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傍観者  作者: Amaretto
第六章
35/56

6-1(槇原7)

[槇原]


 SS制度が始まってから、既に22年の時が経っている。私が受け持つ生徒たちは、3年生になった。

 いままでに、イジメの対象になった、藤井さん、東くん、中嶋くん。ごめんなさい。私はあなたたちを救えなかった。

 でも、この学校が、24時間生徒を監視させているという証拠を、ほぼ集め終わっていた。

 あと少し、もう少しのところだった。


 私と田中先生は、あと一歩というところで、校長に呼び出された。


 もしかしたら、制度崩壊のこととは、まったく関係ないのかもしれない。

 でも、私の心臓はバクバクと波打つ。もし、私達がSS制度崩壊計画を立てていることが、学校側にバレてしまっているのだとしたら……。想像もしたくない。私は、なんとしてでもやり遂げて見せると、田中先生と約束したから。


 見慣れた学校の廊下。私は監視カメラの位置を田中先生から教えてもらっている。自然と、そのカメラを意識してしまう。廊下の先には、校長室がある。私たちは学年主任の後に続き、校長室へ向かっている。


 学年主任が、ノックをし、校長室のドアを開ける。そして中へと入っていく。田中先生もそれに続く。

 私も、入ろうとしたところで、一瞬、踏みとどまる。入ったら、もう、出られないような、そんな圧力を感じた。


「入りなさい」と学年主任が、目を細めて、催促してくる。

 腹をくくるしかない。


「失礼します。」と、私は言って、校長室に入る。恐怖で少し声がふるえてしまった。


「なぜ、呼ばれたか、わかるかね?」


 校長は私たちを見据え、言った。


 私たちは何も答えず、無言のまま立っていた。このなんともいえない圧力を感じさせる雰囲気からして、もうバレているのかもしれない。けれど、自ら、自分たちが敵であるということを話す必要などない。


 田中先生が、バレていないという少しの希望にかけたのか、「わかりません。」と答えた。


 田中先生の返答を聞いた校長の目は鋭くなった。

 その目に、私は、威圧され、息をのむ。


 怖い。逃げたい。でも、逃げれない。逃げちゃいけない。


「隠すことなどないだろう。もう、知っているんだよ。」


 ああ、もう知られているんだ。私は絶望しそうになる。……でも、まだ諦めない。


 SS制度崩壊計画を立てていることには、うすうす気づいているのだろう。

 でも、確信していたら、こんな風にカマをかける必要はない。すぐにでも取り押さえるはず。

 きっと、確信がないから、カマをかけているんだ。


 そう思った私は、何も知らない教師を演じることにした。自分じゃない自分を演じることには慣れていた。この二年……ずっとずっとやってきたのだから。


 私は、最後の砦として、今まで何もしないで過ごしてきた。

 今、怪しむ校長達を欺くことが、私の役目。


「何をですか?」

 私は、まったく知らない風を装い、言った。


 田中先生は驚き、私の方を見ている。私が、動揺や焦りをみせず、白を切っていることに、驚いているのだろう。


 絶対に、悟られてはいけない。

 私たちが、SS制度崩壊を計画していることを。

 今、ここが、一番の勝負時。


 最後の砦である私が、つかまるわけにはいかない。


 お願い。

 お願い、バレないで……。



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