第2話 6 終了、回答
帰宅するまで真知は何も訊いてこなかった。
俺としても何を話すべきか迷い結局帰り道は無言のままだった。
帰宅するなりスーツからラフな格好に着替える2人。
「スーツは明日クリーニングに出すか」
「血の匂いするもんね」
さらりと答える真知。
初めて人間を撃ったことについてはどうなのだろう。
あの魔人は怪異として扱えるだろうが。
今日の真知はよくやった、褒めてやるべきだろう。
「真知、今日の動きはよかった。吹き飛ばされて頭打つところ以外は」
「射撃で仕留めきれなかったけどそれでもいいの?」
殺せなくてよかったのかと問われる。
「あの場合は1人残しておいたほうが上の人数とか知れて良かったんじゃないか」
封印を使えば人数は把握できたんだろうが魔人を除くあの2人は感知してそのまま逃げたかもしれない。
「なるほど……」
何か悩んでいるようだ。
俺は台所に積んである飲料水を手に取りそのまま飲む。
「師匠、冷蔵庫にコーヒーあるからとって」
パシられた。
しかもいつのまに俺の冷蔵庫使ってるんだ。
とりあえず言われたように渡す。
「ありがと。訊きたいことがいくつかあるんだけどいい?」
「答えられる範囲ならな」
正直答えられることのほうが少ない。
推測憶測が混ざった回答になるかもしれないことだけは告げておく。
「今日戦ったあの人達は結局何なの?」
「ルルイエの構成員、1階にいたやつはただの雑魚、2階にいた2人は両方とも超越者だな。魔人になった人間の元はわからん」
素直に考えていたことを伝える。
言われたことを咀嚼してまた考え込む真知。
「あの魔人錬成って藤堂って人は失敗作だって言ってたけど成功するとどうなるの?」
俺にもよくわからない質問がきた。
「俺の知ってる魔人錬成はあれで成功なんだよ。身体能力の強化、代償に理性を失う。理性が残った場合、なんてものは成功例がないんだ。」
それをわかってて何故あんな儀式を繰り返していたのかは正直想像もつかない。
召喚の儀式も込みだから人間を生贄に捧げている場合どれだけの人間があそこで殺されたか。
「あの白髪頭の藤堂だっけ?が師匠のこと熱心に勧誘してたけどそこらへんどうなの?」 どうなのって聞かれてもなぁ。
「なんで俺を勧誘するのかわからん。あいつらを狩る側の人間だぞ俺」
「復讐するのに都合がいい、とか言ってたけど師匠の目的ってそれなの?」
真っ直ぐ俺を見据える。
だが答えるわけにはいかない。
「俺の目的は小さいことさ。お前が気にすることじゃない」
「ルルイエにはいかないってこと?」
「なんで俺が犯罪集団に入らなきゃいかんのよ。勿論いかない」
ほっとしたように胸を撫で下ろす真知。
そんなに勧誘で揺れてたか俺?
「あ、そうだ封印が一発で破られたじゃない?あれはなんだと思う?」
あぁそういえば。
黒い炎のようなものがまとわりついてたところをみると、
「異能だな。しかも威力だけなら半端じゃないやつ」
「炎に見えたけど違うっぽいね」
あれはまともに食らったら死にそうな気がする。
封印でも耐えられないならかわすしかないわけだが。
「強力な異能持ったウォンテッドがいるってコミュニティには伝えておいたほうがいいな」
「いきなりあれに会ったら死んじゃうかもしれないしね」
あれは殺しを目的に動いているわけではなさそうだが警戒したほうがいい。
「真知、お前1回家に帰れ。もう暫く帰ってないだろ」
「あ、そうだね。そろそろ一回帰らないと」
素直に受け入れる。
今回の給料と修行分の給料と別々の封筒に入れて渡す。
「あとマチェットは研ぎに出すから暫く仕事はなしな」
「えー」
不満らしい。
「事務所にくるのはいいけど俺も暫く仕事しないから」
ちょっと情報集めでもするか。
気になることも多々ある。
「んじゃ帰る。また明日くるね」
「おう、気をつけて帰れよ」
襲った側を殺さないようにな。
1人になって自問自答する。
復讐を遂げるための実力はついたと思う。
あのフランベルジュの男と対峙しても今度は大丈夫だ。
だが問題はあの男がどこにいるのかということだ。
あの男は依頼で動いていると言っていた。
なら依頼主も始末しなければならない。
1駆除士では探すのにも限界がある。
それこそルルイエのような後ろ盾があれば探すのも楽になるだろう。
何を馬鹿なことを考えているのか。
自分が賞金首になってどうする。
今日接触した藤堂、あいつから情報を引き出せないか。
次に会ったときには色々訊いておかなければならないことがある。
そしてまた会うことがあると俺は確信していた。
奇妙な縁、それがあると。
復讐の話は真知に知られたくない。
純真無垢とは言い難い真知だがここまで汚いものを見せるわけにはいかないだろう。
心に灯った黒い炎を燻らせながら今後の課題について考えていった。
まぁ答えなんてでるわけもないんだが。




