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第9話 優衣の過去と闇 後編

前回に引き続き優衣の過去編です。

放課後、私は子供たちのお墓参りに行った。


「みんな、今日は報告があるの。ママ、前から好きな人がいるんだけど

その人に今日、好きって伝えたらいいよって言われたの。それでね…」


「おい何やってんだ?人殺しの優衣さんよ」

 突然本家の次男坊が来た。


「それはこっちのセリフよ!」 

「うっせ、とっとと失せろ」

 やっぱ、こいつむかつくな。


「おい、龍太!やめろ」

「だってよ、兄貴こいつが…」

 兄さんも来てたのか。


「本家だろうと分家だろうと関係ない、優衣は俺たちの兄妹だ。

お爺様に何吹き込まれたか知らんが優衣をイジメるやつは俺が許さない!」


「兄貴はなんでこんな天使を庇うんだよ。それにこいつ養子だろ?そんなやつ庇う必要ねえだろ?」

 天使?養子?私が?なわけ…


「だから関係ないと言ってるだろ」

「そうよ龍太」

「ちょ…もか姉まで」

「優衣、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

 もか姉にぎゅっと抱きしめられる、あったかい。


「つーか、話戻せよ!なんでこいつがウチの墓にいるんだっつってんだよ!」

「龍太いい加減にしろ!」

「しゃーねぇ、口でわかんねえなら拳しかねえよな?」


 なに、この脳筋キャラ。昔の龍太はどこ行った。


「おら死ねや化け物がぁぁぁぁぁぁ」

「ねえ智輝、止めなくていいの?」

「止める必要無いだろ?龍太にもいい薬になるだろうから」


 龍太が殴りかかってくる、私はそれを受け流す。


「おい、龍太。誰にケンカ売ったか…わかってるよな?」

「そんなひょろい体で、お前に何ができるんだよ!」

 ダメだまるでわかってないな。


「おらぁぁぁぁぁぁぁ!」

「龍太、死ぬ覚悟はできてんだろうな?」

 もちろん脅し。


 今度は受け流さず、殴りかかってくる勢いを利用する。

 足をかけて、よろけさす。

 そこにすかさずボディーブロー。


「グハッ…!」

 崩れ落ちる龍太のなんと無様な姿。


 とそこに。

「何故ウチの人間でないものがおるんだ?」

 お爺様が来た。


 お爺様は現姫宮家当主で、とても厳しいお方である。

 その口元に立派な髭を蓄えているので、とても威厳を感じる。


「貴様がこの墓地に足を踏み入れることは断じて許さん!」

「ですが、お爺様ここには私の家族がいます」

「そんなことは関係ない!何故なら貴様は姫宮の人間ではないからだ!」

 まあなんと理不尽な物言いだこと。


「お爺様…」

「お前は口出しするな!」

「…はい」

 兄さんが間に入るが無駄に終わった。


 お爺様は私を追い払うように杖で殴ってきた。

「ここから出てけ!この疫病神が!」

「お爺様やめてください…」

 

 私はその場から必死に逃げた。

 


*****


 駅に着いたあたりでメールが来た。


『優衣、今駅?』

 もか姉だった。

『駅だよ』

 すぐ返信が来た。

『ちょっと待ってて、話があるから』

 どうしようかな…

『ごめん今日は帰りたい』

 また返信だ。

 それにしても早いな。


『智輝が今日じゃなきゃダメだって。あたしも明日仕事あるし』


 もか姉ってばずるいよ。

 まあしょうがないか。


『わかった…駅前のカフェにいるから』

『わかった』


 20分くらいして2人が来た。


「優衣、ホントにごめん」

「…別にもか姉が謝ることじゃないよ。あたしが悪いんだし」

「優衣は悪くない」

「そう、優衣は悪くないんだよ。ただ…」

 ただ、なんだよ。


 私は段々イライラしてきた。


 次の瞬間、無意識にテーブルを殴ってた。

「みんなしてなんなの!よってたかって邪魔だの化け物だのって。あげく本家のために

子どもを作る機械呼ばわり!私は物じゃない、生きてるんだよ!」


 ここが店内だということも忘れ叫んでしまった。


「優衣落ち着け」

「兄さん!これが落ち着いてられる状況だと思ってるの?もう我慢の限界!」

「優衣…」

「私帰る!」

 乱暴にバッグを掴んで店を出ようとした。


「優衣、待って!」

 もか姉に手を掴まれる。


「あたしと智輝は優衣の味方だから何かあったら相談してね」

「…信用したくない」

「優衣、頼む俺ら2人だけは信じ…」

 兄さんに水をかけた。


「しつこい、私がどうしようとそっちには関係ないでしょ」

「いや、関係ある。俺らはお前の家族だ!」

「は?私は家族だと思ってないから。んじゃ」

「優衣!なんかあったら連絡してきなさいよ?」

「もか姉もしつこい!」

「…ごめん」

「じゃあ、もう連絡してこないで」

 ついそんなことを言ってしまった。


 私は罪悪感を感じながらカフェを出た。


 さすがに言い過ぎたかな…

 私はそんなことを思いながら帰路に着いた。



*****



 帰宅


 誰もいない一軒家はすごく広くて、今の私には辛すぎる。


 寝よう、寝て忘れよう。

 明日は学校休んで、病院に行こう。


 とりあえずベッドに入ってみたけど寝れるかな。


 気づいたら寝てた。


 眠りに落ちたのは良いものの、寝ては、悪夢…寝ては、悪夢…を繰り返してしまい、気づいたら

朝になってた。



*****



 次の日 

 

 周りに言われたせいで、自分が本当に天使なのかどうか確かめたくなって病院に行った。

 結果がくるまでに3週間かかるらしい。



 検査が終わって病院を出た。


 病院近くの公園を散歩してたら、雑誌かテレビかわからないけど撮影をしてた。

 誰だろうって思って近づいたら、西園寺 優華だった。


 西園寺 優華は現役高校生シンガーソングライターでまだそこまでの知名度は無いのだが

徐々に人気が出てきている。

 

 その正体はもか姉こと、姫宮 智華である。


「そういえば、今日仕事って言ってたな」


 なんて考えてたら。

「優衣」

 会いたくない人に会ってしまった…


「兄さん…昨日は…その…ごめんなさい」

「いや、いいんだよ。悪いのはこっちだし」

「そう…それにしても、もか姉キレイだね」

 話を逸らしてみた。


「だな」

「兄さん…いつかホントの事教えてもらえる?」

「そうだな…」

 兄さんは答えづらそうな顔をする。


「やっぱり言えないの?」

「悪い、今はなんとも…」

「そう、わかった」

「ホントに悪い」

 兄さんは申し訳なさそうな顔でうつむく。


「いいの…じゃあ私帰るから」

「優衣!待って」

 もか姉が声を掛けてきた。


「もか姉…昨日はごめん、ついカッとなって言い過ぎた」

「いいのよ、気にしないで」

「うん…じゃあ私帰るから」

「そう、じゃあまた」

「またね」


 2人に別れを告げて帰路に就いた。



*****



 家に帰ってきた。


 だけど、出迎えてくれる家族は居ない…

「はぁ、何か疲れた…」

 まだかなり早いけどもう寝よう。


 ベッドに入る…でも多分眠れない。

 また悪夢を見そうで怖い…。


 時々思う、私は生きてていいのかと。


 自殺を考えた事もある、リスカもした。

 

 でも、何度自傷行為を重ねても傷の治りも早く、致死量の血を流しても死ねない…

もしかして私は人間じゃないのではないか、だったらホントに消えたい…消えてなくなりたい。


 そんな思考を繰り返しながら、私は不運にも生き永らえてしまっている。


 六華には受け入れてもらえたけど、いつ関係が切れてもおかしくない。


 やっぱり私は誰にも愛されない運命なのかな…別にいいけど。


 ……睡眠薬残ってたかな。


 

 私はキッチンに行って、薬を探す。


 お父さんのたばこが残ってたから1本吸った。


 薬は…良かったまだあった。

 これがないとちゃんと眠れない。


 多量の薬を飲んで再びベッドへ、明日学校行けるかな、それとも…

 

 薬が効き始め、徐々に眠くなってきた。

 次に起きたらベッドの中か天国か…どっちでもいいや。


*****


 次の日、目が覚めたらベッドの中だった。

「はぁ、やっぱ死ねないか…」

 

 私はまた死ねなかった。

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