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:レイカちゃんの配信よりも上のランキングって、どんな動画があるんだ?
:レイカさんのちょい上が『ダンジョンハンターが連載再開するまで毎日正拳突きするおじさん』だなwwww
:ここでまた出てきたダンジョンハンターwwww
:ちょっとしたミラクルが起きたwwww
:胴着姿で正拳突きしてるおじさんだなwwww
:俺もアレ見てるwwww
:動画あげはじめの頃は胴着が新品同然だったのに、もうボロボロになってんだよなwww
:ナカタニ先生。早く連載再開したげてwwww
:早く連載再開しないと正拳突きおじさんの胴着が壊れてしまうwwww
コメント欄には、レイカの配信よりもランキングが高い動画について、あれこれ情報が書かれていた。
「そうなんですね。わたしの配信よりもちょっと上が『ダンジョンハンターが連載再開するまで毎日正拳突きするおじさん』なんですね。…………?」
レイカは微笑みながらコメントを読みあげる。
読みあげると、硬直した。
笑顔のまま固まって、動かなくなる。
:ん?
:どうしたん?
:レイカちゃん?
:またフリーズしたんだがwwww
頭のなかで情報を整理すると、レイカは両目を大きく見張って、感情を爆発させた。
「うぇえええええええええええええええ! きゅ、休載! ダ、ダンジョンハンターが休載してるっ! はぁ! そんなバカなことが! はぁ! そ、そんな、そんな! ど、どどどどどどどど、どういう、どどどどどどどどどどど、どういうことっ!」
:知らなかったのかwwwww
:めっちゃ動揺してるんだがwwww
:なんか異世界に行ったときよりも驚いてるぞwwww
:なんで異世界に行ったときよりもビビってんだwwwww
:そりゃ異世界に行くよりも、ダンジョンハンターが休載することのほうが大事だからなwwww
:そんなわけないwwww
:レイカさんこっちに帰ってきたばかりで、まだ休載の情報をつかんでなかったのかwwww
:近年になって休載が増えてるよwwww
:ごめんなさい、レイカちゃん。わたし、どうしても言い出せなくて……(お母さん)
:お母さんwww
:お母さん、休載の情報を知ってたけど、教えてなかったのかwwww
:まぁこんだけショック受けるとわかってたら、異世界から帰ってきたばかりの娘には言えないよなwww
:マジで早く連載再開してほしいwwww
:ていうか、ここにきてまた同接が急激に増加してるんだがwwww
:ダンジョンハンター休載の知らせを聞いたレイカちゃんのリアクションがよすぎて、視聴者が集まってきたwwww
:たぶんここ切り抜かれるなwww
コメント欄の書き込みや、恵美のコメントからするに、どうやらダンジョンハンターが休載しているのは事実のようだ。
「な、なんてことでしょう……!」
両手で顔をおおってうずくまりたい気分だ。だけど、今はまだ配信中なので、そんな姿を視聴者に見せるわけにはいかない。
落ち着こう。ぜんぜん落ち着けないけど、落ち着こう。
レイカは肺のなかの空気をぜんぶ出し切るように息を吹き出すと、正面のディスプレイを見つめた。
「し、心配をかけ、かけてしまってすみ、すみま、すみません! わ、わた、わたしなら、だだだだ、だいじょ、大丈夫ですので!」
:ぜんぜん大丈夫じゃないだろwwww
:これは大丈夫じゃないなwww
:ノックダウン寸前wwww
冷静になろうとしたけど、ちっとも冷静になれなかった。レイカはお腹を空かせた小動物みたいに「うぅ~」と唸る。それから咳払いをして、ディスプレイに視線を向ける。
「あれだけおもしろい漫画です。ストーリーづくりに時間をかけるのも、仕方ありません。ナカタニ先生には、ゆっくりと休んでもらいましょう。とりあえず、刊行されているぶんの最新刊まで追いかけて、いろんな考察動画を見て楽しむとします」
:レイカちゃんムリしてるなwwww
:無茶しやがってwwww
:どうにか平静を装おうとしてるwwww
:ダンハンは考察動画も楽しめるからwwww
:連載再開するまでは気長に待つしかないwww
明らかにショックを引きずっているレイカに、心配する視聴者たちのコメントが書き込まれていった。気づかってくれる視聴者たちに、レイカは感謝する。
:レイカ、もしかしてあのこと忘れてない?(先輩)
:真子ちゃん?
:ん? どうした?
:なにかあるのか?
真子のコメントを発見すると、レイカはハッとして背筋を伸ばす。
「そうでした! ダンジョンハンターの休載を知ったショックでド忘れしていました!」
あやうく、このまま配信を終えるところだった。
レイカは姿勢を正すと、ディスプレイを見ながら語りかける。
「次の配信は、真子先輩とパーティを組んで、久しぶりにダンジョンにもぐりますよ。よかったら見にきてください」
:なにぃぃぃ!
:ダンジョンにもぐるのか!
:しかも真子ちゃんと一緒にだと!
:また二人とも血塗れになるぞwwww
:もう血塗れにはならんやろwwww ……たぶん
:異世界帰りの力、とくと見せてもらおうか!
:うおおおお! 今から楽しみだぁ!
次回の配信について告知をすると、コメント欄が盛りあがりを見せる。
レイカが異世界で得た力を振るうことに、みんな期待しているようだ。
「それでは、今日はこのあたりで。みなさん、おつかれさまでした」
:おつかれ~!
:ゆっくり休んでくれ!
:おもしろかったぞ!
たくさんのお別れのコメントを読みながら、レイカは配信を終える。
「つ、疲れました……」
配信が切れると、一気に疲労の波が押し寄せてきて、グッタリと椅子の背もたれによりかかった。久しぶりの配信に、とても緊張していたようだ。
予想をはるかに超えて、多くの視聴者が集まってきてくれた。こんなのは初めてなので、まだ現実感がない。
「ランキング1位を取るという夢のために、そして応援してくれる視聴者のために、がんばらないといけませんね」
レイカは気合いを入れて力強くうなづくと、椅子から立ちあがる。
一階のリビングに降りていくと、恵美が「レイカちゃんすごくよかったわ!」とハシャぎながら褒めてくれた。たくさん視聴者が集まったことを、恵美も自分のことのように喜んでくれている。
そんな恵美とは対照的に、先ほどの配信を見ていた信治はずっと頭を抱えて、何やらブツブツとつぶやいていた。レイカのおかしな発言や、異世界での振る舞いに、メンタルが削られたようだ。
その後、本日のレイカの配信はアーカイブからも再生数が伸びていき、最終的には日間総合ランキングの70位までのぼっていくことになった。




