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第12話少女の決定

数日後の放課後、佐藤部長は展示会準備の連絡事項を抱え、美術部のドアを押した。


眉は習慣のようにひそめられ、隅っこにいつも黙って座っているあの少女に、またしても遠回しな(しかし明らかに効果のない)促しをしようとしていた。


しかし、彼女の視線がおなじみの場所を掠めた時、突然止まった。


氷室咲幽ひむろ さゆの席が空いていた。イーゼルには何もなく、清潔すぎるほどに空っぽだった。絵の具箱と筆は隣の棚にきちんと片付けられ、まるで一度も使われなかったかのようだ。机の上には、ただ一枚、真っ白な封筒が端正に置かれているだけだった。


佐藤部長は近づき、封筒を開けた。中には咲幽の、優雅でありながらも一抹の断固とした筆跡で書かれた退部届が入っていた。


「佐藤部長様へ


いつもお世話になり、ご指導いただき誠にありがとうございます。この度、展示会という大切な時期に突然の退部申請を提出することとなり、大変申し訳ございません。長い間考え抜きましたが、今の私は美術部にいることで、むしろ迷いやプレッシャーを感じることが多く、絵を描くこと自体の喜びや創作の意義を本当に感じ取ることができていないことに気づきました。この間の努力や試行錯誤は、私がまだここに残る準備ができていないことを教えてくれました。この決断は非常に辛いものですが、熟慮の末の結論です。


ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。美術部の展示会のご成功を心よりお祈り申し上げます。


氷室咲幽 拝」


佐藤部長は便箋を手に持ち、長い間沈黙した。最後に、彼女はただため息をついた。怒りはなく、ほのかな失望と諦めが混じった感情だけだった。


彼女はあの隅に隠れていた少女の心の奥に張り詰めた氷の層がどれほど厚いかを理解していた。もしかすると、去ることが、彼女にとっては一種の解放なのかもしれない。


またしても、ある平凡な午後のことだった。応援部のドアが再び細く開かれた。今度は、陽の光がちょうど入り口に立つ小さな人影を優しく照らしていた。


部室の中では、夜滝優凛よだき ゆりん部長が掲示板に飛び散ったインクを必死に拭き取ろうと悪戦苦闘し、雨憶伶あめなみだ れいは隅で新しく買った花の種をいじっていた。



そして俺は、窓辺にもたれかかり、パックの牛乳をくわえて午後の眠気を追い払おうとしていた。


机の上には、ほとんどページをめくられていない本が開かれていた。



陽の光が、その本の上に置かれた、ハードカバーのスケッチブックの表紙を反射して輝かせていた——それは俺が忘れ物預かり所から引き取ってきたもので、誰かが中庭のベンチに置き忘れたものだ。


ドアが押し開けられ、あの真っ白なスケッチブックを抱えた見覚えのある姿が入り口に現れた。氷室咲幽だった。


彼女は入り口に立ち、少し息を切らし、長い旅を終えてようやく目的地に着いたような紅潮を顔に浮かべていた。


彼女の視線はゆっくりと部室を巡った——優凛部長が慌てふためく横顔、雨憶伶の指先で弄ばれる若緑の生命の芽、何かをいじっている夏橘を掠め、最後に、しっかりと俺の上に落ち着いた。


彼女の呼吸は次第に落ち着き、口元には信じられないほど明るく、これまでにない勇気と期待に満ちた微笑みが浮かんだ。


その笑みは、彼女の元々青白かった顔を明るく輝かせた。


「お邪魔します!」彼女の声は澄んでいて響き渡り、もはや蚊の鳴くような細い声ではなく、落ち着いた確信と新たな決意に満ちていた。


「美術部を辞めることにしました!今日から——」彼女は深く息を吸い込み、驚いて振り向いた優凛部長と、微かに顔を上げて彼女を見た俺の目を、熱い視線で見つめながら言った。


「——応援部に入れてもらえませんか?みんなと一緒に…本当に大切にすべきものを見つけ、作り出す方法を、もう一度学び直したいんです!」


彼女の声は静まり返った部室に落ち、宣言するような力を帯びていた。


優凛部長の目は一瞬で鈴のように見開かれ、次の瞬間、天井を突き破るような歓声が爆発した。


「うわあっ!生き生きとした新入部員第二号ーーー!!!北辰!伶!夏橘!見たか!我らが輝く事業が今、飛翔するーーー!!!」


雨憶伶はまず驚いて口を開けたが、すぐに温かく喜びに満ちた笑みを浮かべ、そっと拍手を始めた。夏橘も嬉しそうに飛び跳ねた。


咲幽の笑みはさらに輝きを増し、その喜びが心の底から滲み出ているようだった。


そして俺はただ視線を戻し、指先で無意識に机の上のあのスケッチブックの、ひんやりとしたハードカバーの表紙を撫でた。


かけがえのない瞬間?


俺は顔を上げ、もう一度入り口に立つ、重い鎖を解き放ち、陽の光の中で輝く笑顔を見せている少女を見つめた。


おそらく、あの完成しなかった「大切にしたい瞬間」は、いつか彼女が「大切にする」ことを強く求めず、ただ描くことそのものに没頭する過程の中で、応援部のこの、決して賑やかとは言えないが、意外にも自由で寛容な片隅で、静かに形を成すのだろう。


はあ…さあ、どうだろう?未来はもともと筆の先にある。彼女たちが喜ぶなら、それでいい。


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