プロローグ
※本作は全14話で完結予定です。
よろしくお願いします。
「どうしてお姉様が!結婚も決まっていたのに……」
私は、姉の袖口を握りしめた。それを優しく、引き剥がしていく。
「ねぇ、マレッタ。私は都合がいいから利用された。それだけよ」
「……納得出来ないわ。誰かに相談してみる」
そう決意して、家を飛び出した。
行き先は決まっていた。
「サミュエル!」
彼は幼馴染で、私が一番に信頼を置く人物だった。
「マレッタ。……君の姉上の話は聞いたよ」
「私、どうすればいいかわからないの」
溜め込んだ感情を彼にぶつけた。
どこにもやり場のない怒りが胸に渦巻いて、言葉が溢れてくる。
「……諦めるしかないんじゃないかな。そこまで不幸な話でもないと思う」
彼は私から視線を逸らした。
そして、貴族として正しいことを告げた。
「きみの姉だって……富豪に嫁ぐんだろう」
「でも! 二十も上の、後妻としてよ!」
「政略結婚なんて珍しくない。世の中の女性のほとんどがそうだ」
「でも……婚約してたのよ。幸せそうだったのよ……」
「……俺は、君が同じ目に遭わなくてよかったと思ってる」
「……!」
「あなたも……同じ事を言うのね……」
そして、姉は実質売られるように、嫁いで行った。
元婚約者と私に、得意だった刺繍を残して。
私は、その刺繍入りのハンカチを握り締めて誓った。
「男に人生を左右されない生き方をする」と。
――それが、十九歳の夜だった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
もし物語を楽しんでいただけましたら、
評価やブックマークで応援していただけると励みになります。




