第5話 彼女が出来た
夕食後、俺はフルートと一緒に風呂に入り、一緒にベットで寝る。エルマーが俺のことを変態とののしりながら抗議していたがフルートが睨むとエルマーはおとなしくなる。
翌朝、俺はエルマーに早朝からたたき起こされる。
「さっさと起きろ。根性を叩きなおしてやる。」「起きたいのですが起きれません。」
俺は掛け布団をめくって、俺にフルートが抱き着いているところを見せる。
「破廉恥な奴だ。恥を知れ。昨晩は一緒に風呂に入って悦に入っていたし、なんなんだ、お前は。」「これはフルートがやっていることですし、喜んでなんかいませんよ。」
「フルートが人にべったりする訳がない。何かしたんだろ。」「俺はやましいことはしていません。」
俺の言葉はエルマーには届いていないようだ。エルマーはフルートを強引に引き離す。するとフルートが目を覚ます。
「我の眠りを邪魔するのは誰だ。」「エルマーです。」
エルマーの死刑が確定する。エルマーはファイヤーボールでこんがり焼かれる。エルマーの美しい金髪はパンチパーマになる。
朝の稽古は、基本の素振りだが、エルマーは俺に厳しく接した。本気で根性を叩き直すつもりらしい。俺の剣線がぶれると「心がけがれているからだ」と檄が飛ぶ。
俺は剣技に心の清らかさは関係ないように思うが、エルマーは違うようだ。訓練が終わるとフルートがヒールしてくれる。
フルートはエルマーが訓練を厳しくしても文句を言わなかった。エルマーがフルートに言う。
「エドガーを探してくれ・・・ないか。」「当たり前でしょ。消えて欲しいくらいよ。」
「せめて、俺を森の外まで送ってくれ。」「翼の剣の修行が終わったら、送ってあげるわ。」
「何十年かかると思っているんだ。」「3カ月で叩き込みなさい。私が付いているから、死ぬことはないわよ。」
「分かった。半殺しにしてもいいんだな。」「どうぞ。」
俺はフルートとエルマーの会話を聞いていて青くなる。
「冗談だろ。」「真面目な話よ。」
「冗談と言ってくれー」「エドガーが私を探しているのだ。翼が私と暮らしていると知ったら殺しに来るぞ。」
「勇者なんだろ。庶民を殺したりしないよな。」
フルートが首を振る。エルマーがため息交じりに言う。
「そういう奴なんだ。」
勇者のくせに性格が破綻しているのか。俺はエドガーに見つからないことを祈る。
エルマーを連れてきたことで、俺のお気楽異世界生活にかげりが差す。フルートは魔法を俺に詰め込むように教え始める。さらに土日にはエルマーのしごきが待っている。
エルマーは俺の世界へ行こうとはしなかった。フルートの家に留まっていた。おかげで平日は剣術の稽古はない。代わりに家に帰るとフルートがスパルタで魔法を教えた。
こんな生活が続いて、異世界の時間で1か月経つ頃、登校すると高志が俺を見て言う。
「お前、引き締まって来たな。緩んだお腹がないぞ。」「ぽっちゃりと言え。」
「ちょっと服を脱げよ。」「やだよ。」
「ちょっとだけだから。」「キャー、エッチ」
「いい体しているじゃないか。」「そうか?」
突然、わき腹を突っつかれる。誰だ。見ると雪島が俺のわき腹に人差し指を突き立てている。雪島はぼそっと言う。
「いい筋肉だわ。」「えっ。」
「萩原君、鍛えているのね。わあ、腹筋が割れているわ。」「ああ、本当だ。」
「ねえ、フルートちゃんをあきらめて、私とお付き合いをしない。」「フルートは関係ないよ。」
「でも、フルートちゃんに翼に手を出すなと言われたのよ。」
フルートの奴、雪島にそんなことを言っていたのか。雪島は俺の初恋だぞ。
「萩原君、私ではだめなの。」「そんなことないです。付き合ってください。」
高志が肩を叩く。気づくと周りに人の輪が出来ていた。俺はみんなの前で雪島と付き合いたいと言ってしまったのだ。
みんなが祝福の拍手をしてくれる。俺と雪島は赤くなる。だが、俺の初恋は実ったのだ。俺に彼女が出来た。




