ミリアルド・ラインハルト
"大賢者"ハイネ・ラインハルトの孫と言えば
"神童"ユリウス・アルスタインと誰もが答えるであろう。
しかし、ユリウスはアルスタインの一族であり、
ラインハルトの名を受け継ぐことはない。
確かに、ユリウスはハイネの孫である。
だが、ラインハルトの人間ではないのだ。
ハイネにはユリウス以外にも孫はいる。
ラインハルトの名を受け継ぐ者達だ。
しかしハイネはそんなラインハルト直系の孫達よりもユリウスの指導に力を注いでいた。
アルスタインの名を受け継ぐユリウスにだ。
ハイネは孫たちの指導の際によくユリウスを引き合いにだしていた。
ユリウスのように立派になれと。
アルスタイン家とラインハルト家といえば
大国アラムスの中でも王族と対等に近い権力を持った有力者だ。
お互いにライバル意識は当然ある。
さらに、現当主のカイルとハイネは共に魔王を倒した英雄である。となれば民衆の中ではどちらが強いのかという論争も当然起こる。
騎士のカイルと魔導師のハイネでは闘いの土俵が違うため不毛な論争とも言えるが、民衆とはこういった話題を好むものだ。
しかし、二人が決闘でもしなければこの論争の答えはでるはずもなかった。
しかし、二人には決闘する理由も必用もないのだ。
その結果、どちらが強いのかという話がどちらが優秀な血統なのかと論点が自然と刷り変わっていった。
アルスタインの血を受け継ぐユリウス
ラインハルトの血を受け継ぐミリアルド
どちらが優秀なのか?
世間ないしは各一族のホットな感心事項だ。
ユリウスはあまりそういったことに興味がなく、自分が更なる高みに登ることを生きがいにしている。
しかし、ミリアルドは違った。
ミリアルド・ラインハルトは一族の間でハイネに次ぐ天才と称されていた。
ミリアルドはそれが誇りであり自慢でもあった。
ただ、才能に溺れることなく努力もそれなりにしていた。
周囲もそれを知っていたし、認めていた。
ミリアルドは間違いなく天才だった。
入学試験が行われるまでは。
入学試験の後から事あるごとにハイネはからはユリウスの名前がでてくる。
別にミリアルドもユリウスに対して不満がある訳ではない。
自分が一番の天才だなどと傲るような性格でもない。
ミリアルドは冷静な子だった。
物事を主観的にも客観的にも観ることができ、論理的な行動をすることができる。
しかし、当時まだ8歳の子供であり、表面には出さないが子供な面も多くあった。
ハイネに誉められたい一心で魔法の鍛練にも力を入れるが、ハイネの口からでてくるのはユリウスだ。
ユリウス、ユリウス、ユリウス、ユリウス
なぜ、自分ではなくユリウスなのか?
なぜ、アルスタインの名を受け継ぐユリウスを
ラインハルトの名を受け継ぐ自分よりも力を入れて指導するのか?
子供が相手を憎むには十分だった。
ハイネからは自分ではなく、ユリウスの名がでてくる。
そのユリウスへの嫉妬が憎しみへと変わり、さらにはユリウス個人への憎しみがアルスタイン家への憎しみへと変わっていったのだ。
「ユリウス・アルスタイン!俺と決闘をしろ!アルスタインよりもラインハルトが優れていることを俺が証明してやる!」
ミリアルド・ラインハルトからユリウス・アルスタインへの決闘の申し込みがあった。
今、アルスタインとラインハルトの血統論争に決着が着こうとしている。




