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ルリアを正気に戻して異世界に送り返すことができたし、ゲートも閉じた。ついでに真子の暴走も止められた。
全ての問題を解決すると、レイカは小さく息をつく。
そして左腕のスマホに表示されたコメント欄に、視線を落とす。
:レイカさま! 同接がすごいことになってますよ!
:いつの間にかめっちゃ増えてた!
:レイカさんの配信が同接五百万超えてる!
:五百万!
:ルリアちゃんの登場あたりから爆増しつづけてたからな!
「ご、五百万! わたしの配信が五百万……!」
もうわけわかんないというか、トンデモない数字になっているので、レイカは軽く目まいがした。
「そうでした! ランキング! ランキングはいま、何位ですか!」
レイカはアワアワとしながらドローンカメラを見あげたり、スマホのコメント欄を見たりしながら問いかける。
レイカの呼びかけに応えるように、たくさんの視聴者のコメントが書き込まれていった。
:現在この配信のランキングは、ぶっちぎりの1位だ!
:日間総合ランキングの1位になってるよ!
:配信サイトのランキング確認してみたけど、ガチで1位に君臨しとる!
:1位じゃあああああああああああああああ!
:しかも2位の動画と大差をつけての1位!
:これもう今日は他の動画じゃ追いつくの不可能だろ!
:レイカさんの配信が圧倒的1位だあああああああああああああああ!
「1位……。わたしの配信が、ランキングで1位…………」
コメント欄には『1位』という文字が、いくつも飛び交っていた。
それでもまだ信じられなくて、スマホを操作して配信サイトのランキングを覗いてみると、一番上の枠内には自分の動画が置かれていた。
まちがいなく、レイカの配信がランキング1位を取っていた。
雲の上に立っているようなフワフワとした、よくわからない気持ちになる。だけど、本当に1位なんだ。自分が一番なんだ。
底辺配信者の頃から、憧れつづけていた夢のランキング1位。それを、つかみとることができた。
その実感が、じんわりと胸のなかにしみ込んでくる。
気づいたら、グッと両手を握りしめていた。
天井を見あげると、あらんかぎりの声で叫ぶ。
「やりましたあああああああああああああ! ついにランキング1位を取ることができましたああああああああ!」
喜びに打ち震えながら、レイカは胸の奥からあふれてくる熱いものを、声に出して響かせる。
¥50000:おめでとおおおおおおおおおおおおおお!
¥50000:マジでやりやがったあああああああああああああああ!
¥50000:1位おめでとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
¥50000:1位だあああああああああああああああああああああああああああああああ!
¥50000:ちくしょう! そんな全力で喜ばれたら、こっちまでうれしくなっちまうじゃねぇか!
¥50000:なんか自分のことみたいにうれしいぜ!
¥50000:めっちゃ感動した!
レイカがランキング1位に輝くと、大量の赤スパが送られてくる。コメント欄が、真っ赤な血の川になっていく。
赤一色に染まったコメント欄を見て、レイカはうろたえる。
「あ、あわわ、あわわわわ! ス、スパチャがこんな……! うぐっ、うぐぐぐぐぐっ、オゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ! エホォッ! エホッフォッフォッ……! ちょっ、感動しすぎて、むせて……!」
:奇声wwww
:スパチャもらいすぎて奇声wwww
:うれしすぎて咳き込んだwwwwww
¥50000:よし! もっとレイカさんに奇声をあげさせよう!
¥50000:赤スパ送りつづければレイカさまの奇声を聞きつづけられるwww
¥50000:やめたげろwwww
:やめたげろと言いつつスパチャすんなwww
:レイカちゃんに奇声をあげさせるのって、それ需要あんのかwwww
:少なくとも聞いてて笑えるwww
:なんてスパチャの数……。これ、いくらになるんだ……(お父さん)
:レイカちゃんランキング1位だなんてすごいわ! お母さんとってもうれしい! あと隣にいるお父さんが奇声を発して、めっちゃ咳き込んでるわね!(お母さん)
:お父さんも奇声を発して咳き込んでるのかいwwww
:こんだけ赤スパ送られたらなwwww
:父と娘そろって奇声を発して咳き込んでるwwww
:すごい額が振り込まれるだろうからなwwww お父さん覚悟しとけよwwww
:お母さんあんましお父さんの心配してないなwwww
:お母さんの重たすぎる愛は、すべて娘にそそがれてるのでwwww
レイカが感動のあまり咳き込んでいると、四つん這いになっていた真子がグスンと鼻を鳴らして立ちあがった。まだちょっと目に涙がたまっている。
:真子ちゃんが立ったwwww
:まだ涙目だけどwwww
:異世界に行けなかったことを引きずってるなwwww
:パイセン元気出せwwww
:こっちの世界にも楽しいことはあるからwww
真子は手の甲で涙をぬぐうと、やさしく笑いかけてくる。
「おめでとう、レイカ。ランキングで1位を取れたみたいね。あんた、昔からずっとこの瞬間を夢見ていたものね」
真子からお祝いの言葉をもらうと、レイカは満面の笑みを浮かべる。
「ありがとうございます、真子先輩! それに応援してくれた視聴者のみなさんにも、感謝してもしきれません! お父さんとお母さんも、支えてくれてありがとうございます! わたし、いまサイコォ~に幸せです!」
夢見ていた目標を達成することができて、たくさんの人達から祝福されている。
こんなにも、幸せなことはない。
こっちの世界に帰ってきて、よかった。
みんなにまた会うことができて、よかった。
心から、そう言えた。
:なんて良い笑顔なんだ!
:この配信を見れてホントよかったぁ!
:いろいろめちゃくちゃだったけど、感動したよ!
:そんなレイカさまに朗報!
:さっきSNSですごい投稿があったぞ!
「ん? 朗報?」
気になるコメントが書き込まれる。もう幸せすぎて胸がいっぱいなのに、まだ何かあるのだろうか。
無数に流れつづけるコメントを読んでいくと、レイカの目にソレが飛び込んでくる。
:ダンジョンハンターの連載再開が決定!
:ついさっき作者のナカタニサクラ先生と出版社のほうのSNSで発表されてた!
:マジかwwww
:いま作者のSNSをチェックしてみたらガチやったwwww
:ナカタニ先生、やる気出したかwwww
:もしくはレイカさんの配信を見て、やる気を取り戻したのかもwww
:たぶんそうだwwww
休載していた大好きな漫画、ダンジョンハンターの連載再開が決定した。
そのことを知らされたレイカは……。
「…………」
:あっ、固まったwwww
:フリーズwww
:石化したwwww
:動かなくなったぞwwww
硬直していたレイカはハッとする。途切れていた意識を取り戻すと、知らされた事実に心を揺さぶられる。
「連載再開! ダンジョンハンターの連載が再開するんですか! な、なんてことでしょう! これは、一巻からまた読み返さないと!」
大好きな漫画の連載再開に困惑しているレイカを、真子は呆れた目で見ていた。
:復活したと思ったらめっちゃビビってるwww
:闇堕ち勇者が登場したときよりも驚いてるんだがwwww
:異世界の勇者よりもダンジョンハンターのほうが強いからwwww
:漫画のほうが勇者よりも強いっておかしいだろwww
:これでダンジョンハンターが連載再開するまで毎日正拳突きするおじさんも報われたなwwww
:正拳突きおじさんの胴着が壊れる前に連載再開してくれてよかったwwww
:一巻から読み返すって、ホント好きなんだなwwww
:真子ちゃんがシラーッとした目してるのおもしろいんだがwwww
立て続けに良いことが起きすぎて、さっきからレイカの心臓は早鐘を打ちまくっている。だけど、今はまだ配信の途中だ。最後まで、気を抜いてはいけない。
レイカは深呼吸をして、高ぶる気持ちを落ち着ける。
「それでは真子先輩、地上まで戻りましょう。帰り道も視聴者のみなさんに楽しんでもらえるように、がんばらないと」
「……すっごい顔がニヤけてるわよ」
高ぶる気持ちを落ち着けたつもりだったけど、ぜんぜん落ち着けていなかった。
レイカはニヘラァとした、だらしのない笑みをこぼしていた。
それからレイカは真子と一緒にボス部屋から出ていき、来た道を引き返していく。
帰り道では、出現するモンスターたちを拾った石ころを飛ばして瞬殺しながら、上機嫌にアニメ版ダンジョンハンターのオープニング主題歌を歌うことにした。
連載再開が決まったので、いつも以上に歌声に熱が入る。
:またモンスターを蹴散らしながら歌ってるwwww
:ダンジョンハンター連載再開記念だなwwww
:狂気だろwwww
:歌ってみたwwww
:魔曲wwww
:進んでいくのはぇえええwwww
:モンスたちがレイカちゃんの視界に入った瞬間に消滅してるんですがwwww
:目についたらマッハで石ころ飛ばして頭を吹き飛ばしてるwwww
:これでまたダンジョンハンターのオープニング主題歌の再生数が伸びるなwwww
:イイウタゴエダナ~(白目)
:ナンテステキナウタナンダ~(発狂)
:ズットキイテイタイナ~(洗脳)
:おい何人かの視聴者が正気を失ってるぞwwww
:これが魔曲の力かwwww
:こうやって異世界の人たちも狂わされたのかwwww
:ちゃうわwwww
:この歌にそんな力はありませんwwww
:……レイ……カ……はや……く……かえ……くれ……(お父さん)
:どうしたお父さんwww
:まともにコメント打ててないwwww
:娘のこんな歌ってみた(殺戮)を再び見せられたらなwwww
:はぁあああああああああああああああああああ! レイカちゃんの歌声すぃきいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!(お母さん)
:……あっ、お父さんは泡吹いてます(お母さん)
:お母さんも魔曲の力で魅了されてるwwww
:お母さん、いきなり冷静になってお父さんの状況を伝えないでくださいwwww
:お父さん泡吹いてたんかwwww
:お母さんの言うとおり、ふつうにレイカさん歌は上手いなwwww
:カメラに映ってる光景がヒドすぎるがwwww
:歌だけ聞いてたいwwww
:モンスターたちが蹴散らされるのも込みで、レイカさまの歌の魅力なのでwwww
レイカは幸せそうな笑みを浮かべながら、ダンジョンに歌声を響かせて、地上へと帰っていった。




