第五話「恋子さん伝説」
1.恋子さんのアパート(夕方)
○ アパートの前。恋子、田中、会長が立っている。
「それじゃあ」
恋子さんを後に会長が去っていく。
田中だけ、そこに残る。
恋子「どうしました?」
田中「いや、今日はちょっと寄らせてもらおうかなと」
恋子「えっ!?」
恋子の顔がパッと明るくなる。
恋子「ちょ、ちょっと待って。シャワーを浴びてくるから」
田中「そう言う意味じゃないから!」
2.学校(数日が流れていく)
田中と恋子さんが仲良くしている風景。
田中と恋子さんが仲良くしている風景。
田中と恋子さんが仲良くしている風景。
3.学校・裏庭
○ 休み時間。田中と生徒会長、恋子はいつもの様に三人集まっている。
生徒会長「あれっ?」
会長は恋子さんの顔を覗き込む。
生徒会長「何だか、最近肌が綺麗になってきたんじゃない?」
恋子「そうですか? 特別な事はしてないんだけどな」
生徒会長「女は恋をすると綺麗になるって言うから」
恋子「やだなー」
「楽しそうですな」
恰幅の良い男性が現れる。
田中&生徒会長&恋子「校長先生!」
*
校長「だいぶ学校生活にも慣れきた様ですね」
恋子「はい。毎日楽しいです」
校長「おや?」
恋子の顔を見る。
校長「何だか、綺麗になりましたね」
生徒会長「わかりますか? やっぱりそうですよね」
校長「ええ。顔のそばかすも消えてきたんじゃないですか?」
田中「本当だ」
校長「ホッ、ホッ、ホッ」
笑いながら校長が去っていく。
4.教室(放課後)
○ カバンを枕に恋子さんは床に横になって、気持ち良さそうに眠っている。教室には誰もいない。窓からの風が心地良さそうに恋子さんの顔にそよぐ。
恋子さんの体に影がかかる。
そのまま胸に手が置かれ、サワリサワリと弄る。
「ハッ!」
恋子さんはビックリして起きる。
田中と会長もちょうど教室に入り、現場を目撃する。
恋子さんの視線の先には恰幅の良い男性。
田中&生徒会長&恋子「校長先生!」
生徒会長「何してるんですか? 生徒に手を出すなんて」
田中「そんな趣味があったんですか?」
田中と会長は怪訝そうに校長を見る。
校長「いいえ、違うのです」
少しばかり慌てている校長をジッと見つめる恋子さん。
恋子「あきら君? あきら君でしょ!」
恋子「335人目に付き合った…‥」
田中&生徒会長「えっ!?」
生徒会長「校長も恋子さんの元彼だったんですか?」
校長「ホッ、ホッ、ホッ。バレてしまいましたね」
校長「そうです。私もかつて、ここにいる恋子さんのお世話になった生徒です」
校長「嬉しいですねー。私がつけた苗字『トキメキ』をいまだに名乗ってくれているのですから」
田中「校長がつけた名前だったんですか!」
*
校長「私が在籍していた昭和の時代は、まだ校舎も木造でした。当時、第三次『恋子さんブーム』で、多くの男子学生が恋子さんに会うために挑戦していたのです」
校長「我々の三年上の先輩が、恋子さんと付き合っていたと言われ似顔絵が出回りましてね。その美少女ぶりが噂になっていたのです」
田中「び、美少女?」
恋子さんを複雑な表情で見る。恋子さんと目が合う。
校長「ホッ、ホッ、ホッ」「その顔はデフォルト。つまり基本の外見なのですよ」
校長「付き合っていくと段々と美少女の姿に変わっていくのです」
田中&生徒会長「えっ!?」
恋子「そうでしたっけ?」
校長「恋子さんは、我々モテない男子の想念が生み出した妖精と言われてましてね。ですから最初は、我々と同じ姿かたちで現れるのです」
校長「そして大切に扱うと、恋子さんの中にある子宮が刺激され、性ホルモンが活発になり、女性化が進む」「逆に粗末に扱うと男性化が進む」
校長「恋子さんに髭が生えてきたと言っていましたね」
言いながら田中を見る。
校長「おそらく、君が邪険に扱っていたからでしょう」
田中は目を逸らす。
校長「そして、恋子さんを心の底から大切にして愛おしみ続けると――。やがて、体の中から出血。つまり初潮が起こり子供が産める様になる」
校長「こうして次世代を繋ぐ機能が備わり、恋子さんは正真正銘の人間になる。そこがゴールと言われています」
そう言うと、校長は深くため息をつく。
校長「これが、この学校に伝わる『恋子さん伝説』の全てです」
田中たちは呆然としている。
校長「しかし、恋子さんはここにいる。つまり言い伝えられているゴールが本当なのかは分からないのですよ」
生徒会長「みんな途中で恋子さんを粗末に扱ってしまったのですか?」
校長「ええ」「みんな途中で恋子さんに手を出してしまう。抱いてしまうのですよ」
校長「……それはペナルティなのです」
生徒会長「一般的に男女の営みは、愛の証明と捉えられると思うのですが……」
校長「普通はそうなのでしょう。しかし恋子さんは初潮前、つまり子供に手を出したと判定されるのです」
田中「なるほど」
校長「私も頑張りました」「しかし、恋子さんの胸がたわわに実り、美味しい果実の様な匂いと膨らみが目の前に現れた時――。私は我慢が出来ずに手を出してしまったのです」
校長は遠い目をして言う。
校長「あと少し、あと少しだったのです……」
校長「寸前での行為に神の怒りは凄まじかったのでしょう。翌日、恋子さんにチンコが生えました」
田中「えっ?」
生徒会長「本当に生えるのですか?」
校長「私は非常に済まない事をしたと反省しました。そして、いつしか恋子さんを救おう。その手助けをしようと教師の道に進んだのです」
校長「こうして、この学校に赴任して五年。再び恋子さんと会う事が出来ました」
言いながら、恋子さんを見る。
校長「懐かしかった」「そして何十年ぶりか、私に初めて女体の素晴らしさを教えてくれた、あの乳房に触りたい」
校長「そう思い、つい触れてしまったと言うわけです」
感慨深げに俯く校長。
校長「私は今回、恋子さんの新しいパートナーを見て嬉しさに震えました」
田中「えっ?」
校長「なぜなら、今回の相手は優しそうで、なおかつ奥手の様ではありませんか」
そう言い、田中を見る。
校長「これなら、恋子さんを最後の段階まで導くことが出来るだろうと思ったのです」
田中「(大声)ええー!」
校長「君の使命は重大です」
言いながら、田中の肩に手を置く。
田中「な、なんでそう言う展開になってんの?」
校長「大丈夫です。君なら出来る」
生徒会長「そうね。私も最終形態を見たいし」
恋子さんを見る会長。
田中「(大声)ちょっと待ってよー!」
*
田中、頭を抱える。
生徒会長「煮え切らないのねー」
田中「だって……」
校長「この姿を見れば、悩む気持ちも分かります」
一同、恋子さんを見る。
校長「しかし恋子さんはこの後、驚くほどの美少女になるのですよ」
田中「そう言われても……似顔絵とか写真はないのですか?」
校長「残念ながら……」
場に静寂が流れる。
校長「……恋人くん」
田中「はっ?」
校長「いえ、実はこの学校にはもう一つ伝説があるのです」
恋子「僕は知りません」
校長「どうしても彼氏が欲しい女子生徒が儀式を行うと、恋人と言う男子が現れて……」
生徒会長「恋子さんの逆バージョンですか?」
校長、頷く。
校長「そして、そのデフォルトの姿が恋子さんの最終形態と瓜二つの美少女と言われているのです」
田中「本当ですか?」
校長「ええ」
場に風が吹く。静寂が流れる。
田中「……見てみたいな」
恋子「そうですね」
田中と恋子さんは会長に目を向ける。
生徒会長「はっ!?」
会長は慌てて逃げる。追いかける田中と恋子さん。
階段の前に会長を追い詰める。
田中「会長!」
生徒会長「私は彼氏なんて欲しくないわ!」
ジリジリと詰め寄る二人。
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