序章
「霧羽天国」。
それは太平洋の西側、アジア大陸に近い北回帰線の上空にあり、ずっと空の彼方に隠され、人類に一度も発見されたことのない国である。
この国は大気中の成層圏、海抜約15000メートルの高さに位置している。一般の人間の世界で人を乗せて雲の上まで行ける飛行機の飛行高度は、およそ10000メートルから12000メートルの間の対流圏界面である。しかし、この国の痕跡が未だに発見されていない主な理由はそれではない。それは、翼族の民全体の団結した信念からなる神秘的な力によって常に守られており、そのため一般の人間や、人類が発明したあらゆる計器で探知することができないからである。そして「翼族」とは、ここに住む民のことを指す。
「今回の人間界での任務について、理解しましたか?」羽帝は少し厳格でありながらも、その言葉の端々に一抹の不安を覗かせていた。
「あの……人間界にいるお二人の翼族姫を見つけて……それから?」一人の翼族姫が、腹部の前で緊張した様子で両手をこすり合わせながら尋ねた。
「それから、彼女たちが人間界で任務を遂行している状況を私に報告し、可能な限りその遂行を援助しなさい。」
「はい、承知いたしました。」
羽帝は霧羽天国の最高統治者である。彼女の銀白色の長い髪は肩に掛かり、背中から両側に広がる羽翼と視覚的に一体化している。その清らかな顔立ちには成熟した慈愛の息吹が漂い、顔には微かに目立たない皺が刻まれている。統治者ではあるが、ここの民にとって彼女は手の届かない高みにある指導者ではなく、すべての民の心の中にある慈母である。翼族の民は両親から生まれるのではなく、国内の専門機関にある特殊な機器から孵化して誕生するため、翼族の民一人ひとりを細やかに支えてきた羽帝は、民の心の中で人間の親のような恩情を育んでいる。
そして国内には他に五人の「翼族姫」がいる。通常、彼女たちは羽帝の頼れる助手として、国の繁栄を維持し、新たに誕生した民の世話をするなど、大小様々な事柄を補佐している。しかし、そのうちの二人が現在それぞれの任務のために長期にわたり人間界に滞在しているため、羽帝と姫たちは常に人手不足で手が回らない状態にあった。そこで、羽帝は人間界にいる二人の翼族姫の行方を探すため、三番目の翼族姫を人間界へ派遣することを決定した。これは羽帝にとって非常に大きな賭けであった。もしかすると、この派遣によって三番目の姫も行方が分からなくなり、帰ってこなくなるかもしれない。それでも、羽帝は最終的に彼女を信じることに決めたのである。
「絶対に、早く二人のお姫様を連れて無事に帰ってきてね!」
「うまくいくように祈ってるわ。あんまり待たせないでね!」
天国内に残された二人の姫から大きな期待を寄せられ、普段はあまり自信のない彼女も、今回は強い決意を固めなければならなかった。霧羽天国全体の期待を背負い、見知らぬ人間界へと降り立ち、未知なる旅路へと踏み出したのである。
次回予告:人間界へ任務にやって来た翼族姫一号の邱艾晶は、指輪を探す任務を遂行するため、八月の炎天下の中で毎日あちこち探し回ることを余儀なくされ、同時に無情な夏期の再履修クラスにも阻まれていた……。しかし、これは本当に障害なのだろうか?もしその中に期待できることもあるのなら、障害とは呼べないのかもしれない。再履修クラスの隣の席にいる頼もしいクラスメイト。もしかすると、これが一つの出逢いの始まりなのかもしれない。
次回:指輪を探す少女




