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ルリアの双眸にレイカの姿が映されると、身を仰け反らせて咆哮をあげてきた。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「てい!」
レイカは左手を前に突き出すと、魔力をこめた光をルリアに向けて放って、直撃させる。
:ちょっ……!
:いきなり何を!
:レイカちゃんが速攻を仕掛けた!
:異世界の顔見知りにいきなり攻撃したぞ!
:勇者登場で頭がこんがらがってるのに、レイカさんがいきなり魔法を撃ったから脳の処理が追いつかん!
:状況が進むの速すぎる!
:よく攻撃できたな!
:待て! 勇者にはダメージがないみたいだぞ?
レイカが放った光をぶつけられても、ルリアには傷一つなかった。
そのことについて、レイカは理由を説明する。
「ルリアさんにダメージがないのは当然です。わたしがいま使ったのは【翻訳魔法】ですからね。異世界人の言語が、こちらの世界の人たちにも理解できるようにしただけです」
レイカはスマホ画面に表示されているコメントを読みながら、おかしそうにフフッと笑う。
:レイカさんおかしそうに笑ってますけど、いきなり現れたルリアちゃんに速攻で翻訳魔法をかけるのもまともじゃないよwwww
:フフッじゃないよwww
:判断が速すぎるwww
:レイカちゃんはいつだってリスナーのことを考えてるわね!(お母さん)
:確かに翻訳魔法をかけてくれるのはありがたいけどもwwww
:お母さんの言うとおり配信者の鑑だなwwww
:ふつうに攻撃したのかと思ったわwwww
:ルリアちゃんが瞬殺されたと思ってドキッとしたwww
:視界に入った瞬間に殺しにかかったのかとwwww
:見敵必殺www
:サーチアンドデストロイwww
:おまえらレイカちゃんを何だと思ってんねんwwww
:対異世界人用の最終兵器wwww
:こっちの世界の守護神wwww
:人類の切り札wwww
:ダンジョンハンターのガチファンwwww
:いろいろヒドいなwwww
レイカが使用したのが【翻訳魔法】だと判明すると、視聴者たちも安心したようで、おもしろおかしくコメントを書いてくる。
:異世界の勇者が登場したことが、もうSNSで話題になっとる!
:ギルド関係者や探索者連中が大混乱みたいだwwww
:ダンジョンに異世界人が現れて、ゲートも開いたからな!
:今から『復讐の彼方』に行こうとしてる探索者いたけど、ギルド職員に止められてたwww
:ギルドが『復讐の彼方』には近づかないようにって警告を発してるwwww
:封鎖するつもりか!
:レイカちゃんと真子ちゃん以外には『復讐の彼方』にもぐってる探索者はいないの?
:少なくともこのダンジョンで配信してるのは、レイカちゃんと真子ちゃんだけだ!
:パイセンは気絶中だから、実質このダンジョンにいる探索者はレイカちゃん一人だけだなwwww
ルリアの登場がよっぽど衝撃的だったらしく、ネットはお祭り騒ぎになっている。コメントも高速で流れつづけて、止まる気配がない。
その一方で、レイカが放った光をあびせられたルリアは憎しみの炎を燃やすように、怒気をこめて叫んでくる。
「ダァァァァァァァァァァァァクネスカイザァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
「……???」
ルリアの叫び声を聞いても、レイカは不思議そうに首をかしげていた。
けど、すぐにハッとして、左手を胸に添えてうなづく。
「はい、そうです。わたしが魔道王ダークネスカイザーです」
:だから忘れるなwww
:なんですぐに偽名を忘れちゃうんだよwwww
:異世界で三年くらい使ってた偽名なんだから忘れるんじゃないwww
:毎回ワンテンポ遅れて気づくよなwwww
:どうしてすぐに忘れちゃう偽名を名乗ったんだwwww
:ていうかダークネスカイザーではないからなwwww
:やべぇ状態の勇者を前にしてるのにノンキすぎやしないかwww
なんでこの人いきなり漫画キャラの名前を大声で叫んでるんだろう、と謎だったけど、偽名を名乗っていたことを思い出すと、レイカは自分のことを呼んでいるのだと気づけた。
自我を失っているルリアを観察すると、レイカは視聴者たちにも状況がわかるように、推測をまじえつつ解説する。
「ルリアさんはゲートを切り開いて、こっちの世界に渡ってきたようですね。おそらく、あの『禁忌の鎧』の力によって」
:禁忌の鎧!
:ルリアちゃんが装着している黒い鎧か!
:邪悪な感じがする鎧だけど、やっぱり危険なモノなのか!
「『禁忌の鎧』は、装着者にとてつもない力を与えます。それこそゲートをこじあけるほどの力を。ですが、代償として装着者は正気を保てなくなります」
:それでルリアちゃんの様子がおかしいのか!
:自我を失っている!
:どうしてそんな鎧を着ちゃったんだ!
変わり果てたルリアの姿を画面越しに見ながら、視聴者たちが嘆きの声をあげる。
「ルリアさんが禁断の力に手を出してしまったのは、わたしを倒すためでしょう。どういうわけか、彼女はわたしを恨んでいますからね」
:……うん、まぁ(納得)
:いや、あの……(察し)
:記録魔法の映像を見てたら、恨まれて当然かと……
レイカが恨まれていることに関しては、なぜか視聴者たちはすんなりと受け入れていた。ちょっと釈然としない。
「確かにわたしはルリアさんから聖剣を奪ったり、『勇者の盾』や『勇者の鎧』を破壊したり、『呪いの首輪』をはめてたくさんのモンスターをおびきよせたり、伝説の魔獣を倒すためのオトリにしたり、何度か決闘することになってその度に圧勝して心をへし折ったりしました。そういうことがあって、彼女の心は闇へと堕ちてしまったのでしょう」
:それだよぉ!
:絶対それ!
:どんだけ勇者にむごいことしてんねん!
:レイカさんのせいじゃんwwww
:勇者の装備をことごとく奪うか破壊してんなwwww
:ルリアちゃんが闇堕ちしたのはレイカさんが原因wwww
:頭が痛い……(お父さん)
レイカは気まずそうに「うっ……」と声をもらす。それからコホンと咳払いをすると、話を続ける。
「まぁ、そんなこんなでルリアさんは力を欲して、『禁忌の鎧』に手を出したわけです。だから、あんなふうに変わり果てた姿になってしまった。それを見ていたわたしは、そっとしておいてこっちの世界に帰ってきました。ルリアさんは自我を失いつつも、執念でわたしを追いかけて、こっちの世界まで渡ってきたようですね」
:そっとしておくんじゃないwwww
:禁忌の鎧を装着したときの姿を異世界で見てたのかよwww
:見てたのなら放置して帰ってきちゃダメでしょwwww
:せめて正気に戻してから、こっちに帰ってこないとwwww
:あの状態のまま放置されてたルリアちゃん哀れwww
:自我がなくても、レイカさんへの恨みでこっちまで来ちゃったのかwwww
:いろいろメチャクチャされてたみたいだからwwwww
:この状況を招いた元凶はレイカさまだったwwww
「……わたし、どうしても早く帰りたかったんです。ダンジョンハンターの続きを読みたかったし、ゲームしたかったし、配信もやりたかったから……」
レイカはギュッと唇を噛みながら、切実な表情で当時の心境を振り返る。
:めっちゃ深刻そうなんですがwww
:レイカさんのなかでは自我を失った勇者よりも、ダンジョンハンターやゲームのほうが大事だったwww
:カップ麺も食べたかったwwww
:お母さんはレイカちゃんが早く帰ってきてくれてうれしかったわ!(お母さん)
:実際に異世界に行ったら、早くこっちの世界に帰りたくなるだろうけどもwwww
:だからって、あの状態のルリアちゃんを放置したままにするのはどうかとwwww




