閑話 与太話 お市と勝三
今回は大分前の話をします。
お市の方目線の話です。
今日は何をしようかしら。
うん?なんだか奇妙丸のところが騒がしいわ。
勝三ね。
あの子は面白いのよね。
奇妙が好んで従わせるのがわかるわ。
粗暴なんだけど、気遣いが出来るのよ。大人より、よく気づくわね。
それにお兄様に、ふふふ。
あら、奇妙が喚いているわ。
ふーん。
兄上がいらっしゃるわ。林と。
ふーん。まぁ奇妙がダメね。堀をどうにかするならちゃんと確認しとかないと。
あいつは顔はいいけど性格が腐りきって、人かどうかも怪しいわ。
まぁ、勝三のいうことは正しいわ。
当主たるもの、慎重さと大胆さは必要よ。
しかも敵の全ての条件を呑むなんて、策に引っかけてと言っているようなもの。
騙してくださいと言っているようなもの。
相手の策を看破する準備もなしに、相手の条件は呑むもんじゃないわ。
これはいい薬になるわ。奇妙も後継ぎとして成長するかしら。
それにしても勝三は面白いわ。
「勝三」
「お市様、どうなさいました?」
「奇妙を泣かせて」
「う、申し訳ありませぬ。奇妙様には自覚をと」
「嘘を。調子に乗ってるから、しただけでしょう。」
「う、違います。私の諫言でございます。」
「ふふふ、しょうがないわね。じゃあ、そういうことにしておきましょう。
でも何をしたか、詳細に聞きたいわ。私のところに来なさい。」
「お市様、姫様が男を部屋に連れてくるなど、はしたなく存じます。」
「勝三、男とはそなたのこと?」
「ええ、そうです。私も男でございます。」
「ふふふ、お子様のくせに。」
本当に面白いわ。
お子様のくせに、こういうことを言うと、すぐに顔を赤らめるのよ。
もう男になり始めたかしら。
まぁ奇妙じゃもったいないくらいの才を持つ子よ。
お市は日頃から城に勝三が来るとこうしてからかう。
子供なのに大人のような振る舞いだが、女性関係がまるでダメな勝三は終始困り果てる。
1年後の秋、
ふー。
浅井長政様か。どんな人かしら。
まぁ世の常よ。
戦国の大名の家に生まれた女は家のために生きるのよ。
兄上が天下を取るため、それまではしょうがないわ。
まぁ、ダメな男なら、適当に子を作り、その子を愛しますわ。
お市と浅井長政の婚姻が決まり、浅井との婚姻にわく織田家。
あまり乗り気ではないが、お市はこれも世の常と受け入れていた。
「あら、勝蔵ね。どうしたの珍しい。」
「はっ、お市様、お屋形様にご許可をもらいに参上いたしました。」
「成長したわね。数ヶ月旅して、見ない間にすっかり漢になりましたね。」
「ありがたきお言葉、恐悦至極にございます。」
「あとで、私のところに来なさい。話があるわ、」
「お市様、男が…」
「いいから来なさい。」
それから一刻後
「兄上様と話は何だったの?」
「はぁ、来年にあるところの攻略の許可でございます。まだ言えませんが。」
「長島かしら?言いふらさないし、浅井には内緒にするわ。」
「いえ、お市様を疑ったわけでわ。」
「わかってるわ。勝蔵がそんなことはしないことぐらい。
まぁ、私の婚姻に異議を申し付けるとかなら面白いけどね。」
「何を?私などがお屋形様の決めたことに異議など。それに、お市様もきっと大事になさられ、幸せになられることと存じます。」
「あら、てっきり私を好きなのかしらと思ったわ。」
「なっ、私などがお市様を」
「顔に出てるわ。まだまだね。知ってたわ。まぁ嫌じゃなかったから。あなたともいいかしらとも思ったわよ。」
「お巫山戯にもほどがあります。誰かに聞かれたら。」
お市は巫山戯て言っているようにも見えるが本心であった。
武士の家の子女にとって、結婚は家同士の政略になる。
そのことを理解している。
お市は、男ならば信長を支える素晴らしい武将となれる資質を持っていた。
お市が勝三を良いと思うのはしょうがない。
織田家は武骨なおバカか性格の破綻者かおじさんしか家臣にいない状況のため。
その中で、顔もよく、さらに性格も好ましい。まだ子供だが。
いや大好きな信長に似ているが、あそこまでの加虐趣味もない。それでいて、信長にも劣らぬ才を持つ勝蔵を好きになるのは、ブラコン真っしぐらのお市にはしょうがなかった。
ミニ信長、可愛かったのだ。
また、堀と並び、家中の子女に勝蔵は人気あった。
勝三君 女性にモテてましたの回です。




