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第2話 5 依頼、魔人

 疲れていたのに思ったより眠れなかった。

 真知が隣で寝てるからではなく久々にきたブラックハントの依頼が原因だろう。

 真知はまだ起こす必要はないのでそっとベッドから降りる。

 応接間兼リビングで個人的な準備を始める。

 怪異相手には役に立たないことも多い拳銃だが人間相手にするには効率のいい武器だ。 普段から防弾服を意識してAP弾を入れてあるが再確認する。

 俺のコルト・パイソンはリボルバーなので6発しか入らない。

 1部屋制圧するには少々足りないぐらいだが射撃の腕が残念なので良しとしてる。

 当たればでかい、というやつだ。

 普段の依頼から考えても多くて5人、少なければ1人も有りうる。

 今回は儀式絡みだから術師にボディーガードが2~3人というところだろう。

 以前聞いたルルイエとかいうやつらだろうか。

 ルルイエとはクトゥルー神話神話に出てくる土地の名前だったはず。

 邪教である可能性を考えるなら一般人を使った儀式も有りうるのかもしれない。

 携行する銃弾も含めて全てチェックが終わった。

 刀は森であんなに激しく使ったというのにお手入れいらずだ。

 今回の件が終わったら手入れぐらいしようと思うが。

 真知のマチェットはどうだろう、と手を伸ばしたとき、

「師匠、おはよ」

 半分寝ている真知が寝室から出てきた。

「マチェット握ってなにしてるの?」

 意識がはっきりしてきたようだ。

「今日の依頼のために整備をちょっとな」

「マチェット散々使ってるからちょっと刃欠けてるかも」

 見ると確かに刃が欠けている部分があった。

 今から研ぎにだす時間もないし応急的に研いでおくしかない。

 台所には砥石が置いてあるのでマチェットを持って移動する。

「どうするの?」

「本業のようにはいかないけど軽く研ぐ。このままじゃ不安でしょ」

 命に関わるかもしれないがおどけて言う。

 実際習ったわけでもなくインターネットで研ぎ方を見た程度の俺だが。

「1時間後に出るぞ、着替えておけ」

「スーツ、クリーニング出したかったのになぁ」

 気持ちはわかるが今日はスーツ着てくれ。


 1時間かけて準備をし車に乗り込む。帰りは血塗れかもしれないのでタクシーは使えない。

 中央区第9kkビルは人気のないところに建っている2階建てのビルだ。

 少し離れたところに車を停め装備を確認する。

 入口には誰もおらず侵入は容易に見える。

 このビルは1階を通過しないと2階に行けない構造になっているので護衛がいるとするなら1階だ。

「俺が先に入る。最初は拳銃を使え。撃ちきったらマチェットに切り替えろ」

 細かく指示を出す。

 対人の経験がない真知を連れて行くのは不安だがこれも経験だ。

「わかった。封印使って中の様子探ろうか?」

 その手があったか!

 しまったこの弟子賢い。

「取り込まれると違和感を覚えるから1階だけ綺麗に取り込めるか?」

「任せて」

 言うが早く拒絶封印を発動させる。

「入って右奥に2人、左手に1人。武装とかはわからないよ」

「十分すぎる。そのまま封印を継続させといてくれ。突入したら右の2人は俺が撃つ、左の1人はお前が撃て」

「……わかった」

 まだ抵抗があるのだろう。人として正しいとも思うが。

「んじゃ入るぞ」

 ドアを開け放ち拳銃を構える。

「なんじゃこらぁ!」

 パンパパン、と乾いた銃撃音とともに動かなくなる右奥の2人。

 真知も射撃をしていたが絶命はさせていなかった。

「な、なんだお前ら……」

「協会の狗だよ」

 短く告げる。

 抵抗の虚しさを知っただろう。

 上からは不気味な声が聞こえる。

「儀式は上か?何の儀式をしている?」

「う、上だ。何の儀式って聞かれても俺にはわからねぇ。」

 嘘は言っていなさそうだ。

「上にはあと何人いる?」

 銃を突きつけて問う。人に物事を尋ねるにはこれが一番だ。

「さ、3人」

 訊きたいこともなくなったので思い切り殴って気絶させる。

「上に3人って術師って人とさらに護衛?」

 真知が訊いてくる。

「多分その組み合わせ、護衛は超越者の可能性あるな。武器をマチェットに切り替えろ」 言うなり俺も拳銃を仕舞って刀を抜く。

「2階に入ったらまた封印するね」

 方針は決まった。上に繋がる階段を見つけ昇っていく。

 上にあがると異様な光景が俺の目に飛び込んできた。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 部屋一面に描かれた六芒星の上で叫び続ける男がいた。それを見守る男が2人。

「そこまでだ、術師がどっちか知らんがこの儀式を止めろ」

 何食わぬ顔で2人組のうち優男の方が俺の言葉に答える。

「僕が術師だけどもうこれ止まらないよ。君は見るの初めてかい魔人錬成」

 これが例の……狂った儀式か。

「まぁ残念ながら失敗なんだけど始末屋もきたことだし良しとしましょうか黒岩さん」

 優男が黒岩と呼ばれた冴えない風貌の男に話しかける。

「ちっ!やっぱこれじゃダメか。お前の案に乗ってやるよ藤堂」

 藤堂と呼ばれた優男がこちらに振り向き語りかける。

「じゃあコレの始末は任せたよ。ん、刀持ってるキミ。いい目をしているね」

 魚の腐ったような目ですが。

「僕たちの仲間にならないか?キミ力が手に入るなら喜んで人間やめちゃうタイプの人間だろう?そうだなぁ動機は復讐かな」

 愉快そうに笑いながら俺に語りかける藤堂。

「コレと同じ魔人になれってか?そんなに簡単に人間やめるつもりもお前らの仲間になるつもりもない」

 真知が服の裾を引っ張ってくる。

「復讐が動機ならこちら側の方が情報多いと思うんだけどなぁ。それと、魔人?これは魔人なんて大層なものじゃない。ただの失敗作さ」

 言いながら壁に向かっていく藤堂と黒岩。超越者なら2階は高いものじゃない。

「僕らは出ていくからその魔人もどきの相手でもしてなよ」

 言った瞬間、真知が封印を発動させた。

「出口はない、全員ここで片付ける」

「結界か、随分特殊な異能だけど……」

 藤堂が腰からサーベルを抜き放つ。何か黒い炎に覆われているようだ。

 しゅんと壁にサーベルを叩きつける。

「師匠、封印壊されたっ!」

 今の一撃で!?俺の全力でやっと壊せるこれを……

 藤堂はさらに壁を破壊しそこから飛び降りようとしている。黒岩もだが。

「刀のキミ仲間になる気になったらルルイエの藤堂亮とうどうりょうを尋ねてきなよ」

 それだけ言い残して夜の闇に消えていった。

 だが気は抜けない。

「真知、もう一回この部屋を封印しろ。あいつを駆除するぞ」

 頷き封印を発動させる真知。

 一気に踏み込み大上段から斬る!

「アアアアアアアアアアアアアアアア!」

 すでに儀式は終わっていたのか信じがたい速度で俺の刀をかわす。

 かわした先にマチェットで斬りかかる真知。

 足をとめマチェットを受け止めた瞬間横合いから神速の平突きを放つ!

 かわしきれず右腕に突き刺さる、それを右へ斬り飛ばす!

 残った左腕で真知を吹き飛ばす魔人。

「真知!」

「だいじょうぶ、単純に吹き飛ばされただけ」

 魔人を見据える、右腕を失っている以上右から攻めるとするか。

 真知が気配を消すために封印を張りなおし左から迫る。

 真知が現れると同時に首へ一撃、それに合わせて右からも首へ斬撃を放つ!

 首を失い倒れる魔人、どうやら消えないようだ。

「怪我はないか?」

「ちょっと頭うった。いたい」

 真知の頭を撫でながら片手でスマホを操作し支部長に連絡を入れる。

 事の顛末を話終えるとスタッフをこちらに派遣するから帰ってよしとのことだった。

 この街で何が起きているのかも分からずただ真知の頭を撫で続けていた。

長くなりすぎました。

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