如月三日
鬼は外 福は内よと 放る豆
どうして僕に 当てるのだろう
「おにはーそとー! ふくはーうちー!」
子どもたちは楽しそうに豆まきをしている。
そうか。今日は節分なのか。
楽しそうだな。もう少し近くへ見に行ってみようか。
「おにはーそとー!」
「おにはーそとー!」
福は内がどこに行ったのかというくらい、鬼は外を言い続ける子どもたち。
先程までは両方を順番に言っていたというのに、どうしてしまったというのだろう。それに、僕の方へ近づいてきている。
「痛いっ」
子どもたちの投げた豆が僕に当たった。
しかし近くにきた僕が悪いのだから、それくらいで怒りはしない。
「痛い痛い、痛いってばっ」
次々に僕へと降り注ぐ豆。
当たってしまったというわけではなくて、僕を狙って投げているという様子である。
「おにはーそとー!」
なんでっ?! 子どもから見たら、僕は鬼に見えるのかい?
驚きながらも、豆を当てられてはやはり痛いので、僕はやむを得ず全力疾走で逃走する。
それがまた子供たちに僕を鬼と感じさせたらしく、みんなで僕を追い掛けてきて、豆を投げつけてくる。
鬼にしか効力のないものだと思っちゃいけないよ? 普通の人だって、体に豆が当たったなら、それは十分に痛いものだから。
もうなんなんだよ。
子どもたちは無邪気で可愛らしいから、別に怒りはしない。
怒りはしないけれど、鬼だと思われているのかと思うと、なんだか悲しいな。
鬼と言われるような行動をしたことなんてないと思うのに。




