番外編 【孤独の人形師】
怜と師匠の話。時間的には本編の3話あたり。
3・6話を読んでから読むことをお勧めします。
番外編【孤独の人形師】
お願いだから
独りにしないで。
寂しい。寂しい。寂しい。
寂しい。寂しい。寂しい。
寂しい。寂しい。寂しい。
「人形は人間と違って一生一緒にいてくれるんですよね」
この質問をするのは2度目だった。師匠は1回目とは違う答えを出した。
優しい、けれどどこか悲しげな声で。
「君にもきっとできますよ。大丈夫。自分を信じなさい」
大切なことを教えてくれた、
いつも見守ってくれた大切な存在。
「私の人形は私の弱さでできているんです。君にはそうなって欲しくない」
「君には強い、希望のある心で人形を作って欲しいですね」
あの人の願い。
叶えたかった。
けど・・・できなかった。
寂しさや悲しさ。自分のためにしか作れない人形。
冷え切った心は貴方さえ憎んでしまいそうで怖い。
呪われた運命を全て貴方の所為にしてしまう。
醜い感情を全て貴方に向けてしまう。
弱い俺。
貴方の願った俺になりたかった。 それなのに・・・。
§§§
「・・・」
俺は目の前の人形を見つめた。
あの人に似せた人形は未だ完成していない。
何度やっても結果は全て同じだった。
あの人の魂はもう存在しない。
こうなるのは当たり前の結果なのだと
頭ではわかっていてもどうしても諦めきれなかった。
もう一度あの人に会って本当のことが知りたかった。
「こんな物・・・!作ったって意味が無いんだ・・・!」
力いっぱい握りしめた拳。
爪がくい込んで皮膚が破ける。
僅かに血の・・・匂いがした。
「師匠・・・」
人形と人間は似ているけれど全く違う。
人間は必ず自分を置いていってしまう。
そんなことわかりっきっていた。
・・・はずなのに。
それでも人の温かさを望んでしまうのは何故なのか。
「貴方ならあの時の様に答えをくれますか・・・?」
俺に技術をくれた時のように───・・・
fin.
DMの番外編になります。これからどんどん増えていく予定です。