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休日の正午を過ぎると、快晴の空から降りそそぐ気持ちのいい日差しをあびながら、レイカはとあるダンジョンの前まで足を運んでいた。
身体にまとっている青いローブは、このまえヒュドラの血で汚れたけど、きれいに洗浄されてシミ一つ残っていない。
左腕にはスマホをアームバンドで固定しており、いつでもコメントが見れるようにしてある。
撮影用のドローンカメラは、異世界に渡る前から使用していたものを持ってきた。両親が大切に保管してくれていたようだ。
まだ自分のドローンカメラがきちんと機能するとわかったときは、感動のあまりギュッと抱きしめてしまった。それほど愛着がある。
昔はほとんど誰にも見てもらえなかったけど、もうあの頃とは違う。レイカは手に持ったドローンカメラを見つめながら、気合いを高める。
「……レイカ。今日はその、やっぱり異世界で手に入れた力を使うのよね?」
隣にいる真子が、ソワソワとしながら尋ねてくる。
この前と同じように、真子は白銀の軽装鎧を身につけていて、腰に剣を下げている。
今日はヒュドラから助けてもらった恩返しということで、レイカに付き合ってくれている。それに真子は個人的にも、レイカが異世界で手にした力に興味があるようだ。
「もちろんです。視聴者のみんなも、それを期待していますからね」
「そ、そう……」
レイカが肯定すると、真子はゆるみそうになる口元を手で押さえて隠していた。
誰よりもレイカの力を見たいのは、異世界系の創作物が好きな真子なのかもしれない。
レイカとしても、こうして真子と一緒にダンジョンにもぐることができるのは、懐かしくて胸が躍る。
「……そろそろ予告していた時刻ですね」
時間が迫ってくると、心音が加速する。妙に喉が乾いてきた。
「緊張しちゃうのは仕方ないわね。まぁ、この前の雑談配信のときと同じ要領でやっていけば大丈夫よ」
真子は小さく笑みを浮かべて、助言をくれる。
おかげで多少は緊張がやわらいだ。真子先輩がいてくれてよかったです、とレイカは心のなかでお礼を述べる。
それからレイカと真子はドローンカメラを頭上に飛ばして、準備を整える。
今日は前回よりも待機人数が多い。家での雑談配信のときよりも、たくさんの視聴者が集まるだろう。
時間が迫ってくると、レイカは真子と顔を見合わせる。
真子がこくりとうなづいた。
二人は同時に、スマホ画面の『配信開始』をタップする。
そしたら左手に装着したスマホに、数えきれないほどのコメントが雪崩のように殺到してきた。
:きたああああああああああああああああああああああ!
:ダンジョン攻略だあああああああああああああああああああ!
:異世界の力がどこまで現代ダンジョンに通じるのか楽しみだ!
:予告していたとおり真子ちゃんと一緒だな!
:真子ちゃんの配信とあわせて、二窓で見させてもらうぜ!
:俺も二窓で見てるよ!
:……レイカ。もう自分から異世界に行くような真似はしちゃいけないよ(お父さん)
:お父さんったら、今朝からオドオドしっぱなしだわ(お母さん)
:お父さんとお母さん来たwwww
:お父さん見張りにきたなwww
:娘がアホなことしないように監視にきたかwww
:このまえの配信を見たら、残当としか言えないwwww
:てか、いきなり同接が五十万超えてて大草原!
:すっご!
:注目されてるからな!
:血塗れ女がダンジョンにもぐるということで、大勢の探索者たちが見にきてる!
:そこは異世界帰りの少女がでいいだろwww
「…………」
:ちょっwwwレイカさんwwww
:動かなくなったぞwww
:石化の状態異常かなwwww
:またフリーズしてるwwww
「ハッ! す、すみません! あまりのコメントの量と、同接五十万という数字に意識が飛びました!」
:戻ったwww
:意識飛んでたのかwwww
:固まったまま、配信終わったらどうしようかと思ったよwww
:それはそれでおもしろかったwwww
:放送事故だろwww
レイカは正気に戻ると深呼吸をする。それで少しは落ち着くことができた。
「こっちも同接がすごいことになってるわね」
隣にいる真子も、手に持っているスマホを見ながら面食らっていた。真子の配信にも、かなりの視聴者が集まってきているようだ。




