プロローグ
私、天人 六華の人生は小4の時に大きく変わってしまった。
そのクラスは8割の生徒が反天使派だった。
私は自分が天使だと知らずにここまで育ってきたから、最初イジメられた時は訳が分からなかった。
最初は「天使はこのクラスから消えろ」と言われ、石をぶつけられた。
次は素手での暴力、次は木製バット、次は花瓶とどんどんエスカレートしていった。
そして小4の2学期半ばごろ最初の大きな事件が起きた。
「おい天人!」
クラスの男子に呼び止められた。
「…何?急いでるんだけど」
そこで広辞苑で殴られた。
「痛ったい!…何すんのよ!」
頭から血が出た。
「うわ!やっぱこいつ死なねえぞ。バケモンだー、逃げろー」
わーっと男子が逃げてく。
「ったく、なんなの?」
「天人さん?」
今度は担任に呼び止められた。
「なんですか?あたしこれから保健室に…」
「行く必要は無いでしょ。だってあなた天使なのだから」
そう言いながら肩を強く掴まれた。
「…先生、痛いです」
「嘘は良くないわねー。痛みなんて感じないでしょ?」
「…ホントに痛いんです!」
肩が外れるかと思った。
そこでチャイムが鳴った。
「あら…もう時間ね、早く席に着きなさい」
「あたし保健室に…」
見てよ先生、頭から血が出てるでしょ?
「許さないわよ?そんな言い訳で授業を休めると思っているのかしら」
「…はい、すみません」
あたしは渋々了承した。
ガン!
頭を何かで殴られた。
また頭から血が出た、今度は結構な量。
「ちょっと!なに居眠りしてるの、起きなさい!」
顔をあげるとそこに先生が立っていた。
その手には…何とバールを持っていた。
もしかしてそれであたしを?
あ、やばい…意識が…。
すうっと意識が遠のく。
そこに追い打ちをかけるように一発、二発…。
「わたくしの授業で居眠りするなど言語道断!そのねじ曲がった根性叩き直してあげます!」
先生これ殺人ですよ…
「高島先生!何やってるんですか」
良かった…助かる…のかな…
「この人が居眠りしていたから注意をしていました」
「注意って…明らかに、天人さん死にそうじゃないですか」
そうだよ先生、殺人だよこれ。
「この子は死なないわよ、だって不死身なんですもん」
「ダメだこの人、話通じない。天人さん、しっかりしてください」
しっかり?昔からしてますよ。
「片岡先生、わたくしの授業の邪魔しないでくださいます?」
片岡先生は無視する。
「一旦保健室に…うっ!」
見ると片岡先生は頭から血を流していた。
「せ…ん…せ…い、ケガ…」
「…先生は大丈夫だから喋るな!」
「片岡先生、天使に与することは国家反逆罪に当たりますよ」
なんだそれ、そんなの聞いたことないよ。
「…しっかり掴まってくださいね」
片岡先生はあたしを抱えて教室を出た。
そこに凄まじい音を立ててバールが飛んできた。
あたしは咄嗟に先生の腕から逃れて、先生を庇った。
「があっ!」
「天人さん!」
片岡先生がこっちに向かってくる。
「…せ…ん…せい、早く…ぐはっ…逃げて…」
血反吐を吐きながらそう言った。
「でも天人さんが…」
「大丈夫だから!」
精一杯叫ぶ。
そこで意識が完全に飛んだ。
*****
その事件がきっかけで高島先生は逮捕され、3学期が始まってすぐ片岡先生は
この世を去った。
そしてあたしは5年生になった。
相変わらずクラスメイトからいじめを受けていた。
何も変わらないまま6年生になった。
そして6年生になってすぐ、もう1つ事件が起きた。
この日、あたしをイジメてきた男子を返り討ちをしただけでなく殺してしまった。
この事件の後、あたしは洲島小学校に転校した。