第20話 vs佐々倉母
禁じる、雅子さんがそう言い切った瞬間、佐々倉さんは眉を潜めてさらに俯いてしまった。
これはお母さん、相当にご立腹のようだな……
はてさて、一体どういった具合で話を進めようか。
俺が思案していると佐々倉さんが初めて口を開いた。
「……諒太さん、もう良いんです。私全部諦めますから……普通の"JK"に戻りますから」
「……!」
力なく笑う彼女を見て、俺は思わず太ももの上に置いた拳を握り締めてしまう。
彼女がここまで追い詰められている理由は予想がついてる。
江本と電話して分かった事だが、恐らく俺が寝込んでる間に佐々倉さんの配信にひなのが入ってしまったんだろう。
調べるのには苦労したが、ネットを見る限りそれを見たリスナー達が少々ざわめいてると言った程度だ。
こんなの何とでも説明出来る事だ。
問題なのは雅子さん。
ちょっとした炎上騒ぎに反応して、佐々倉さんの努力を無に帰そうとしている。
けれど子を持つ親なら分かる。
自分の子供がちょっとした、何て事ない言葉で傷付くかも知れない恐怖が。
ならばこそ佐々倉さんの為に俺が出来る事は一つだ。
「お母様、私とみやびさんは先月この子が家を飛び出した時に出会いました」
「諒太さんっ……それは……!」
やっぱり言って無かったんだな。
ま、雅子さんは気付いてるみたいだが。
「……そう、でしょうね。家出した娘を引き受けたのが男性だと分かった時、どれ程怖かったかあなたに分かりますか……?」
「えぇ、私にも大事な娘が居ますから」
俺はそう言って佐々倉さんの家のリビングでテレビを見ているひなのを見た。
「……あの子が将来家を飛び出して男の家に泊まったら、なんて考えたくもないですよ」
「……失礼、あなたを責めたい訳じゃないんです。娘を助けてくれた事、感謝もしていますから」
「分かってますよ」
嫌みの一つくらい言いたくなる、親だからな。
俺は視線を雅子さんに戻した。
「お母様、私は誓ってこの子にやましい事をしておりません。ですからどうかこれからも彼女との関係、そして配信活動を続けさせてあげてはくれませんか?」
「……」
雅子さんは少しの間押し黙り、俺の瞳を真っ直ぐに見つめて一言。
「──許可出来ません」
「……!」
雅子さんはテーブルの上に置かれたカップに口を付けた後、ゆっくりと語り出した。
「あなたがこの子に何もしていない事と、これからもしない事とはイコールじゃありません。それにあなたがしなくてもこの子から──と、いうのも考えられます。どうやら相当に惹かれているようですしね」
「か、母さん!」
……ま、正直ご明察と言った所か。
「あなた達はあまりにも立場や年齢が違いすぎる。ましてや子供も居る。みやびの将来に不安が過ってしまうのは当然でしょう」
「も、もう……!」
あーあー顔を真っ赤にして……
「それにです。配信活動とやらもやたらと時間を食うばかりで何の役に立つと言うのです。ましてや騒ぎを起こしたらしいじゃないですか。今どきネットでしでかした事は消えません。辞めさせるのが親と言うものでしょう」
「そ、それは、今回の件はそれ程のものでは……!」
俺がそう噛み付いた時、雅子さんはスッと目を細めた。うへぇこえぇ……
「"子持ちVtuber(JK)"……でしたか。こんな事が学校にでも知れたらみやびは退学ものですよ。どこがそれ程なのですか……!!」
語気を強めた雅子さんはそのまま立ち上がった。
「今回は事なきを得そうですが今後みやびがさらに有名になった時、取り返しのつかない事態が起こったらこの子は生きていく手段を全て失ってしまう!親としては、今、辞めさせないといけないのです!」
「……っ」
俺は何も言い返す事が出来なかった。
確かに雅子さんの言う通りなんだ。
ネットでの活動というのは例え顔を出していなくても危険が付きまとうものだ。
どこからでも情報は入ってくる現代でVtuberと言うだけでは完全に安全とは言えない。
ましてや佐々倉さんは女子高生。
今ならまだどんな未来も手にする事が出来る。
それを脅かしてまで、Vtuberにしがみつく価値があるのか……
「……この子の事を想ってくれての今回のご挨拶、嬉しくはあります。ですがこの子を想うならばもう関わらないでやって下さい。お願いします」
佐々倉さんは何も言わず、ただ俯いている。
ただ一言、いやそれは違うと言えば良いんだ。
それだけで佐々倉さんは元気になってくれる。
──しかし、今の俺に雅子さんを説き伏せるだけの武器はなかった。
結局、俺は何も出来ずに佐々倉家を後にした。
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