第一話「伝説の美少女」
本作は、個人で漫画を制作するために作成した漫画原作(脚本)を、そのまま読み物として公開した作品です。脚本形式で進行しますが、お楽しみいただければ幸いです。
1.学校校舎・全景
(門に県立〇〇高等学校の文字)
2.学校・校舎裏
○ 主人公の少年、田中と女子生徒が向かい合って立っている。
女生徒「ごめんなさい」
田中の前で深々と頭を下げる。
女生徒「色々と考えた結果、あなたとはお付き合い出来ません」
3.学校・生徒指導室
○ 室内中央のテーブルに向かい合って座っている田中と生徒会長(女生徒)。彼女の前には少し厚めのノートが置いてある。田中は少し俯き加減。
生徒会長「そう、やはりダメだったの……」
田中「はい」
会長は目の前のノートをペラペラとめくりながら
生徒会長「もう、名簿の中にはパートナーを募集している女子はいないわね」
田中「そ、そんな……」
会長は名簿をパタンと閉じ、テーブルに肘をつき、前のめりになって田中を見る。
生徒会長「見たところ、あなたは不細工というわけでもないし、在学中に無理に作らなくても、卒業後にだって十分可能性はあると思うわ」
田中「ダメなんです」
田中、顔を上げる。
田中「僕は高校生カップルに憧れていて、絶対に彼女を作ろうと決めてるんですから」
生徒会長「――力になってあげたいとは思うけれど」
そう言いながら、再び名簿を捲る。
――暫くして
生徒会長「彼女になってくれるなら誰でもいいの?」
田中「えっ?」
生徒会長「贅沢を言わないのであれば……」
田中「い、いるんですか。そんな人? お、お願いします」
生徒会長「本当に良いのね?」
念を押す。
田中「そんなに酷い人なんですか?」
生徒会長「この学校にはね、どうしてもモテない可哀想な男子と付き合ってくれる『恋子さん』という女子がいるらしいの」
会長は立ち上がり、人差し指を立てながら歩き出す。
生徒会長「彼女は絶世の美少女であり、ある儀式を行うと出てくると言われていて……」
田中「ちょっと待って!」「何か学校の怪談っぽくなってるんですけど……」
4.学校・廊下
○ 生徒会長と田中は並んで歩いている。
生徒会長「もちろん単なる言い伝えで、生徒はおろか教師たちも見た事がないと言われているから、確証がある訳ではないの」
5.学校・廊下 下り階段前
○ 校舎奥にある、日の当たらない、少し日陰になっている階段の前に二人、立つ。
生徒会長「彼女が欲しいと心の中で強く念じながら、この階段から転げ落ちると――」
そう言いながら、会長は右手を差し出す。
生徒会長「恋子さんが傷ついた体に、手を差し伸べてくれる……らしい」
田中は、前のめりになりながら急勾配の階段を見る。
田中「死んじゃうでしょ!」
生徒会長「そうね。だから滅多に試すような男子はいなかったし、仮に落ちたとしても出て来なければ思いが足りなかったと片付けられる」
会長は両手を広げて呆れたポーズ。
生徒会長「まったく都合の良い伝説だわ」
生徒会長「でもね」
会長は階段前に立つ田中に、ゆっくりと手を伸ばし体を押す姿勢になる。田中は少し仰け反る。
生徒会長「試してみる価値はあると思うわよ」
妖しく微笑む。
田中「じょ、冗談でしょ」
生徒会長「あなたは本気で求めているみたいだから、もしかしたら上手くいくかもしれないと思ったのだけれど」
田中「さすがに命と引き換えには……」
生徒会長「仕方ないわね」
会長は、クルリと反転する。
田中は仰け反った姿勢のまま階段を見る。
その急勾配に恐怖心が湧き起こり、頭がクラッとする。
田中「おっとっと……やばいやばい」
生徒会長「――それじゃあ、新しい女の子が登録されるまで待ってちょうだ……」
振り向くと、階段を落ちそうな田中が見える。
慌てて手を伸ばし助けようとするも間に合わず――
田中はスローモーションになりながら階段を落ちていく。
田中(冗談じゃない)
田中(こんな所で……こんな所で)
(彼女が出来ないまま、人生を終わりたくない!)
強く、強く思いながら階段を転げ落ちた。
*
田中はピクリとも動かない。
階段の上で、会長は両手を口元に添えながら青ざめていた。
暫くすると、
「大丈夫ですか?」
透き通った優しい声と共に、田中の顔の前にハンカチが差し出された。
生徒会長「で、でた!!」
田中の顔に声の主の影がかかる。
意識を取り戻した田中が、差し出された先にいる人物を見た。
田中「えっっっ!?」
田中&生徒会長「お、男!!?」
その姿は詰襟の制服を着た、顔中そばかすだらけのイガグリ頭の男子生徒だった。
唖然とする二人。
「この階段は過去に数名の死者が出たと言われているから気をつけないと」
そう言いながら、彼は田中にハンカチを当てる。
生徒会長「あなた、恋子さん?」
階段を降りながら聞く。
彼は「はい」と答えた。
生徒会長「ふざけている訳じゃないわよね」
恋子「はい?」
生徒会長「いや、まさか男だとは思わなかったから」
恋子「えっ? 僕、女ですよ」
生徒会長「は?」
会長は、まじまじと恋子を見る。
生徒会長「いや、どう見ても男でしょ」
恋子「本当ですよ。ほら!」
そう言いながら、ズボンのファスナーを下ろして股間を見せる。
生徒会長「あっ、ない!」
会長が気配に気づき横を見ると、田中も鼻血を出しながら恋子の股間を見つめていた。
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