勝三 名を変える
勝三君、褒美をもらいます。
褒美は、美濃戦への貢献と京での活躍が理由です。
信長様の寵愛が重い(笑笑)
そんなことを知らない勝三は兄とお茶をしている。
父上が来ているので、ついて来た兄は他愛ない話と弟の話。
しかも新たに生まれた弟の話は特に詳しくだ。
これには嫉妬した勝三。
「兄上ずるい。」
「よいだろう。」
普段全く勝てない弟に一矢報いた兄。その喜びようは凄まじい。
そんな折に、
父と叔父が帰宅した。
「勝三、明日はお屋形様のところに今回の褒美をもらいに行く。そのつもりで居ろ。」
またしても兄は負けた。
でも、もう勝てないと諦めているので気にしない。
むしろ勝てるところで勝つ。
「傅兵衞は先に小牧の家に帰れ。各務頼むぞ。」
「はっ」
勝三が憂いを帯びた目で兄を見つめる。
兄は勝ち誇った目で見る。
兄弟の中でしか通じないやり取り。
森可成は目をそらした。
翌日
「勝三」
「はっ」
「褒美をやる。一つは、この刀だ」
三日月宗近だった。
歴史好きなら、もちろん知っている。
天下5剣と言われる名刀だ。
平安時代に作られたまさに名刀。だが時代が違うので切れ味はとも思われる。
「あ、ありがたき幸せ」
「ふむ、もう一つは名じゃ」
「名を」
「ふむ、儂の長と森の可で、長可だ
翌年、年が明けたら、森勝三長可と名乗れ」
「長可。良い名をいただきました。勝三は変え、勝つに蔵で勝蔵とし、森勝蔵長可と名乗ります。」
「そうか、励め」
こうして謁見は終わった。
「勝藏よ、名をもらった意味はわかっておるな?」
「はっ、父上。お屋形様の名をもらったのです。家臣ということですな。」
「うむ、そして元服じゃ」
「叔父上」
そうか元服かぁ。元服!?9歳だけど。早いよな。
「まだ、戦には出さんだだろう、安心せい。」
「はぁ」
「勝三、まぁ励め。お屋形様に言われた通りだ。」
「叔父上、私は勝つの勝にくらの蔵と書いて勝蔵と名乗ります。間違えなきように。」
叔父とはいえ、筆頭家老の秀貞にもこうして、気兼ねく話せる様になったのは、京での経験が生きているからだ。
「ふむ、そうか」
「よい、明日は林様と共に伊勢を見てこい。そして伊勢を経由して小牧に帰れ」
「はっ」
森は子の成長を見た。
正に、「男子三日会わずば、刮目してみよ」である。
本当によく大きくなったと思う森可成である。
実際、体躯もでかい。勝蔵は齢9つにして5尺を超えるかというところだ。
大きいなんてものじゃない。異常だ。
他の子が、3尺を超えたところに関わらず、2尺も大きい。1尺30cm程度であるから、9歳にして150cm超えるかというところだ。
しかもこの時代の平均身長が150cm5尺である。
鬼武蔵だ。しかも今の勝蔵は脳筋ではない。
森可成は末恐ろしさを息子に感じ驚く。
酒宴の席である。
勝蔵は三日月宗近に夢中。
この三日月宗近は鎌倉時代か平安時代に作られたという刀だ。一番古い所有者として知られているのは高台院こと秀吉様の正室ねね様だ。だとすれば、美濃攻め時に信長様が手に入れ、秀吉に譲ったというのはあり得る話だ。特に史実の美濃攻めで功績が大きいのは木下様だ。
あぁ、国立博物館で観たものと同じだ。こんなところで見れるなんて。
と考えて見ていると。
慶次殿が近づく。
「勝蔵、宗近だぁ。俺にも見せろ。」
「ダメです。慶次兄いはダメです。」
最近は公の場や心の中では、慶次殿だが、近しい者のみの時には慶次兄ぃと呼んでいる。
慶次殿がそう呼ばせている。
「ふっ素晴らしい刀です。私には合いませんがね。」
「竹中さん」
「私は竹中さんですか?寂しいですね。そうですね。半兵衛にぃと呼んでください。」
「さすがに、半兵衛さんでお願いします。」
「わかりました。」
「若、刀ばかりに気を取られますな。」
「各務、まだいたの?」
「ひどい言われようです。これから出発ですが、若が名をもらい元服というから、こちらに挨拶に来たのです。」
「う、すまん」
「まぁ良いでしょう。小牧でお待ちしております。奥方様も蘭丸様らも待っております。うちの妻も、ヨーゼ殿も。」
「うん、わかったよ。なるべく早く帰ります。」
素直なところはまだ子供である。転生して、こういうとこは退化した。
だが、誰もが(本人以外)認める天才が故、人が集まる。
しかも気取らず、使命めいた生き方である。
皆、誰もがほっとけない。
こうしていると、叔父上と父上が近くに来る。そして
「森殿、林様おめでとうございます。」
「うむ木下殿か、すまぬな」
「いえいえ、勝蔵殿が、活躍し、元服のおり、さぞやお喜びのことと存じます。」
木下様も話し方が立派になった。美濃や伊勢で活躍し、武将になった。
一夜城は作ったらしい。見たかった。あとで竹中さんに聞こう。
ちなみに一応同格、まぁ実績込みであっちが上だ。
木下様は家臣も増え、10名の武将格または小姓を有する。その中には、仙谷秀久殿や山内一豊殿もいるらしい。
ちなみに俺の家臣はいない。
「勝蔵殿、家臣は、竹中家ですぞ。」
「ええ、兄上。重矩も勝蔵殿の家臣です。」
竹中兄弟が家臣名乗りをした。
「弟の家臣は尺だが、俺、前田慶次も家臣だ。」
「なっ」
慌てふためく。
「各務もお前の家臣となる。」
父上が言った。
4名の家臣は誰もが羨むものばかり。各務は最近父上の下で大車輪の活躍らしい。
「勝蔵殿は男性にのみ好かれますな」
堀殿だ。この人は悟られぬように近づき、嫌なことを言う。
「あっ、私も家臣に入れていただくのは如何でしょう?」
「なっ、お屋形様の馬廻り衆でしょうが」
本当にこの人は苦手だ。
さらに他の方が近づいていらっしゃった。
「ふっ、これはうちの慶次を引き取っていただき感謝です。」
前田様だ。慶次殿は少しだけ嫌な顔。
「これは前田様、こちらから伺うところ申し訳ありません。」
「よい、愚甥が迷惑をおかけしてなければ。」
多分、本当に心配で来たのだろう。
意外に利家様は気遣いの人なんだ。
出会った頃より立派になった。堀殿以外は皆、本当の武将になった。
「久太郎は、最初から武将です。」とぼそっと、他の人に聞かれぬように言う堀殿。
どうやって心の中を読むの?本当に知りたい。
元服の件については色々とご意見あると思いますが、朝倉戦のことを考えると武将として色々と動きたいので、お許しください。




