもって外に出ることが出来たら、私達の勝ち。

 それまでに、武田が証拠をもっていることがばれてしまったら、ゲームオーバー。


 私はもう、戻ってこれないかもしれない。

 もし私まで拷問部屋に連れていかれるようなら、残るは、武田だけ。

 SS制度崩壊が成功するかは、武田が証拠を守り切れるかどうかにかかっている。


 学年主任は、廊下を曲がったところで、立ち止まる。

 そこには、昨日田中先生を連れて行った男たちがいた。


 教頭が、「捕まえなさい」と言った。男たちは私に近づいてくる。

 学校側は、正式に、私を敵だと認定したということだ。

 もう、何を言っても無駄だ。言い訳も通用しない。

 おそらく、学校は私が犯人だという証拠を持っていいない。それなのに、私を捕える。

 学校はなんとしてでも、制度を守りたいのだろう。だからとりあえず、怪しい人を捕まえてみる。確信はなくていい。可能性が少しでもあれさえすれば、強制的に連行する。そういうことなのだ。

 学校がそういう対応をしてくるのだとしたら、こちらとしては圧倒的に不利だ。



 私は必死に抵抗するが、あっさりと捕らえられた。

 無理やり引っ張られながら、地下へと連れていかれる。


 鉄の重い扉。

 ガチャガチャと鍵を開ける音が響く。

 この先が、拷問部屋。

 私は唇を噛む。


「おい、進め。」


 男が私の背中を押してくる。私は暗い廊下を恐る恐る歩く。

 廊下の右にも左にも、牢屋。

 そしてその牢屋には拘束するための鎖がついている。

 その光景は、とても現実のものと思えなかった。


 左の前から四つ目の牢屋。その中に黒い影が見える。

「田中先生!」


 私が叫ぶと、田中先生は顔を上げた。

「まきちゃん……?」

 田中先生は、いつものような明るい声ではなく、今にも消えてしまいそうな小さな声で言った。

 田中先生は、昨日連れていかれたばかりだ。たった丸一日で、こんなに人は変わるのかと驚くほど、田中先生は、やつれていた。

 きっと、寝る間もなく、拷問されていたに違いない。目の下にはクマがあり、髭も生え、まるで別人だった。

「田中先生……。」

 私は田中先生に何と声をかけたらいいのか分からなかった。


 私が田中先生を見ていた時、ぐらっと視界が揺れる。私の腕を男が強引に引っ張ったのだ。そのまま男は、私を田中先生の向かいの牢屋へと引きずり込む。

 そして勢いよく離したため、私は尻餅をつく。


 私の目の前に、学年主任が立つ。私は学年主任を見上げる。

 逃げ場のない状況下では、学年主任の圧力が倍増したように感じる。


「調べなければならないことがあるから、服を脱ぎなさい。」


 学年主任は、普段通りの変わらない口調で、そう言った。

 ”学年主任”として指示を出すときと、まったく同じように。


 学年主任の言葉に、田中先生はびくっと身体を強張らせる。そして、意識がはっきりしたのか、いつも通りの口調で、叫ぶ。


「やめなさいよ! まきちゃんは何も知らないわよ。全部私がやったことなんだから!」


「君は黙ってなさい!」


 学年主任は田中先生の方に目をやり、怒鳴る。そして、すぐ私の方に目を戻した。

 学年主任は、私の立場を認識させるように、上から見下ろして言った。


「この学校が、どういう所なのか、君はよく知っているであろう。無駄な抵抗はやめなさい。取り調べが済んで無実が証明できれば、元の場所に戻してやろう。だから大人しく、服を脱いでこっちに渡しなさい。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。