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第1話 出会いと入学式

 小学校6年生の2学期、洲島(すしま)小学校に転校した。

 だけど、あたし学校に行くのが怖くてほとんど引きこもってたせいで

クラスメイトの名前も顔もほとんど覚えられないまま、卒業してしまった。


 そして今日は都立洲島中学校の入学式…だというのにあたしはとても憂鬱だった。


天人(あまびと)さん、おはよう」


 いきなり誰かに声をかけられた。


「おはよう」


 挨拶されても名前でてこないんだよなー。

 とりあえず返しとくけど。

 えーと…誰だっけ?


「そっか天人さん、ほとんど学校来なかったからわかんないのか〜」

「はい、ごめんなさい」


 自然と敬語になってた


「同級生なんだからそんなかしこまんなくていいのに」


 そう言われてもどうしていいかわからない。

 知らない相手にいきなり「そうだよねごめんね〜」とか言えないあたしです。


「じゃあ改めて自己紹介するね?私、坂本 美沙希!これからよろしくね」

「よ…よろしく」


 1人覚えた。

 記憶力は良い方だからきっと大丈夫…かな?


「じゃ、後でね〜」


 坂本さんは手を振りながら駆けていった。


「こんな調子で大丈夫かな…」


 そんなことを思いながら昇降口へ向かって歩き出した。


 上履きに履き替えてクラスルームへ向かう途中、男子とぶつかってしまった。


「あ!ごめんなさい」

「こっちこそごめん。ボーっとしてた」


 うわーかっこいい人。思わず見上げるくらい背が高い。170cmくらい?かもしれない。上級生なのかな。


「君も1年生?」

(君も!?…ってことは同い年なの?)


「は…うん」

 ダメダメ、悪い癖直さないと。


「もしかして2組?」

 クラス一緒なの?これって運命…なわけないか。


 自分の思考にセルフツッコミしてしまった


「うん、2組」

「そうなんだ。じゃあ一緒に行く?」


 それあたしが言いたかったのに…先に言われちゃった。


「…行く」


 少し戸惑いながらそう答えた。




 クラスにつくと、どうやらあたしたちがビリだったらしい。

 先生来てないからいいか。

 さて席順は?

 右端の一番前だけど隣は誰だろうか。

 篠田 涼かどんな人だろう。


 黒板に書かれた席に行くと、さっきの男子が付いてきた。


「あれ?隣同士か」


 あなただったの!?


「隣同士だね」


 あぁ、神よあなたは何てことをしてくれるんだ!

 待って…顔赤くない?大丈夫?


「これからよろしくな」

「…よろしく」


 ……どうしよう。

 思考をめぐらしてたら先生?が来た。


 明らかに教壇に肩が届かない背丈で…あ、コケた。

 何事もなかったように立ち上がったけど、耳まで真っ赤になってる。

 ファイルらしき物を教壇に乗せようとしてる…が失敗。

 中身が全部床に落ちてしまった。

 拾おうとしたら、教壇の天板に頭をぶつけた。

 痛そうだな、涙目になってるし。

 大丈夫かこの人…

 というかホントに教師?


「はいみなさん、体育館に移動してください」


 やっぱ教師なんだ、意外すぎる。

 先生?の指示で全員体育館へ移動…ってまだ心臓バクバクしてるよー。

 落ち着けあたし!

 まずは深呼吸だ。

 すぅー、はぁー。

 よし…落ち着かない!




*****



 入学式が始まった。

 やっぱり校長の話は長いな。

 んーと、篠田君はどこだろう。

 いた、ねむそうな顔してるなー。


 長い…じゃなくてありがたい校長の話も終わり、ようやく式は終了した。


 ふわぁ〜

 あくびが止まらない。


「眠いよな?」


 やば、見られてた!?


「うん、すっごく」

「俺、寝そうになってたよ」


 ごめんなさい見てました


「へ、へーそうなんだ」

「もしかして見てた?」

「い、いや?」


 あたしはごまかした。


「ふーん、そっかー」


 今残念そうな顔した?


 気づいたら教室に着いてた。


「その…変な質問していいか?」


 恐る恐る聞いてくる。


「な、何?」

「お前って彼氏いんのか?」


 そういう話初日にする?普通。

 そもそもあたしたちまだ中1だよ?まだ早いでしょ。


「い、いないよ」

「そうか」


 今度は嬉しそうな顔

 もしかしてあたしに気があるのかな?

 もしそうだったら、嬉しいな…。


 なんて1人で浮かれてたら、さっきの先生が来た。

 毎度毎度タイミングすごくない?


 あ、またコケた。

 泣きそうな顔してるなー

 なんかかわいいな。

 やっぱり顔真っ赤。



「…はい、ホームルーム始めます。まずは自己紹介してください。

 名前と好きな食べ物言ってってください。

 順番決めるから、天人さんと結城さんでじゃんけんしてもらえるかな?」

 

 なんだそれめんどいな…なんと勝ってしまった。

「はい、じゃあ天人さんから始めます。その前に私から自己紹介します。

私は、湖姫(らくす)・C・ルセーブルです。好きな食べ物はポテトパンケーキです。みなさん一年間よろしくおねがいしますね。では自己紹介始めてください」

 ハーフなんだ。…見えない。


「先生って何人ですかー?」

 でたー男子から出る、デリカシーの欠片も無い質問。


「日本人ですよ、一応」

「ハーフなんですかー?」

「ええ、フランスとのハーフです」

 その一言にクラス中(主に男子)が沸いた。


「はいはい、静かにしてください…って聞いてます?」

 多分聞いてない…というか聞こえてない。


「先生の言うこと聞いてください!」

 その意外すぎる大声にクラスが静まり返った。


「こほん、では改めて皆さんの自己紹介をお願いします。天人さんから…ですね」

「はい」

 少し緊張するな…


「天人 六華です。好きな食べ物はバターチキンカレーです。一年間よろしくお願いします」


 無難に終わらせておく。


「坂本 美沙希です。好きな食べ物はラーメンです。よろしくお願いします」


 坂本さん同じクラスだったんだ。

 さて次は涼くんの番。


「篠田 涼です。好きな食べ物は鮭のホイル焼きです。よろしくお願いします」


 淡々と進んでく順番。

 退屈だなーって思ってたら。


「姫宮 優衣です。好きな食べ物はケーゼシュペッツレです。一年間よろしくお願いします」


 その声を聴いた瞬間、思わず声の主の方をみてしまった。

 そこにいたのは、とても美しい顔と言葉では言い表せないほどの美しい声をお持ちの女の子でした。

 あたしのフェチの話は置いといて、自己紹介が終了。


「はい、ありがとうございました。みんなから質問あるかしら?」

 こういう時絶対調子に乗る男子いるよねー。


「はい!」

「はい、えーっと進藤くんなんでしょうか?」

「先生はいくつですか!」

 はいきた、デリカシーに欠ける質問の典型例その2。


「25です」

 さらっと答えたちゃったよ。


「ほかに質問はないかしら?…なければ今日はこれで終わります。明日からは普通に授業がありますから、しっかり準備してきてくださいね。それでは皆さんまた明日。さようなら」

「さようなら」

 はぁ…やっと終わった。

 さて帰りますか。


 あたしは教室を出て昇降口へと向かった。



 

*****




 昇降口を出て正門へ向かってると悲鳴が聞こえた。


「やめてください」


 この声は、姫宮さん?

 声のした方に向かってみると


「あんた中学上がったからって調子乗んなよ?」

「今まで通りあたしらの言うこと聞かなきゃだめだかんね?」


 イジメなのか?イジメなら見逃せないな。


「ちょっとあんたたち何してんの?」

「何?あんた誰?」

「こいつなんなの?正義の味方ってやつですか?うけるー」


 むかつくな、こいつらどうしてやろうかな…


「オレの連れに何してんだって聞いてんだよ」


 思わず口調が悪くなってしまう。


「ちょっと優衣こんなやつとつるんでんの?」

「…うん」


 姫宮さんは戸惑いながら頷いた。

 

 あたしは姫宮さんの前に割って入った。

 すると、不良Aが何かを思い出したらしく突然顔を青ざめさせた。


「思い出したこいつ関わったらヤバいって…」

「こんなのが?」


 こんなのとは失礼なやつだなー


「痛い目にあいたくないならとっとと失せな」

「先輩、こいつやっちゃってください」


 不良Bが裏に控えてたらしい助っ人を呼んだ。


「おう」


 なんか体育会系のガタイのいい人出てきたな。

 こいつらとこの人の関係どうなってんだ?

 ていうかどこから出てきたんだ?


「はー、卑怯だなてめえら。先輩もいいんですか?こんな連中の用心棒なんてやってて」

「お前が気にすることじゃないだろ」


 指をポキポキ鳴らしながら安っぽく脅してるつもり?


「そうですね。じゃ…」


 とそこに


「お前らなにやってる!」


 生徒指導っぽい強面の先生が来た。

 今日なんなんだろう盛り上がってるとこに先生来るな。


「何があったんだ」


 まずあたしのとこに来た。まあ当たり前だよね、そりゃあこの中だとあたしか姫宮さんに聞くよね?まぁ好都合だな。

 まぁでも見た目を武器にするつもりは無いけどね。


「この人たちがあっちの子に絡んでたから、注意してあげたんです。そしたら逆上して先輩使って暴力を振るおうとしてきたんです」


 嘘は言ってないよ?ちょっと言い方を変えただけ。これで向こうも何も言えないはず。


「そうなのか?」

「違うんです。私たちこの子と仲良くしたくて話しかけてただけなんですよー。

そしたらこいつ「イジメはやめろ」って言ってきたんです」


 チッ…こいつら典型的なぶりっ子だな。


「嘘をつくな!悪いけど話を聞く限りお前らの言ってることは信用ならない。似たようなこと前に何度もしてるだろ。お前ら3人職員室に来なさい」

「…わかりました」


 渋々了解した感じ。

 3人とも先生に連行されていった。


「大丈夫?」

「…はい、ありがとうございました」


 姫宮さんはお辞儀をすると走り去ってしまった。


「ちょっ…行っちゃった」


 意外に足早いんだね。まあいいか、明日クラスで会えるし。


「それにしても近くで見たら増々かわいい子だなぁ」


 あたしは女の子好きなわけじゃないよ?かわいいものが好きなだけです。


「よ!天人」


 わ!びっくりした。涼くんか。


「どうした?」

「いや、なんでもないよ?ちょっとびっくりしただけ」

「そうか。ならいいけど」

「まだ帰ってなかったんだ」

「うん。職員室に呼ばれてな」

「初日に何したのよ?」


 あれ?この人不良だったのかな?


「なんもしてねえよ?」

「そっか…」


 なんだろう?聞きたいけど聞きずらいなー、まだ知り合ったばっかりだし。


「お前家どの辺?」

「駅の近く」

「方面は一緒か…帰ろっか一緒に」


 マジで?あたしたち今日知り合ったばっかりだよ?

 どうしよ心の準備が…。何話したらいいの?


「いいの?」

「どうせ方面は一緒だろ?いいよ」

「じゃあ…わかった…」


 落ち着けよあたし。


「よし」


 2人で帰ることになった。


 あたしの心臓は高鳴る。




*****



 帰り道


「確かお前って6年の時転校してきたんだっけ?」

「…そう」

「でもほとんどこなかったよな?」

「…うん」


 同じクラスだったのかー

 今更あのころを後悔する。


「なにがあったんだ?」

「ごめんそこらへん話せない」

「そっか、ごめん」


 気使わせちゃったかな。


「謝らないでよー」

「おう」


 この人にだけは話してもいいのかな…

 いや、話したらドン引きされる、絶対。

 いつか、そういつか信頼できる関係になって、こういう一歩踏み込んだ話ができるようになったら、話そう。

 今はまだ誰も信じたくない。


「どうした?ボーっとしてるけど」


 いけないあたしったら、せっかく涼くんと一緒に帰ってるというのに考え込んじゃって。


「大丈夫だよ。ごめんね」

「いや、いいんだけど」

「あ!家ここだから」

「おうそうか。じゃあまた明日な」

「また明日」


 手を振って別れる。

 あぁ、なんも話せなかったー!



「ただいま」


 玄関を開けるとママがいた。


「おかえり。学校どうだった?」

「うん、まあまあ」

「そう、ならよかった」

「部屋にいるから」

「わかったよ。ご飯できたら呼ぶから」

「うん」


 部屋に入るやいなや制服を脱ぎ捨ててベッドに飛び込んだ。


「はぁー今日どうすればよかったんだろー」


 せっかく誘ってくれたんだよ?もっと話すことあったんじゃない?

 考えれば考えるほど後悔しか出てこない。

 そうだ明日こそは話せるように頑張ろう、そうだそうしよ。

 決意を固めるけど、なんせ人を好きになったことがないからできる自信が無い。

 だってあたしまだ13歳だよ?いくら天使は15で成人だからって恋なんてまだ早いよー。


「うわー」


 ベッドの上で足をバタバタさせる。


「六華ーちょっと静かにできる?」


 怒られた


「ご飯できるから降りてきなさい」

「はーい」


 ご飯を食べて、お風呂に入る。


「はぁー。お風呂は良いねー落ち着く」


 明日何話そうかなーとか挨拶はどうしようかなーとか考え込んでたら

少しのぼせた。

 髪を乾かして部屋に戻り、再度ベッドに飛び込む。


「うだうだ考えてもしょうがないから寝よ」



 明日は明日の風が吹くさ。

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