如月十五日
「ごめんね」と 微笑む君が 手に持った
箱には淡い 夢が詰まって
「あ、あのっ」
後ろから声を掛けられて、振り返ってみると、そこにはクラスメートの女の子がいた。
仲の良い方だとは思うけれど、こうして彼女から声を掛けてくれることは少ない。話し掛けられただけで、これだけどぎまぎしているのだから、仲良しというのも独り善がりなのかもしれない。
僕の憧れの人であり、願わくば一生をともに……なんて考えると恥ずかしくなるからやっぱやめた!
とにかく、僕は彼女のことが好きなのである。
「ごめんね。今日、もう二月十五日……」
いつもは自然に話せていると思うのだが、今日は彼女も、どこか緊張しているようだった。
突然謝って、今日の日付を言って、どうしたのだろうか?
不思議に思っていると、彼女は僕に、可愛らしい包装に包まれた小さな箱を差し出してきた。
「本当は昨日あげるつもりだったんだけど、一日遅れちゃって、本当にごめんね。受け取ってくれないかな……?」
それって、もしかして、もしかするのかもしれない。
僕は彼女からその箱を受け取ると、お礼を言って、逃げるようにその場を走り去ってしまっていた。
だって、あのまま彼女と一緒にいたら、おかしくなってしまいそうだったから。




