表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

EP 2

空飛ぶ鉄の城と、秒で建つ俺の城(ポポロ亭)

「総員、戦闘態勢ッ! 非戦闘員は地下シェルターへ避難して!!」

ポポロ村の広場に、村長であるキャルルの悲痛な叫び声が響き渡った。

空を覆い尽くすほどの、漆黒の空母打撃群。

ルナミス帝国か、レオンハートか、アバロンか。ついに三大国の均衡が崩れ、この緩衝地帯を焦土に変える気なのか。

「リーザちゃんも早く逃げて! ここは私が食い止めるっ!」

キャルルはラフな村長服のポケットから愛用のダブルトンファーを引き抜くと、特注の強化靴で大地を踏みしめた。

月兎族の圧倒的な闘気が、彼女の細い身体から立ち上る。

いざとなれば、一億ボルトの雷光を纏った『超電光流星脚』で、あの空飛ぶ鉄の城を撃ち落とす覚悟だった。

「ひぃぃぃっ! わ、私のパンの耳が飛んでっちゃうよぉぉっ!」

同居人の人魚姫リーザは、大事な大事な朝食(パンの耳と茹で卵)を抱きしめながら、ガクガクと震えている。

その時だった。

上空の巨大空母から、一匹の小型竜(竜丸)が滑空してきた。

ドスンッ、と砂埃を上げて広場に着地した竜の背から、一人の青年が飛び降りる。

「やあ、驚かせてすまない。君がここの村長さんかな?」

爽やかな笑顔で話しかけてきたのは、動きやすい軽装に身を包んだ、優しげな青年だった。

「な、何者!? 帝国の新兵器の指揮官!? それとも魔族の幹部!?」

「いや、ただの料理人だよ。今日からこの村で、定食屋を開こうと思ってね」

「…………は?」

キャルルはトンファーを構えたまま、ウサギ耳をピーンと立ててフリーズした。

後ろで震えていたリーザも、ポカンと口を開けている。

「俺はリアン。しがないスローライフ志望の男さ。空母はちょっとした移動手段だよ。――ところで村長さん、あそこの空き地、金貨で買わせてもらえないかな?」

移動手段で空母を出す料理人がどこにいる。

ツッコミどころが多すぎて、キャルルの脳内処理は完全にパンクしていた。

「あ、えっと……手続きと税金さえ払ってくれるなら、構わないけど……家はどうするの? 大工の手配なら数ヶ月は――」

「ああ、それなら問題ない」

リアンはポンッと手を打つと、何もない空間にむかって『ネット通販』のスキルを展開した。

空間が光り輝き、魔法のゲートが開く。

そこから次々と吐き出されていくのは、美しくプレカットされた木材、最新鋭の断熱材、ピカピカのシステムキッチン、そして巨大な業務用魔導冷蔵庫。

「な、なにこれぇ!?」

「さあ、サクッと建てるぞ。影丸かげまる!」

リアンの足元の影がぐにゃりと歪み、騎士の形をとった。

召喚スキル【中】――影丸。

戦闘だけでなく、鍛冶やDIYまでこなす万能の影の従者である。

「影丸、図面通りに頼む。DIYモードだ」

リアンの命令が下った瞬間。

影丸の体が数十の影に分裂し、恐るべき速度で動き始めた。

ダダダダダダダッ!!

機関銃のような速度で釘が打たれていく。

魔法の接着剤と完璧なホゾ組みが、木材を次々と組み上げていく。

真新しい木の良い香りが広場を包み込み、窓ガラスがはめられ、屋根瓦がミリ単位の狂いもなく敷き詰められていく。

「嘘でしょ……」

「魔法……なの……?」

キャルルとリーザが呆然と見上げる中、たったの五分。

カップ麺が伸びるか伸びないかの時間で、そこには真新しく温かみのある、二階建ての立派な店舗兼住宅が完成していた。

木彫りの看板には『ポポロ亭』の文字。

「ふぅ、完璧だ。影丸、ご苦労」

リアンは影丸を引っ込めると、真新しいエプロンをキュッと締めた。

「さてと。村長さんたち、脅かしたお詫びに、これから試作品のまかないを作るんだが、良かったら食べていかないか?」

リアンが真新しいキッチンに立ち、魔導コンロに火を入れる。

鍋の中で、黄金色の太陽芋と、上質なロックバイソンの肉が、醤油と砂糖で炒められ――。

ジュワァァァァァッ……!

「!!」

甘辛く、そして暴力的なまでに食欲をそそる『肉じゃが』の匂いが、ポポロ亭の換気扇から村の広場へと放たれた。

「きゅるるるるるるるるるっ!!」

パンの耳しか食べていなかったリーザのお腹が、雷鳴のような音を立てた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ