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傍観者  作者: Amaretto
第四章
28/56

4-7(中嶋2)

[中嶋]


「あーあ。誰も、東くんのこと、助けてあげないの?」


 小田はさゆりはまるで残念そうに言っているが、それを楽しんでいるようでもあった。

 自分は手を汚さない癖に、一歩引いたところから、俺達を苦しめる。その頃クラスのイジメの標的は東であった。俺は助けることも出来ずにただ東がイジメられているのを見て見ぬフリして日々を過ごしていた。


「つまんないなぁ。」と小田は口を尖らせる。


「みんな、心の中では、私のこと、最低な奴って思っているんだろうけどね、だったら、見て見ぬフリは、どうなんだろうね? 傍観者ばっかり。臆病者ばっかり。東くん、誰からも助けてもらえないね? 可哀想に。このクラスには、英雄なんていないからね。」


 英雄という言葉を聞き、反射的に父親を思いだす。


 周りから英雄と言われることなく、死んでしまった今でも、俺にとっては英雄だった。


 ガラスを割ってしまい怒られた日、父が学校の帰り道に言っていた言葉を今でも覚えている。


「勇、強さってのはなぁ、力だけじゃねぇんだぞ。本当の強さは、心にあるんだ。先生にちゃんと謝ることも、強さだ。強くなりたきゃ、まず自分の弱さを知れ。そうすりゃ、人の弱さも分かち合える。」


 父が俺に伝えたかった事は、その時の俺には分からなかった。父がいない今では、確かめようもないけれど、何となく分かるような気がする。


 俺は、父のように強くなりたいと思っていた。英雄になりたいと思っていた。


 自分になれるものなのか?

 父だったら、この状況でどう行動するのか?


 そんなこと、考えても意味はない。

 父は、もうここにいないのだから。


 だから、関係あるのは、俺が、東を助けるのか? だ。


 その問いの答えを俺は知ってるだろ。



「小田、いい加減にしろよ。」



 俺が言った瞬間、クラスにびりっと電気が走ったように、雰囲気が緊張に変わる。

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