第十七話 『ハッピーエンドを目指して』
夕陽が差し込む静かな廊下を、西野と南は並んで歩いていた。
「あの二人、うまくいってるかしら」
「さあな。なにしろ千秋は昔っから色恋沙汰には疎すぎるからな。まるでハーレムラノベの難聴系ヘタレ主人公みたいに。まあ、だからこそ北川の想いにも気づかないだろうし、お互いに変な方向に走って致命傷を負うなんてこともないだろうけどさ」
「それにしても、あなたも大胆なことを思いついたものね。文化祭を利用して、美冬と東山君を結びつけようとするなんて」
「俺はあくまでもきっかけをつくるだけさ。最終的にどうなるかは、あいつらが決めることだ」
「うまくいくといいけど。クラスのみんなも協力してくれるわけだし」
「去年のことがあったから、北川に負い目を感じてるやつも少なからずいるからな。そしてそれと同じくらいに、東山に感謝してるやつもいる」
「そうね。去年の東山君の行動のおかげで展示は中止されなかったし、私達のクラスもバラバラになったまま終わらずにすんだもの。これくらいの恩返しはしなくちゃね。でも、今でも信じられないわ。普段は不良行為なんかと全く無縁に生活してる、あの東山君が、夜中に学校に忍び込むなんて」
「普段のあいつはボケっとしてるからな。でも、たまにこっちの度肝を抜くようなことを平然とやってのけるんだ。ほんと、あいつのそばにいると退屈しないぜ」
「類は友を呼ぶってやつじゃないかしら」
「ん?」
「あなただって、先週急に何の前触れもなく私に告白してきたじゃない」
「ああ、そういうことか。俺は自分の直感を信じてるからな。最初に見た時から、もしかしたら南が俺の運命の相手なんじゃないかって気がしてたんだ。その確信が持てたのが先週だった。だから善は急げってことで、告白した」
「結果は保留、に終わったけどね」
「うすうす感づいてはいたけどさ、いざ本人の口から言われるとなかなか衝撃的だったぜ。南が北川を恋愛対象として見てたなんて」
「あら。美冬は十分可愛いと思うけど?」
「まあそこは否定しないけどさ」
「でも、あの子は東山君のことが好きだから。だから、あの子の恋が成就すれば、私はあなたの告白を真剣に受け止めて、ちゃんと返事をするって決めたの」
「まあ、俺はもう一度、お前に告白するけどさ。文化祭最終日の、学校の屋上で」
「あら、たのもしいわね」
西野は自信ありげな笑みを南に見せる。
「でも、東山君のほうはいいのかしら。他に好きな人がいたら……」
「それは大丈夫だろう。千秋も北川のことが好きだからな」
「そうなの?」
「本人にその自覚はないけど、間違いなく好意は持ってるはずだ。でなきゃ、去年のあの行動はないだろ。無意識のうちに北川のことが気になって、そんな北川を助けたいと思ったから、あんなことをしたのさ。まあ、本人は否定するだろうけどな」
「でも、あなたには確信があるのね」
「おう。俺を誰だと思ってるんだ。かれこれ十年以上も千秋と一緒にいるんだぜ」
「そうね。ずっと一緒にいるからこそ、わからないこともあれば、わかることもあるものね」
「なんにせよ、俺たちもがんばらないとな。あの二人だけじゃなく、俺たちにとっても最高の舞台をつくらないと」
「みんなでハッピーエンドを目指すのね」
ああ、と西野はうなずく。
「みんなでハッピーエンドを目指すんだ」
この作品はこれでおしまいです。
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