半兵衛さん、死す。
半兵衛さん
あぁ、こんなに生きれるとは思わなかった。
小さい頃から体が弱く、
いつ重矩に嫡男の座を譲っても良いようにと、父に代わり教育をした。
死ぬことを覚悟していたし、
いつ死んでも良いと思っていた。
しかし、彼の方に会ってからは死にたくない。
彼の方の最期の戦いを見るまでは死にたくない。
彼の方が平和な世を創るまでは、と思ってここまで生きていた。
女人と慕うことはなかったが、
私は本当の意味で、彼の方を慕っていた。
これを南蛮エゲレスのloveという言うのだろう。
衆道ではない。ただ側にいて、お仕えすることが楽しくて楽しくて堪らないのです。
たった一つの生きる理由だった。
それが森勝蔵長可という人だった。
彼の方と話すと知らぬことや考えの付かぬことを知れた。
その考えを知るたびに、自分はまだ足りないと思います。
同時に成長できると。
「半兵衛さん、大丈夫か?」
忙しい中、私のために来てくださりました。
「ええ、なんとか」
「そうか、よかったよ。徳川も倒した。新幕府もできた。これで皆が笑える時代が来る。またここに戻ってくるから、半兵衛さんもいないと。」
変わらない。変わることない、その覚悟だ。
ただ、周りが笑える未来、皆と笑える未来、それだけを見ていた方だ。
この方は、陳腐な気持ちでそれを目指した者らとは違う。
覚悟を持ち、狂い。狂っていると罵られようと凄惨な戦を繰り返した。
それは、この国を救うことに繋がった。
でも、彼の方にそんな想いはない。国を救いたいなど。
あるのは周りが笑えるように。
自身の手の届く、家族、家臣とその家族、兵が幸せに笑えればいい。知らない誰かまで救いたいとは思っていない。
それをたかだか10にも満たぬ子供がそう思った。そして行なったのだ。
私を天才と慕ってくれる者も多い。
だが、自分に彼の方のようなことは出来ない。
私は良くて、軍師なのだ。
彼の方は、人を殺す軍神にして、人を救う神だ。
私も長可教に入っていることは内緒だ。彼の方は困った顔をなされるだろうから。
「勝蔵様、最後にお伝えしたきことがあります。
私はただ、あなたの側にいれ、幸せでした。
あなたの家臣になったあの日から私の人生は輝いたのです。
死を常に覚悟していた、
死ぬことを待つ身が、生きることを欲したのです。
ただ、生きたいと。
あぁ、死ぬのがこんなにも惜しいとは思いもしませんでした。
あなたに会わなければ、死ぬことなど何も怖くなかったでしょう。
あぁ、あなたのように生まれ変われるならば、その時はまた、あなたの側にて、あなたと話し合う未来が良い。
あなたを生まれ変わらせた神に感謝を致します。
私の人生で初めて、あなた以外に祈りました。
もうお別れのようです。私はあなたに感謝を伝えるために最後の灯を燃やしたようです。
では、また来世…」
半兵衛は最後の思いを勝蔵に伝え、亡くなった。
その顔はまるで最上の幸せを見つけたかのように。
死すらも新たに与えられたチャンスのように。
そして彼の周りにいた者らは笑顔で泣いていた。
一番好きな半兵衛さんの死
個人的に書きたい話と思った一話を




