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「ほら--」
「……」
彼がデジカメで見せてくれたのは、体を上下に伸ばされて必死に堪えている私の顔だった。
私は言葉すらなかった。額には脂汗を浮かべ、顔は白く蒼褪め、殆ど白目を剥きながら歯を食いしばって堪えている、苦悶の表情。他の人だって、こんなの見せられたら絶句するだろうに、これが自分の顔だといわれると悲しいやら悔しいやら、どうすればいいの、実際って感じ。
「これだよ」
彼は嬉しそうに言った。
「これが人間の真実の姿なんだよ!」
真実?
これが私の真実の姿?
……
黙って肩を落としている私の傍らでは、彼が瞳をキラキラさせながら盛り上がりまくっていた。感動に胸を打たれたっていうのかな、物凄く純粋に、子供みたいに幸せそうだった。
「ありがとう」
彼はとってもピュアな笑顔を私に向けてくれた。
「僕の為に、こんなに頑張ってくれて……」
な、なに?そんなに嬉しい?
「御免ね」
彼は真心篭った言葉を口にした。
「僕の為に--」
「--あ」
彼ったら――私のこと、そんなに……
「あ、あのね……」
私、なんて言えば良いんだろ。
「あなたの、為だから……」
私はやっとそれだけを言った。
彼は、優しい笑顔で私を見詰めてくれていた。
きっと、幸せなんだ、よね、私って……