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私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠
第1章 悪役令嬢は暴れん坊

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22 徳を積む活動

 ギフトを授かった十三歳の時から、私は教会に通っている。

 私に与えられている予算と、公爵家からそれなりの額を寄付してきた。

 そうした私の目的、モットーはもちろん『ノー、仏罰』である。


 学園が休日である今日も、教会へ来た。

 私のこうした行動が『曇りの聖女』という謎の二つ名の由来でもある。

 でも、本物の聖女が現れた今、その名は邪魔だと思う。

 そういうところから私とヒロインちゃんが敵対することになるのか。


「…………」


 従者を教会の外に下げて、礼拝堂に入り、そこで祈る。

 雰囲気的には、やっぱり西洋系の教会だと思う。

 これで国教が仏教系なら私のギフトにも納得がいくのだけど。

 あんまりそういうのは関係ないのかしら。

 でも、洗礼水晶が示す文字が日本語だったし、ギフトってたぶん魂に関係しているのよね。

 まぁ、そのあたりは考えてわかるものでもないか。


 祈りを捧げる。無心で。

 否、下心しかない。ノー、仏罰。ノー、仏罰。

 お釈迦様のお慈悲をくださいませ。

 お師匠様、もし私が幽閉されたら早めにお助けください。

 おお、ノー、仏罰。お釈迦様、万歳。玄奘三蔵法師、万歳。


「…………」


 文字列が違うだけで実質、ギフトで『魔王』と出たのと同じなのよね。

 それを考えたら恐ろしくない?

 あまりにも世界観が違う名だったせいで、ちょっとだけ余裕があるけど。

 もし、この世界と国の雰囲気に合わせて、ギフト名が『魔王』だったら。

 それこそ典型的な悪役令嬢として過ごしていたに違いない。

 流石にお父様やお母様も私と距離を置いたかもだ。

 そうはならなくて本当によかった。


「……ふぅ」


 学園が始まってからは週に一度、来るようにしている。

 といってもなかなか厳しい時は、二週間、三週間に一度の頻度だ。

 それでも、教会での祈りは途切れさせないようにしたい。


「すごく熱心に祈られていましたね、マロット公女」

「ひゃっ!」


 真横から話しかけてきた! 横にいたのは。


「なっ……。アスティエール嬢!?」

「ふふ、こんにちは!」


 ヒロインちゃんだった! いつの間に隣に! 怖いから、そういうのやめて!


「いつも教会に来られているんですよね、マロット公女」

「え、ええ……」

「今日来たら、ご一緒できるかな? って思って期待していたら、本当に会えちゃいました! ふふ」


 ヒロインスマイルが炸裂する!

 そういうのはG4の前でやってほしい。なんて眩しいこと。


「『聖女』の貴方が教会に来たなら、大騒ぎになりそうね」

「そうでもないですよ。ギフトが判明した時は確かにいろいろとありましたけど。学園に通い始めてからは落ち着いていますから」

「そうなのね。好奇心で聞くけど、教会から何かしてほしいとか言われているの?」

「いえ、あまりそういうのはありません。できれば、それなりの頻度で教会に通ってほしいとだけ」

「あら、意外ね。聖女としてやってほしいことがあるかと思っていたわ」

「私もそう思っていたんですけど。『聖女』の力って、平和な時は皆さんの怪我を治したりするくらいじゃないですか」

「……そうね」


 結界も、浄化も、破魔も平時では役立つものではない。

 唯一、癒しだけは需要があるだろう。


「でも、治療行為が聖女頼りになると、国の医療が衰退するし、聖女がいなくなった時に困るからって。あまり、そういうのは推奨されていないんです。もちろん、誰かを癒すことまで制限はされていませんので、自由に使っていいと」

「……へぇ」


 またずいぶんとまともな判断をするのね、この国の教会は。

 フィクションの教会だと聖女をシンボルに掲げて、民の治療で人気取りをさせ、貴族からはお金をガッポリ取って、最終的には破滅するとかパターンだけど。

 この国の教会は、きちんと医療の衰退まで警戒して聖女を取り扱っている。

 転生者の私がやる役回りがないわね、これは。


「貴方はそれを受け入れているの、アスティエール嬢」

「はい! 教会の人が言っていることは正しいと思います。お医者さんたちがいなくなったら、きっとたくさんの人が困りますし、彼らの領分を侵したいとは思いません」


 うわぁ、まともだ。善良聖女だ。やはり現地人、本物ヒロインちゃんか。


「そう。教会も貴方みたいな人が聖女で、きっと嬉しいでしょうね」

「ありがとうございます。でも、マロット公女も熱心に教会に来られていると聞きました。教会の人たちが喜んでいる様子も見ましたよ」

「ふふ、そう」


 公爵家からの寄付金とかあるからね!

 謎ギフト扱いとはいえ、私が教会に通うことに異議はあるまい。

 『曇りの聖女』とか言い出したのは、教会じゃないかと踏んでいる。


「マロット公女は教会でお祈りされて、お帰りになられるんですか?」

「というと?」

「他に何かされているのかなって。あ、聞くのが失礼でしたでしょうか……」

「そんなことはないわ。普段は祈りを捧げるくらいね。でも」

「はい」

「……それだけだと足りない(・・・・)気がするのよねぇ」

「足りない?」


 可愛らしく首を傾げるヒロインちゃん。

 何が足りないって? 徳が。徳が足りない気がするのよね。


「マロット公女は養護施設への寄付や、訪問もされているとか」

「それもしているわね」


 でも、それはあくまで一般的な貴族子女の振る舞いにすぎない。

 教会や養護施設には援助しておいた方がいいのだ。いろいろと。

 公爵家の娘ならなおさらね。

 ただ、私の場合、それでは足りない。

 もっと徳を積み重ねておきたい。貴族社会の外聞を気にした善行ではなく、もっと実益となりそうな徳……。困っている人を救った実績が欲しい。

 社会的な評価はこの際、要らない。

 私が恐れているのはお釈迦様だけである。

 ……これも大概、不遜な物言いな気がするわね。


「それだけではダメなのでしょうか?」

「私個人としてはね。貴方も子爵令嬢ならわかると思うけど、それだけでも、充分に社会的な責任は果たしているわ」

「そうですよね。でも、マロット公女はそれでは足りない。それは何が足りないのでしょう」

「うーん……。善行が?」

「善行」


 徳ってなんだろう。わからなくなってきた。

 私はお釈迦様に怒られなければそれでいいのだ。

 ゆえに悪行を為さず、善行を積み上げたい。ただそれだけ。


 聖女が性質からして善良で、ギフトも善行しかできなさそうなのに対して、私は違う。

 私のギフトは悪行も為せる。

 むしろ、悪名高い名を冠している。

 けれど、それでは仏罰が下るだろうから、しない。

 罰されないために善行を為す。

 そうあるように自分を律していくしかない。ん?


「あれ……?」

「マロット公女?」


 待って。もしかして私、勘違いしていない?

 『斉天大聖』、それはヒーローの名前じゃない。

 神仏に喧嘩を売り、天界で大暴れしたような、反逆の魔王の名前だ。

 つまり、この世界の神様が、私に求めているのは、大暴れ(・・・)なのでは……?


 それを私が原典知識で解釈し、仏罰を怖れて善良であるように振る舞っているだけなのでは?

 本来、ギフトを授かった時点で、やりたい放題の極悪令嬢の道を歩むはずが、私の知識が逆方向の解釈をした結果が今なのでは……?


 聖女とギフテッド4が倒すべき敵としてのギフトを与えられた。

 そういうことだったのでは……?


「あー……」


 うわ、しっくり来る。

 どう見ても推定乙女ゲー、悪役令嬢ポジションなことも加味して。

 ジュリアン氏の解析系ギフトも、私の『七十二変化』を見破るためのものでは?

 『聖女』の破魔も、暴れる私へのカウンターなのでは?


 今まで、こんなギフトでどうしろというのかと思っていたけど。

 そもそも暴れ回ることが前提だったのでは……。


「うあー……」

「マロット公女、大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫……でも」

「は、はい」

「もっと善行を積まないとダメだと思ったわ」

「ええ?」


 たとえ、神様が私に嫌われ者の〝役〟を望んで、このギフトを授けたのだとしても。

 私はその役割には乗ってやらない。

 むしろ、最初からマックスお弟子モード。

 三蔵法師のお供のつもりで、世直ししてやる!


「私、決めたわ、アスティエール嬢」

「は、はい」

「もっといいことをする。なんだったら正義の味方をやってやる」


 孫悟空パワーで人助けしまくってやろう。

 仮に、私のこの解釈が間違っていたとしても、善行を為すならば文句はあるまい。


「マロット公女……すばらしいです!」

「ええ?」


 ヒロインちゃんに意識を向けると、なんだかキラキラな上目遣いをされる。

 くっ、眩しい。内面の善性が透けて見えそう。


「私もお付き合いします!」

「ええ……? なんの?」

「正義の味方、私もお供させてください!」


 いや、お前がお供になるのかよ。

 逆じゃない? この子は三蔵法師じゃなくて聖女だけど。


「私、ギフトを授かってから、ずっと何ができるか探していたんです。こんな力があるのなら、どうやってみんなの役に立てたらいいんだろう、って」

「あー……。まぁ、そうよね」

「はい。ですから、マロット公女がおっしゃる正義の味方、とてもいいと思いました!」


 うーん。なんか変なやる気を出させちゃった気がするわね。


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― 新着の感想 ―
西遊記かと思ったらF○teでも始まってるのかと思って草が禁じ得ないw 最終話に追いついてしまう事だけが悲しい…!
 レッドとピンクが…(*´・д・)
聖女ヒロイン厨二病ルート爆進中!!!!!!!
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