↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~【書籍化企画進行中】  作者: 川崎悠
第6章 捲簾大将

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
191/191

191 沙悟浄

「ヴィル様……どうして」


 彼は間違いなく雲に乗っている。けれど、どうやって。


「この雲かい?」

「はい……」

「これは『如意真仙』とやらのギフトだよ。この如意鉤の持ち主、その駕雲法(がうんほう)という力だね」

「黒水晶の……」

「ああ」


 そういえばジュリアンさんが解析した能力の中にそれがあったわ。


「使えるんですね……」

「懸けだったけどね。それに余裕はあまりない」

「え……?」

「もう黒水晶が砕けそうなんだ。この一回で、もうこの力は使えなくなると思う。今のうちに陸へ行かないと」


 ヴィル様は私を抱えたまま、陸へ向かおうとする。


「待って、まだ……八戒たちが」


 力が入らない中でも、ヴィル様の服を掴み、見上げて訴える。


「わかった。八戒! いるか!」


 ヴィル様が呼びかける。

 荒れた海とその上に広がる雲、崩れていく石の巨体が零れ落ちていき、視界が悪い。


「八戒! 四健将!」


 私の代わりに呼びかけてくれるヴィル様。

 まさか海の藻屑になったとか……。


「「「「「ウキー……!」」」」」


 というのは杞憂だったようで、ミニ猪八戒とミニ四健将たちが私たちのもとへ帰ってくる。

 でも、フラフラしている様子で、やっぱりこの子たちも力を尽くしてくれたのだとわかる。


「この子たちがいればいいかい?」

「……陸地へ行くのは。でも、ヴィル様。力を維持しないと……だめなんです」

「うん?」

「防波堤を……ギフトで築きました……。私の力が消えたら、津波の被害が……」

「……だが」


 私もそうは言うが、もうかなり限界だ。

 ヴィル様が来てくれたことに安堵し、今にも意識を失いそう。

 でも、それでは津波を防ぐために築いた防波堤まで消えてしまう。

 そうしたら被害が……。


 根性を出して意識を保つしかない。

 被害が増えるかどうか、私がここで意識を保てるかに懸かっている。


「「「「ウキーーー!」」」」


 ミニ・マインたちが飛び回っている。

 おそらく、あれは沙悟浄の欠片を集めているのだろう。


「沙悟浄……」


 前回、ブラック猪八戒を法天象地で倒したあと、私は気を失った。

 それから三日ほど寝たきりだったわ。

 でも、その間、ミニ・マインをベースにしたミニ猪八戒は元気に活動していたらしい。

 エネルギー枯渇で私はそうなっていたのだから、ミニ猪八戒はその時、自前のエネルギーで活動していたはず。

 つまり、私のギフト化したあとのミニ猪八戒にはエネルギーが蓄積された状態だった。

 だったら、これからミニ・マイン化する沙悟浄にも同様にエネルギーがある状態のはずよ。


 それに今回、私のギフトに上乗せして猪八戒の力を使用できた。

 なら、逆も可能なのではないかしら。

 私が沙悟浄の力を行使するのではなく、沙悟浄が私の力を行使できたら。


「ヴィル様……もう少し待って……。沙悟浄が味方になるなら……託したいの」

「……わかった。もし黒水晶が砕けたら、君を担いで泳いで戻るよ」

「……ふふ、頼もしいです」


 でも、この荒れ狂う海でそれはかなり厳しい。

 如意真仙のギフトがどこまで保つか。

 ブラック沙悟浄との戦闘で、かなり沖にまで来てしまっている。


 でも、陸側に移動している間に、沙悟浄との連絡が間に合わず、私が意識を失えば防波堤も消える。それでは津波の被害が防げない。


「「「「ウキー……!」」」」


 ミニ四健将たちがフラフラしながらも私たちの体にしがみついてくる。

 この子たちも、やっぱり限界でエネルギーを必要としているのかしら。

 でも、私から充電するとしたら、余計にきついわよ……。


「「「「ウキ!」」」」


 ボフフフン! と。なぜか命令していないのに変化するミニ四健将たち。なぜ。


「……これは? 鎧かい?」

「…………ライフジャケット?」


 ヴィル様の体と、私の体、胴体部分に、黄色とオレンジ色のジャッケットが装着された。

 これはミニ四健将たちの変化? あ、尻尾が生えているわ……。

 私の記憶から勝手に再現してくれたってこと?

 ……ミニ四健将の充電が陸地まで保てば、泳いで助かる確率は高くなった。


「ありがとう、貴方たち……。八戒も、ありがとう」

「ウキィ……」


 フラフラのミニ猪八戒が、それでも私のそばで浮かんで待つ。

 たぶん、沙悟浄のことを待っているんだろう。

 私も待つ。もうそこまでしか意識を保っていられそうにない。

 ヴィル様も私を抱えたまま、辛抱強く待機してくれている。


「「「「ウキーーー!」」」」


 やがて、ミニ・マインたちが沙悟浄の欠片を集め終えた様子で、渦を巻くように揃って回転し、一つの岩の塊を作り出す。


「ウーーーキッ!」


 ミニ・マインの一体ができあがった岩の塊に、ギフト・沙悟浄が封印されているであろう黒水晶を投げつけた。

 ちょ……。それでいいの?


 バキン! という音を立てて、岩にぶつけられた黒水晶は粉砕される。

 パラパラと海に落ちていく水晶の破片……。本当にそれでいいの? 頼むわよ、本当……。


「「「「ウキーーーーー!」」」」


 残ったミニ・マインたちが続いて岩の塊に突撃していく。

 それぞれぶつかると同時に煙となって霧散し、岩の塊に吸収されていくみたい。

 ……私のうなじの毛なんだけどなぁ。

 まぁ、また生えてくるでしょうけど。


 今回はミニ・マインたちが残らず岩の塊へと入り込む。

 そして。


 ビキ、ビキビキ、ビキキッ!

 バッカァアン!


「ウキィーーーーー!」


 花果山の大岩が割れるように、岩の塊が真っ二つに割れて、その中から元気よく一人のミニ・マインが飛び出してきた。


「ウキーー!」


 そうして、すぐさま私たちのもとへ飛んでくる。


「ウキ!」


 ミニ・マインベースで沙悟浄っぽい法衣を着ている。

 手に持っている降妖宝杖は、ブラック沙悟浄のシンプルめの鉄棒とは異なり、なぜか月牙鏟(げつがさん)となっている。なぜに。

 日本風のデザインってこと?


 首飾りをつけていて、それは九つのしゃれこうべ……じゃないわね。

 〝しゃれこうべ風(・)の首飾り〟よ。

 怖さ半減、ただのアクセサリーみたいな、マイルドデザインの九つのしゃれこうべ。


「ウキ? ウッキッキ!」


 一通り確認したあとで、謎のジャスチャー。『チッチッチ』みたいな。何?


 ボフン!


 ミニ沙悟浄が頭の上で得意げに手を添えると煙とともに何かを出した。

 それは……ええと?


「……河童の、頭のお皿?」

「ウキィ!」


 ミニ沙悟浄の頭部は、普通のミニ・マインと同じよ。

 禿頭でもないし、顎鬚でもない。

 私と同じ赤髪の長髪で、その頭の上に乗せたのは〝帽子〟だ。

 河童の頭のお皿デザインの、ただの帽子(・・・・・)である。なんちゃってがすぎる。


「ウキィ……キョ、キョー!」

「なんなのよ、その鳴き声は……」


 河童の鳴き声ってことかしら? 河童の鳴き声って何よ。


「だから、原典の沙悟浄は……河童じゃないんだってば……」

「ウキッ、ウ……キョー!」


 謎の鳴き声で河童を表現するミニ沙悟浄。まぁ、禿頭・顎鬚のおじさんよりは可愛いけど。

 遊んでいる場合じゃないわ。


「沙悟浄、目覚めたばかりで悪いけど……お願い」

「ウキ?」

「私の変化(へんげ)の術を引き継いで……。海に防波堤を築いたの……。海が鎮まるまで、津波の被害がないと確信が持てるまで……。あの防波堤を維持してほしい……。私はもう限界……」

「ウキ……ウキィ!」


 私が伸ばした手を取るミニ沙悟浄。

 どうかお願い。できるかどうかわからないけど、今は信じるしかない。

 それでも、津波の原因は取り除けたのだから。

 可能な限り意識を保っていれば、もしかしたらすぐに海は静かになるかもしれない。


「う……」

「ウキ……キョー!」


 何かがミニ沙悟浄に移る感覚。たぶん、術の引き継ぎは成功したと思う。


「場所……わかる?」

「ウキ!」

「お願い……。しばらく起きられないと思う……八戒たちも起きたら手伝って……」

「ウキィ!」


 ミニ沙悟浄は胸をドンと叩くと、私たちに背を向けて飛び去っていく。


「十分、だね?」

「はい……託せたと思います」

「ウキィ……」


 ミニ猪八戒も何か言うことはありそうな雰囲気だったけど、大人しくしてくれていたみたい。


「じゃあ、帰るよ、マイン」

「はい……」


 ヴィル様が私を抱きかかえ、ミニ猪八戒が彼の肩に掴まる。

 そのまま駕雲は、私たちを陸地へ運ぶ。


「……!」


 ヴィル様は荒れたままだとわかっている海の、海上すれすれへと高度を落とす。


「ヴィル様……」

「大丈夫だ。必ず君を陸へ運ぶ」


 ギフト・如意真仙の黒水晶が限界なのだ。

 私が見た時点でも、かなりヒビ割れていた。


 ……今、関係ないけれど、朦朧とした頭で浮かんだことがある。


 西遊記ギフトは空を飛べるものが多い。

 空を飛べないG4たちが、本来どうやってそれらに対抗するのが正規ルートなのか。

 その答えの一つが出た気がする。


 敵の黒水晶を奪って、そのギフトを行使するのだ。

 それで如意真仙のようなギフトから雲に乗って飛ぶ力を得て、彼らは敵に対抗する。

 それが正規ルートなんじゃないかしら……。


「くっ……! マイン! 掴まって!」

「……はい……!」


 駕雲が霧散する。


 バシャアアン!


 ヴィル様は私を抱きかかえたまま、海へ放り出されるように落ちた。


「ウキィ!」


 ミニ四健将がライフジャケットに変化(へんげ)してくれている。

 海に放り出された私たちも、海面に浮かび上がり、どうにか溺れなくて済む。

 でも、私は泳ぐ元気がない。今にも意識を失いそうだ。


「ごほっ、がほっ……」


 ライフジャケットを身につけていても荒れた海では、波を防げず、顔に海水が降りかかる。

 呼吸が苦しくなる。


「マイン!」

「ヴィル、様……」


 彼に体を任せるしか今はできない。

 ヴィル様も体力のある方だと思うけれど、人を抱えたままでの遠泳を特異としているとは思えない。

 ミニ猪八戒も身動きが取れない様子を見ると、この子も本当に限界が近いんだと思う。


「くっ……!」


 どうしよう。

 これはもう、私を置いていってほしいというべき段階?


 ……死にたくはない。


 でも、だからってヴィル様を巻き込んで死にたいとは思わない。

 死の記憶はなくても、転生者である以上、私の人生は二度目だ。

 なら、生き残るべきは私ではなくヴィル様のはず……。


「ヴィル様、もう……」

「大丈夫だ! 心配しないで! 必ず! 君を生きて返す!」


 ああ……。まずい……。

 死亡フラグは私だけじゃなく、ヴィル様にだって立っているのだ。

 誰かを助けて死ぬなんて、ヴィル様らしいと思ってしまう。

 私を生かすために彼が死ぬ、そんな美しい物語が成立してしまう。

 まるで死ぬはずだった運命が追いついてきたみたいに。


「ヴィル様……だめ、貴方も、生きて……」

「わかっている! 諦めるつもりなんてない!」


 荒れた海。救助などあり得ない沖合。

 まだ陸地は遠く。すべてが彼の体力にかかった状況。

 ミニ四健将だって、いつまで変化(へんげ)を維持していられるか。


 一難去ってまた一難とはよく言ったもの。これ以上はどうにも……。


「カーマイン! ヴィルヘルム!」


 絶望的な状況に、また声が聴こえた。

 この声は……ラグナ卿。


「溺れて死ぬなど許さんぞ!」


 ぼやけ始めた視界には、雲に乗ったラグナ卿が急スピードで降りてくる姿。

 そして、ラグナ卿は力強く、ヴィル様ごと私を海から引き上げた。


「ヴォルテール卿……! 助かります……!」

「ラグナでかまわん! 先を越されたな、ヴィルヘルム! だが、いい仕事をした!」

「あ……、八戒……」

「ウ、ウキィ……」


 あ、よかった。なんとか八戒もしがみついて掬い上げられたみたい。


「う……」


 ラグナ卿は運びやすいように私とヴィル様を、両肩にかつぎ上げる。

 片腕でそれぞれの体を支えて、荷物のような運び方。

 肩に乗せられたその状態だからラグナ卿の足元が目に入った。


「ラグナ卿……その足……」

「おう! 新技だ! 自爆技だったがな! ははは!」


 ラグナ卿の脚は血まみれだった。全体的に傷ついている。

 ジレインを撃退するために無茶をしたのだろう。


「紅孩児の……足……自爆技……。三十六本の……天罡刀(てんこうとう)?」

「おう! それだ! 流石、カーマインだな! よく知っている」


 観音菩薩が紅孩児を調伏させるための使ったもの。

 紅孩児の脚や太ももを抜けない刃で貫いたものだ。

 持ち主は違うはずだけれど……ギフトとしては使えるのね。

 エピソード昇華型……あ、もう限界……。


「皆、満身創痍(まんしんそうい)だな! だが、此度の戦い、すべて俺たちの勝利だ! その中でもお前が一番、よくがんばったのだろうよ、カーマイン! よくやった!」


 ラグナ卿がそう労ってくれる言葉を聞きながら、私はもう意識を保っていられなくなる。

 勝利。彼がそう告げたのなら、きっとあの『独角兕大王』ジレインにも勝ったのだろう。

 なら、本当に……もうここでの難はすべて解決できたといっていい。


 そうして。

 私はそこで意識を手放したのだった。


第六章、完結です!

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


第七章は、少なくとも11月には始めている予定!

というのも、その頃に書籍1巻が出ますので!!(宣伝)

というわけで、書籍書影、公開となりました!

↓の方に表示されているはずです!


まだ、公式ページがないのでアマゾンへのリンクをつけてます。

個人のアフィとかは、していないので気軽に確認をば!


また、今作のレビューをまみもみ様からいただきました!

ありがとうございます!

11月とか言いましたけど、もうちょっと早くに再開したいと思います!

またよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
6章完結&書籍発売おめでとうございます。お疲れ様です 書影マインちゃん素敵です。 特装版や公式グッズなどでミニマイン達ぬいを販売して下さい!買います!赤の精霊バージョンも!!(マリン化)   今回ジレ…
ミニたち健気…書籍楽しみ!!
ミニで三蔵法師一行が揃ってくると、なんつーか急に人形劇をイメージしてしまって…… ドリフの「飛べ!孫悟空」にイメージが引っ張られていってしまう。 あ、ニンニキニキニキ、ニンニキニキニキ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。