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美人な叔母にイケメン改造された俺、なぜかモテない  作者: 春凪とおる


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■ 前編 ――旭、改造される


俺の名前は旭。

見た目は、最近つくられた。

中身は、まだ調整中らしい。


母は、朝日のように明るく、まっすぐに育ってほしいと願って、この名前をつけたらしい。

そのとき隣にいた母の妹――真理子さんも、「いい名前ね」と笑ったと聞いた。

けど、少なくとも大学に入るまでの俺は、その名前に見合うような人間じゃなかった。


髪は、寝ぐせみたいなうねりがどうしても残る。

整えようとしても、昼を過ぎれば勝手に戻る。

鏡の中の俺は、いつもどこか“ちゃんとしていない”。

服も同じだった。

無難を選んでいるつもりで、どこか噛み合っていない。

人と話すときも同じだ。

変に思われないように選んだ言葉は、だいたい印象に残らない。


――まあ、そんな感じの人間だ。


そんな俺の前に、久しぶりに現れたのが真理子さんだった。


「旭、ちょっといい?」


振り返ると、相変わらず綺麗だなと思った。

綺麗、というより、ただ無駄がない。

静かなところで、きちんと形を保っている人だった。


「顔、見せて」


言われるままに立つと、顎を軽く持ち上げられる。


「素材は悪くないわね」

「は?」

「骨格も悪くないし、パーツも整ってる。なのに――」


一歩引いて、全身を見られる。


「もったいない」

「……別に、困ってないけど」

「困ってるわよ。気づいてないだけで」


間髪入れずに返ってくる。


「見た目はね、才能というより、組み方なの」


少しだけ言葉を選ぶようにして、そう続けた。


「ちゃんと合わせれば、印象は変わる」

「……別に、そこまで求めてないし」


「求めてなくても、影響は受けるの」

「大丈夫。少しずつ、馴染んでくるから」


その言い方はやわらかいのに、なぜか否定できなかった。


そこからの流れは、ほとんど覚えていない。

気づけば美容院にいて、髪を切られていた。


「このクセ、活かせますよ」

と言われ、真理子さんは軽く頷いた。


服も一式変わった。

派手じゃないのに、なぜか目に止まる。

歩き方まで直された。


全部、正しい気がした。

ばらばらだったものが、きれいに噛み合っていく感覚は、嫌いじゃなかった。


最後に、鏡の前に立たされた。


「どう?」


顔を上げる。

そこにいたのは――


「……誰だよ、これ」


見慣れているはずの顔なのに、印象がまるで違う。

髪のうねりは残っているのに、自然に見える。

服も、姿勢も、全部が噛み合っている。


それなのに、ほんの少しだけ――

自分じゃないものを、うまく着こなしているみたいだった。


「あなたよ、旭」

「やっと、名前に追いついたわね」


帰り道、ガラスに映る自分を何度も見た。

悪くない、と思う。

たぶん、良いほうなんだと思う。


“これなら”――


そこまで考えて、少しだけ引っかかる。

何を基準にしているのか、自分でもよく分からなかった。


「次は中身ね」

「会話とか、表情とか。少しずつ、合わせていけばいい」


夕方、少しだけ風が強くなる。

整えたはずの髪が、わずかに元に戻ろうとする。


「……完全じゃないんだな」

「完璧じゃなくていいの」

「無理に揃えなくても、大丈夫」


その言葉の意味を、俺はまだ理解していなかった。


ただ一つ、確かなのは。


この日から、俺はたぶん――

“変わった側の人間”になった、ということだ。


それがどんな結果を連れてくるのかは、まだ知らないまま。


――ただ、うまくいく気は、していた。


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