第21話 独り言ちた。
その日の晩、いつものようにひなのと一緒にベッドに入った俺は中々寝付けずにいた。
時刻は既に0時を回っている。
まぁ盆休みはまだまだあるし急いで寝る必要もないか。
俺は体を起こし、ベランダへ出た。
真夏ではあるが夜中という事もあり、夜風は涼しい。
住宅の明かりもまばらで特段綺麗と言う事もないがな。
「……ふぅ」
ベランダの手すりに肘を乗せて吐いたため息は俺の心を少しだけ落ち着かせてくれた。
たぶん昔ならここでタバコに火を付けてた気がする。
ひなのが産まれてからはすっかり辞めちまったけど。
あかりによく怒られてたっけなぁ……
『タバコ買う金があんならあたしにもっと貢ぎなさい!』とか平気で言う奴だったよ。
ははっ、なんだちっとも佐々倉さんと似てねーな。
佐々倉さんなら『諒太さんのお体に良くないですから、駄目ですよ』って優しく言ってくれる気がする。
似てるのは外面だけ。
あかりはあかりだし、佐々倉さんは佐々倉さんだ。
そんなの最初っから分かってた事だ。
けれどいざ佐々倉さんとさえもう会えないとなった現状で、俺は──
「……あれ」
気が付くと、俺の両目からは涙が流れていた。
「……だっせぇ」
片手で涙を拭い、夜空を見上げた。
佐々倉さんは結局夢を諦めた。
あんな些細な事がきっかけでな。
うちに来る事はともかく、Vtuberとして懸命に頑張って来たのに……
ふと、思ってしまう。
佐々倉さんは俺と出会わなければ今もVtuberとして活動出来ていたんじゃないか?
あの出会いは運命的であったが、俺が駄目なものは駄目だと言えば良かっただけだ。
もしそこまでは考え過ぎだとしてもだ。
風邪を引いてひなのをきちんと見てられなかったばっかりに現在の状況を招いたのに間違いはない。
「……結局原因は俺じゃねぇか……」
……俺はいつも遅すぎる。
いつだって物事が終わってしまってから気付くんだ。
あーしていれば、こうしていれば。
言ってしまえばキリがないが、紛れもない事実でもある。
あかりの時もそうだった。
病気が発覚してからそれまでの全ての自分の行動に後悔を覚えた。
タバコだってそうだ。
もっと早く辞めてあかりの欲しいもの、したい事、全部してやりたかった。
今度こそ後悔しない為にと息巻いた佐々倉さんへの行動も結局自分が台無しにして。
俺は何がしたかったんだろうか。
ほんの少し前まであった筈の想いも、今ではもう思い出せない。
こんな時……あかりはいつも励ましてくれたな。
あかり……俺って奴は一人じゃ何も出来ねぇよ……
力になると決めた筈の女の子さえ守れなかった……
「……くそっ」
力無く手すりを叩いた時だった。
ごとん、とあかりの仏壇がある部屋から物音がした。
「え……?」
……なに?正直、めっちゃ怖いんだけど。
夜中に止めろよ!イタズラが過ぎるぞあかり!!
けれど確認しない訳にもいかない。
「ええい、ままよ!!」
俺はベランダ越しに繋がっているあかりの部屋のドアを開いた。
恐る恐る足を踏み入れた俺は物音の正体に気付いた。
「……幽霊の正体見たり、か」
俺は確かに怖かった。
しかし、それでも、幽霊でも良いから会いたい奴が居る。
どうやら物音は仏壇にあるあかりの遺影が起こしたものだったらしい。
そして遺影があった場所には枯れ尾花──いや、手紙があった。
俺はそれを手にとって書いてある文字を読んだ。
「んだよこれ……俺は知らんぞこんなもん……あかり……!!」
可愛い便箋の包みには、短くこう書かれていた。
──あたしのりょーたへ、と。
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