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365個の物語  作者: ひなた
如月 冬の恋は一方通行のようでもあり、……だけど重なっている。
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33/365

如月二日

  甘え声 恥じらい君が 珍しく

    にーにーなんて 殺人魔法


 いつも君は不機嫌そうにしている。

 その理由を尋ねると、いつも僕のことを罵倒して、更に不機嫌そうな貌をする。

 そんな状態なものだから、僕のことが嫌いなのかと思い、僕は話し掛けないようにした。できるだけ、君には近付かないようにしていた。

 するとある日、君の方から僕のところに来てくれた。

 どうしてかはわからなかったけれど、僕はとても嬉しかった。だけど君は、いつにも増して不機嫌に見えた。

「今日、あたしの部屋に来なさい」

 急になんだろうとは思いつつも、そんな嬉しい誘いを、断ることなどできるはずもなかった。

 そもそもの言い方が、誘いというものではなくて、命令に近いものでもあったけれどね。

「なんで最近、あたしのところに来てくれないの? もしかして、あたしがいつも悪口ばっかり言うから、もう嫌いになっちゃったの?」

 恐る恐る部屋を訪れると、そんなことを言われて、顔からいろんな液体が出てくるところだった。

 感動の涙、興奮の鼻血、欲望の涎。

 どれも出ないように堪えていると、思いがけず汗が額から湧いてくる。

 それを拭いながら近付くのだけれど、君は不機嫌そうな顔もしていないし、不快そうな顔だってしないし、暴言だって吐かない。

 本当に、どうしてしまったのだろう。

「その、なんだろう、あのさ。お前は昔のあたしが好きだったって、そういうことでしょ? なんか、ごめん……。今日だけくらいなら、またにーにーって、そう呼んであげても良いよ? ほら、二月二日、にーにーの日だし?」

 照れながらだけれど、そのようなことを言ってくるのである。

 いやまあ、照れながらなところがまた良いわけだが。

 もしかして僕のことが嫌いだったわけでなく、ツンデレちゃんだっただけってこと?

「にーにーと呼んでくれた、昔の君ももちろん好きだった。けれど、お兄ちゃんは今の君も好きだよ。嫌いになんてなるもんか。だって、お兄ちゃんなんだから、いつだって妹が好きに決まってるだろ? 話し掛けてほしいのなら、それを言葉にして仰いよ。一言言ってくれれば、いくらだって話し掛けたのに。嫌いだというもんだから、迷惑は掛けられないと思ってね」

 殺人魔法に掛かった状態でではあるけれど、僕はなんとかそう言ってやる。

 こんなときくらいは、兄としての威厳を保てなければいけない。

「ありがとう。大好きだよ、にーにー♡」

「ぷはぁっ!」

 本物の狂気レベルマックスの殺人魔法が来たものだから、堪えていたものが全て吹き出してしまったが、俺の言葉は届いた……はず。

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