閑話 与太話 マッシュの呼び出し①
マッシュ来日の話
「あぁ、今日もつまんねぇなぁ」
マイラスは日々に飽き飽きしていた。
自分が求めるような戦場はここにはない。
それは、あの男がいた時。
その時だけは、本物の戦場だった。
心の底から、何もかも色づいて、何かもが芳しい。
そうまさに血に染まるバラ色の日々だ。
陳腐だが、追いかけて、求めてしまう。
もう手に入ることはない。いや夢だったとさえ思う。
しょうがないので、娼館に行く。
女を抱くくらいしかすることもない。
家に着くと、船乗りがいた。
渡して来たのは手紙だった。1567年秋の初旬。
来るはずもない手紙。
差出人は
ヨーゼフ.アンキエフ.ラロッシュ
彼が求めてた男からだった。
彼にとって、悪魔であり、最高の指揮官であり、相棒だった男だ。そして、戦場から勝手に抜けた男だ。
彼が傭兵時代はポルトガルの船団もスペイン船団も、オスマンも、皆が彼を怖がり、彼を避ける。
マルカのガーゴイルという呼び名だ。
敵として会えば、船は残骸以外が残らない。兵は消える。
仲間として会えば、仕事は失敗しない。必ずに勝てる。
海の傭兵にとって、神のように崇められ、悪魔のように嫌われる。
それがヨーゼフだった。
「ヨーゼフのやろうから手紙ってか?」
ヨーゼフはポルトガル人だが、その血は混血。
ポルトガルでも好まれないのだ。ユダヤとロシア人の血そしてイギリス人の血の入った男。親もいないらしい。孤児の出身だった。
ヨーロッパでは珍しい無宗教で神を信じない。神!?殺すぞ。そういう男だ。
「手紙の内容は?」
やぁ、マイラス
久しぶりだ。僕が傭兵をやめた後三年したくらいまでは会っていたが、それから会ってないから、9年ぐらいは君と会ってないね。
この手紙を読んでるということは、君は住処を変えてないんだね。
よかったよ。傭兵は辞めてないんだ。
話の本題に移ろう。
実は仕事でとちってね。
ハポンという国で、船が頓挫しちまった。航海士なのにねぇ。
38歳にもなると、うまくいかなくなるよ。
で、国に戻れなくなった。死んだことになっている。
でも、拾ってくれた主人がいい人でねぇ。
その人のためにこの人生の最後はこの国で生きるよ。
もうだめだと思ったけど。
神の慈悲にすがる奴に「神なんていない死ね」とよく言っていた僕が神はいたと思ったよ。
で本題だ。君も来ないか?
どうせつまらないんだろう。
じゃあ、来ればいい。ルドに言うと、日本に来そうな船を用意してくれるよ。
さぁ、あの懐かしく、血まみれで、くそったれで、面白い頃に戻ろう。
じじいになりつつあるけどね。
あと、こっちに来る前にぼくの家族の様子を見てきてくれ。
ヨーゼフ.アンキエフ.ラロッシュ
くその自己中野郎の、あの野郎らしい手紙だ。
でもあいつが傭兵に戻るか。よし、娼婦を抱きに行こう。こっちの女はもう抱けねぇ。
その翌日、ルドのところに行く前にある家族を見に行く。同じマルカ島にいる。
俺と同じ島にいても会わないようにしていた。あいつを殴りそうでな。
女にあった。あいつの妻だ。
久しぶりだ。
「よう、ミカ」
「マイラスかい。懐かしいねぇ」
「あぁ、ヨーゼフのバカが死んだらしいな。」
「あぁ、船が頓挫して、どこぞの国で首をはねられたらしい。」
「そうか」
本当に死んだことになってんだな。雇い主だった奴ががめついんだろう。
「船主から弔問と金をもらったよ。あの子を育てんだ。あんな人のこと忘れないとね」
薄情に思うが、船乗りの妻なんてこんなものだ。
じゃなきゃ生きてけねぇ。
ガキは11歳くらいか?あいつが傭兵やめた時にはミカの腹に子供がいた。
ミカは娼婦だった。ヨーゼフの子かわかんねから、結婚しないとか言い放つそんな女だ。
確かにいい女だ。まだ抱けるな。
ガキを見ると、ヨーゼフと似た、でも違う。
黒髮の珍しい奴だ。
混血のヨーゼフの野郎なら可能性がある。
「ていうか、ここのところ会いにも来なかった奴が何で、ヨーゼフの死を知ってんだい?」
こういう鋭いところが嫌いなんだよ。
「ルドに仕事で会ってな。聞いてもねぇのに教えて来やがってよ。お前らのことを見てきてくれって頼まれてな。本当にあいつは面倒臭い。」
「そうかい」
「ああ、またな」
「もう帰るのかい」
「もう顔も見たしな」
ミカも少し寂しいのかね。ヨーゼフがいなくなったしな。
その後マルカから、ポルトガルのある街に来た。
そこにルドの野郎が。
いた。こいつはあんまり会いたくてねぇー。
「ルド、ヨーゼフの件だ。」
こいつは商売人、奴隷商だ。
ミカを娼館に売ったのもこいつ。
まぁただ、性格は悪くねぇ。
商売で関わった奴を見捨てねぇ変わった奴だ。
商売人としては甘いがな。
でもこいつに骨の髄までしゃぶられて死んだ奴もいる。まぁ最悪のやつだったが。
「やぁマイラス。少しこの街で待機だよ。来週にミンに行く船が出るよ。」
「そうか」
「そしてそこから、ハポンだ。」
「金はいくらだ。」
「いらない」
「?」
「ヨーゼがたんまり利益をくれたよ。」
そうか。こいつはヨーゼフが傭兵時代のスポンサーだった。
「それと名は変えな。お前は有名すぎる血塗れ小僧」
「くっ、昔の通り名を」
そう、ヨーゼフがマルタのガーゴイルなら、俺は血塗れ小僧だ。
やつより8つ下だった。出会ったのは12の頃。だった。
傭兵として最初の戦いの相手が最悪のヨーゼフ。
そん時、近くに来る奴は全部切った。だがあいつに負けた。なのにアイツはなんか知らんが俺を見逃した。
それから、人を殺すことに躊躇はない。何人も、来る日も切った。
次に奴にあった時には血塗れ小僧と呼ばれてた。
野郎は、傭兵集団のトップだった。
ルドのやろうに連れて来られた。
あるところでミスった。
「ヨーゼフ、この小僧を頼むよ。売れないしね」
「あぁ、あん時のガキがまだ生きてたか。」
「血塗れ小僧とか呼ばれているよ」
「ふふふ」
変な笑い方しやがって。
それから奴の下で何年も働いた。普通傭兵集団なんて何人も死ぬが、そこは違った。
野郎ヨーゼフは強かった。いや指揮がうまかった。
20そこそこのやろうが天才的だった。
そんなあの日々に戻るか。あれから一度も掴めなかった。月のように、見えてんのに、辿りつかなかった。あの日々に。
マッシュの話です。
マッシュも好きなキャラなので、皆さんに好かれるキャラになれば。




