6-1(槇原7)
[槇原]
SS制度が始まってから、既に22年の時が経っている。私が受け持つ生徒たちは、3年生になった。
いままでに、イジメの対象になった、藤井さん、東くん、中嶋くん。ごめんなさい。私はあなたたちを救えなかった。
でも、この学校が、24時間生徒を監視させているという証拠を、ほぼ集め終わっていた。
あと少し、もう少しのところだった。
私と田中先生は、あと一歩というところで、校長に呼び出された。
もしかしたら、制度崩壊のこととは、まったく関係ないのかもしれない。
でも、私の心臓はバクバクと波打つ。もし、私達がSS制度崩壊計画を立てていることが、学校側にバレてしまっているのだとしたら……。想像もしたくない。私は、なんとしてでもやり遂げて見せると、田中先生と約束したから。
見慣れた学校の廊下。私は監視カメラの位置を田中先生から教えてもらっている。自然と、そのカメラを意識してしまう。廊下の先には、校長室がある。私たちは学年主任の後に続き、校長室へ向かっている。
学年主任が、ノックをし、校長室のドアを開ける。そして中へと入っていく。田中先生もそれに続く。
私も、入ろうとしたところで、一瞬、踏みとどまる。入ったら、もう、出られないような、そんな圧力を感じた。
「入りなさい」と学年主任が、目を細めて、催促してくる。
腹をくくるしかない。
「失礼します。」と、私は言って、校長室に入る。恐怖で少し声がふるえてしまった。
「なぜ、呼ばれたか、わかるかね?」
校長は私たちを見据え、言った。
私たちは何も答えず、無言のまま立っていた。このなんともいえない圧力を感じさせる雰囲気からして、もうバレているのかもしれない。けれど、自ら、自分たちが敵であるということを話す必要などない。
田中先生が、バレていないという少しの希望にかけたのか、「わかりません。」と答えた。
田中先生の返答を聞いた校長の目は鋭くなった。
その目に、私は、威圧され、息をのむ。
怖い。逃げたい。でも、逃げれない。逃げちゃいけない。
「隠すことなどないだろう。もう、知っているんだよ。」
ああ、もう知られているんだ。私は絶望しそうになる。……でも、まだ諦めない。
SS制度崩壊計画を立てていることには、うすうす気づいているのだろう。
でも、確信していたら、こんな風にカマをかける必要はない。すぐにでも取り押さえるはず。
きっと、確信がないから、カマをかけているんだ。
そう思った私は、何も知らない教師を演じることにした。自分じゃない自分を演じることには慣れていた。この二年……ずっとずっとやってきたのだから。
私は、最後の砦として、今まで何もしないで過ごしてきた。
今、怪しむ校長達を欺くことが、私の役目。
「何をですか?」
私は、まったく知らない風を装い、言った。
田中先生は驚き、私の方を見ている。私が、動揺や焦りをみせず、白を切っていることに、驚いているのだろう。
絶対に、悟られてはいけない。
私たちが、SS制度崩壊を計画していることを。
今、ここが、一番の勝負時。
最後の砦である私が、つかまるわけにはいかない。
お願い。
お願い、バレないで……。




