希望の光
平和だ。平和すぎる。
あれから一週間、誰かに会うことはなかった。窃盗犯だと、警察に追われることもなかった。
実に平和で、なんとも言えない日々を過ごした。
「そろそろ、もっと大きく動きたいとも思うんだけどね」
そんなことを一人小さく呟く。
まだ消えていない復讐心は、いつでもチラリと顔を出す。いつだって、私の心にはそんな感情が疼いている。
だから、まだ終わりにしようなんて思っていない。
気軽に人を傷つけるあいつらを。私を散々貶してきたあいつらを。
許そう、だなんて馬鹿なことは、思わない。
私に与えた痛みより、もっと辛いものを与えたい。
私が耐え続けてきたこの醜い環境よりも、ずっと酷い環境に堕としいれたい。
お前らが持ってるものは、私に与えられなかったものだ。
それなのに、それを持て余した上で不幸を語るな。
なんて、ここ最近は毎日考えている。
「……といっても、どうしようか」
迂闊に歩き回りたくない。優也とか雪先生に出会いたくない。だから、今すぐにでも動きたい、とか思って動き回る訳にもいかない。
あまりにもできることが少なすぎる。
盗んできた品の一つ、バナナを手に取り、口に入れる。
そして口を動かしながら何か方法がないか考え始める。
方法その一、誰にも気づかれないように復讐したい相手の元に凸る。
そこまで考えたが、却下。
私は復讐したい相手の全員の住所やら何やらを知ってるわけじゃない。だから、それぞれの家に最短ルートで凸るなんてことは不可能。
そもそも、誰かに気づかれずになんて無理。そんなことしたら周りに気づかれるのは目に見えてる。私はどこかの犯罪者とは違うから、バレないなんてこともないし。
できれば動きたくない。動かず復讐だなんてほぼ無謀に近いのは分かってるけど……。
なんて考えてたところで、手に硬いものがあたり、思わず手元を見る。
そしてそれを見ると同時に、私の頭の中のごちゃごちゃとしていた感情が綺麗さっぱり消えていく。
「……スマホ」
現代社会における、大切であり恐ろしいもの。それが、今私の手元に転がっている。
実は四日ほど前に充電が切れていて、今は使い物にならない。だから、電源はつかなくて使えない。
私は充電器を持っていないし、充電器があったとしても電力がないから今ではもうゴミに等しかった。
それでも、やっぱり捨てられなくて、ずっと待ち歩いていた。
でも、もしこれを使えたら──?
使いこなせるかどうかの話は別にして、これは私の大きな糧になる可能性が高い。
どうにかして、充電をしたい。
そこまで考えて、私の頭に浮かぶのは一つだけ。
私が行ける建物など、この一週間では一つだけなのだから、当たり前だ。
「あの家に、行こう」
人がいるかもしれないし、今度はそれほどうまく行くか分からない。
それでも私にとっての希望の光が、見えた気がした。




