EP 7
近代的殺戮。レンジャー部隊(弓丸)による蹂躙劇
空母の底部ハッチが開き、無数の黒いロープが地上へ向かって射出された。
シュルルルルルッ!
空から降り注ぐそのロープを伝い、黒装束に身を包んだ数十の影が、レンジャー部隊さながらの完璧なフォームで一斉に降下していく。
身長三十センチほどのドワーフ特製人形『マグナギア』をベースに、リアンがカスタマイズを施した特殊部隊。
その名も、召喚スキル【小】――弓丸部隊。
「なんだァ、あのちっこい人形共は! ルナミス帝国のオモチャかァ!?」
上空で待ち構えていた魔人ギアンが、嘲笑と共に死蜂型の群れをけしかけた。
巨大な毒針を持つ蜂たちが、降下中の弓丸部隊へと群がり――。
パンッ! パパンッ!
乾いた破裂音が、空に響き渡った。
「「「……ギ、ギィィィッ!?」」」
蜂の死蟲機たちの頭部や翅が、見えない『何か』によって次々と撃ち抜かれ、緑色の体液を撒き散らしながら墜落していく。
「なっ……!?」
ギアンの嘲笑が凍りついた。
弓丸たちの手に握られていたのは、小さな鉄の塊。
リアンの持つ現代知識と魔法技術の結晶――『SIG P365』のスケールダウンモデル(魔導カスタム)だ。
「クリア。次弾装填、前進」
指揮官機であるくるみ割り人形型のマグナギア『センチネル』が、冷徹な機械音声で命じる。
着地した弓丸部隊は、魔法陣を描くことも、呪文の詠唱をすることもない。
ただ無機質に、冷徹に、流れるようなタクティカル・ムーブメントで陣形を組み、引き金を引くだけ。
タアンッ! タタタタンッ!
音速を超える九ミリ魔導弾が、死蟲機の強固な装甲を紙のように貫通し、内部回路を破壊していく。
魔人も、獣人も、エルフも知らない。
『引き金を引くだけで人が死ぬ』という、現代兵器の絶対的な理不尽さを。
「なんだ、アレは……ッ!?」
VIPルームのモニター越しにそれを見ていたキャルルは、驚愕に目を見開いていた。
彼女の放つ『超電光流星脚』は強力だが、発動には一億ボルトの雷光と闘気を練り上げる『溜め』が必要だ。
だが、あの人形たちは違う。
息をするように、歩くように、ただ指を動かすだけで致命の一撃をばら撒いている。
「魔法陣の展開も、闘気の波長も一切感じられません……。ただ物理的な運動エネルギーだけで、あれだけの破壊力を……?」
リバロンが、完璧なポーカーフェイスを崩して冷や汗を拭った。
「あんな部隊が百人もおったら、ルナミスの魔導戦車部隊かて数分でスクラップでっせ……」
ニャングルも、煙管を落としそうになっている。
「えへへー、ちっちゃいお人形さんが花火打ち上げてるみたいで綺麗だねー!」
「ポップコーンおいしー!」
ルナとリーザだけは、緊迫感ゼロでスクリーンを楽しんでいた。
「ギハハッ……! ふざけるなァ! たかがオモチャ風情が、我が死蟲王の軍勢を舐めるなァッ!」
激昂したギアンが鎌を振り回し、地上の死蟻型に突撃を命じる。
強力な酸を吐く無数の蟻が、津波のように弓丸部隊へ押し寄せた。
しかし、弓丸部隊に焦りはない。
彼らは魔法ポーチから、粘土のような四角いブロック――『C4爆弾』を取り出し、寸分の狂いもない投擲力で蟻の群れの中央へ放り投げた。
「ファイア・イン・ザ・ホール(爆発するぞ)」
ピッ。
センチネルが起爆スイッチを押す。
ドッゴォォォォォォォォォォォォンッ!!
地鳴りとともに、ポポロ村の郊外で巨大な爆炎が巻き起こった。
凄まじい衝撃波と熱量が、数百体の死蟻型を一瞬にして蒸発させる。
「アッ、ギ、アァァァァァァァッ!?」
爆風に煽られ、ギアンが蟷螂の背の上で無様に転げ回る。
「ば、馬鹿なッ! あんなの魔法じゃない! 闘気でもない! 一体何の力だァァァッ!?」
未知の概念による一方的な殺戮劇。
恐怖をばら撒く側だった魔人ギアンの顔に、初めて明確な『絶望』と『恐怖』が張り付いた。
「ふむ、地上の掃除はあらかた終わったか」
VIPルームでコーラを啜りながら、リアンはモニターの戦況表示を確認した。
「じゃあ、そろそろ空の羽虫も片付けようか。――賢者君、空丸の展開は?」
『既に配置完了しています。マスター』
リアンの言葉に応えるように、巨大空母の上空から、十機の巨大な影が降下してきた。
機械の装甲で覆われた、圧倒的な威圧感を放つ鋼のドラゴン部隊――『空丸』だ。
『全機、マルチロックオン完了。プラズマ・ジェネレーター、臨界点到達』
無機質なシステム音声と共に、十機の鋼のドラゴンの口に、太陽のように眩いエネルギーの光が収束していく。
「さぁ、害虫駆除の仕上げだ」
リアンは、残酷なまでに穏やかな笑みを浮かべた。




