第14話 帰り道、中田さんと…
肩を並べて帰路についた俺たちは、その後も話が途切れることはなくずっと会話を続けていた——
住宅街に入ると既に夜の帳が下りていて、街灯の明かりがまるで優しく二人を見守るように灯っている。
中田さんの家が近づくにつれて、彼女の足取りは徐々にゆっくりとなり口数も少なくなっていく。
そして、今日の出発点となったマンション前で足を止めると、彼女はそっと俺を見つめてきた。
「………着いちゃったね……バイバイしなきゃいけないね……」
「うん……」
ぽつりとこぼれた中田さんの言葉がひっそりと夜の空気に溶けていく。
プレゼントの紙袋をぎゅっと握る彼女の仕草がどこまでも名残惜しそうで、胸の奥がきゅうっと苦しくなる。
ここは男として、しっかり彼女を送り届けなきゃ……
「今日はついて来てくれてありがとう!じゃあ、俺はここで中田さん見送るから……」
「うんっ、こちらこそありがとねっ……すっごい楽しかったよ!プレゼントもずっと大事にするね!……また……また、雪村くんと一緒にどっか行けたらいいなっ……」
「もちろん!ミスコンに向かって頑張ろう!」
「うんっ、よろしくね雪村くんっ!……じゃ、じゃあ私はここで……」
そう言って中田さんは踵を返しかけた……が、なぜかもう一度こちらを振り返り口元をもごもごと動かし始めた。
「………どしたの?中田さん?」
「あっ……あのさっ、雪村くん……そのっ、雪村くんが良ければだけどさっ………」
「うん……?」
「雪村くんが良ければ……連絡先、交換したいなって……今日、携帯直ってたみたいだから……」
大失態だ……今日は色々ありすぎて、完全にそのことを忘れて中田さんに言わせてしまった……
彼女はその高い身長を縮こませるように、恥ずかしげにもじもじと体を揺らしている。
そんな様子に焦った俺は、思わず声がうわずってしまう。
「ももっ、もちろん!交換しよっ!ごめんね、昨日俺から言い出したのに……」
「ううん、いいの。交換してくれるだけで私嬉しいからっ!」
「じゃあ……中田さんのID教えてくれたら俺がすぐにメッセージ入れるから」
「うんっ!ありがと雪村くんっ!」
そうして互いにスマホを取り出し、無事に連絡先を交換した俺たち。
中田さんは街灯の光を受けて瞳がきらめき、口元には嬉しさがにじんでいた。
俺も同じ気持ちで、ついニヤけてしまっていたと思う。
「じゃあ私はこれでっ……雪村くん今日はほんとにありがとねっ!………連絡待ってるからねっ!」
「うんっ!じゃあね、中田さん!」
何度もこちらを振り返って手を振る中田さんに俺も小さく手を振り返す。
彼女の姿が完全に見えなくなるまで、俺はその場を動けずに立ち尽くしていた。
そして、小さく息を吐く。
「ふぅ……楽しかったけど、緊張でなんかどっと疲れた……」
今日一日を振り返るだけで鮮明な情景が浮かび胸がほんのり熱くなる。
女の子に免疫のない自分を自嘲気味に笑い、俺はポケットからスマホを取り出して画面に指を走らせる。
【薫:中田さん、連絡先交換してくれてありがとう。また一緒に買い物とか行こうね】
そんな稚拙な文章を綴り終え、俺はそっと送信ボタンに指を伸ばした——




