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私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠
第4章 破滅フラグは降妖伏魔

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122 幌金縄

「不法侵入。しかも、伯爵家の血筋の者を家から誘拐? 貴方が平民だったら極刑ね」


 ごもっともな指摘である。相手がまっとうな人間ならだが。


「責任者は訪れた男爵家の娘かしら? ラウゼン家を訴えさせてもらうわ」


 扉の前に立つのは白髪の妖艶な美女が一人。

 屈強な護衛を連れてきている様子ではない。

 先程の轟音からラグナ卿は戦闘を始めたようだ。

 本筋の流れを考えると、エミリア嬢とラグナ卿がいる、あっちがメインストーリー。

 その間に裏で伯爵家兄妹を移動させる敵勢力がこの女か。

 人質として確保したいのかしら。


「何か誤解があるようですわね」

「誤解? この状況で?」

「ええ。だって私、こちらのベラゴート伯爵家嫡男、クラリオ・ベラゴート様とその妹君、ロクサーヌ嬢と友人なんですもの。今回はお二人に招かれて屋敷に入っただけでしてよ」

「……勝手に入った、の間違いでしょう?」

「いいえ? 堂々と扉から入ってまいりました。クラリオ様たちにも歓迎されていましてよ?」

「そんなはずがないでしょう」

「ふふ、どうして? 彼ら二人は伯爵家の兄妹。この家で自由に振る舞っても咎められる筋合いはないわ。それに今、使用人たちも出払っているでしょう? だからクラリオ様たちが堂々と私たちを、正式に迎え入れてくださったの。正式な客人に対して無礼な物言いをするなんて、貴方はなんて躾けがなっていないのかしら? そんなことでは社交界でやっていけなくてよ」


 ちなみに私は正式な社交界デビューはまだよ!

 前世でそんな経験があるわけもない。


「……減らず口を」

「クラリオ様、彼女はいったい何者かしら?」


 美女を無視してクラリオに話しかける。

 もちろん油断する気はない。

 というか、この部屋には普通にミニ・マイン三体が出たままだ。

 幽霊メイドのアンリエッタさんも姿を隠していない。

 それを見て悲鳴を上げたり、動揺したりするなら可愛いものを。

 まるで動じないその様子が余計にあやしい。


「……後妻です。父の後妻」

「あらまぁ」


 そんな典型的な役回りなことあるのねぇ。

 人の変わった伯爵が、夫人を追い出して迎えた後妻?


「ふ……。わかったようね? この子たちを盾に正当性を訴えようとしても私は、」

「如意棒!」


 私は美女の言葉を遮り、如意棒を取り出す。

 部屋の物や兄妹に当たらないように気を配りつつ、ブンブンと振り回してみせた。


「我は者行孫(しゃぎょうそん)! 正体を現したお前から、伯爵を操る黒水晶を奪うか、破壊しに参った!」


 突然の名乗りと見栄切りに美女は流石に言葉を失う。

 貴族よろしく悠長に言葉の投げ合いに興じると思った?

 残念! すでにラグナ卿が暴れているので、もはや私たちは強盗である。

 この上は、正義を示すには伯爵家兄妹の保護だけでなく、洗脳か、なり代わりを証明するより他はないのだ。

 開き直って先手で襲いかかるべし!


「黒水晶をいただくわよ!」

「ふざけたことを!」


 ひとまず襲いかかってみて、相手の出方を窺う。

 ギフテッドか、黒水晶による召喚を行うなら、それを使ってくるだろう。

 正体を見極めなければ。ラグナ卿もかくやの暴挙だ。


「ウキーッ!」

「うきぃ!?」


 私の掛け声に驚くあたり、ちょっと常識的かしら!

 こちらの方が非常識である。やっていることは賊だ。


「くっ!」


 一応、即座に打ち倒すのではなく、きちんと相手が避けられるように遅く振り下ろす。

 打つ手があるなら使ってくるか、逃げるならそれはそれでアリ。

 こちらも一旦、兄妹を外に連れ出すことができる。


 パン! と美女は手を打ち鳴らす。猫騙し?


「──幌金縄(・・・)!」


 ……は?


 突如、現れた黄金の蛇のようなものが私の体に纏わりつく。

 これは!?


緊縛呪(きんじょうじゅ)!」

「わっ……」


 美女の口から聞き取りにくい呪文のようなものが囁かれる。

 黄金の蛇、否。黄金の縄は、私にまとわりつくだけでなく、強く締めつけてくる。


「うぐっ!?」


 逃げ出す隙もなく、黄金の縄が私の体を強く締めつけてくる。

 苦しいぐらいに。

 私が使った時(・・・・・・)とは大きく異なる性能。

 そうだった。幌金縄(こうきんじょう)をきちんと使うには正しい呪文が必要なのだ。

 そして、孫悟空はその呪文を知らないまま、エピソードが終わった。

 即ち、ギフトで出せたところで、私も孫悟空も幌金縄の真価を発揮できない。

 それよりこいつのギフトは、まさか。


「口ほどにもなさそうねぇ、者行孫(しゃぎょうそん)? 変な名前だけれど、私も同じような名の者たちを使役できるわ」

「ミニたち! この女を捕まえなさい! 幌金縄を私に使っている間は、貴方たちには使えないわ!」

「「「ウキーッ!」」」


 既に出ている三体のミニ・マインが私の指示に従い、襲いかかる。


精細鬼(せいさいき)怜悧虫(れいりちゅう)


 だが、美女が繰り出したのは、どこか異形な、獣が混じった人のような存在。

 私がミニ・マインを出すような感じで小妖を召喚できるギフト?

 ジュリアンさんが黒犬を召喚したみたいなアレだ。


「「「ウキーッ!」」」


 現れた二体の半獣半人の小妖(・・)。しかし、その名には聞き覚えがある。

 それに幌金縄を使用した。

 間違いなく平頂山(へいちょうざん)エピソードに出てくる敵のギフト。


 平頂山とは……妖怪の兄弟、金角(きんかく)大王・銀角(ぎんかく)大王が出てくる舞台。

 西遊記を語る中で、牛魔王をさしおいて最も有名なかもしれない敵たちの話だ。


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― 新着の感想 ―
この縄・・・便利な様ですが孫行者相手だと単なる足どめにもならんのよね。マイン嬢相手だからある程度は有効だったみたいだけど。さて、後妻に化けてるだか憑いてる相手の正体はどんな妖(もしくは仙)なのか。
ヤバイ感じに!?敵を拘束する道具の正当な使用者! ウキーッ!の後のうきぃ!?は敵の困惑だったw…いつかウキー!のかけ声と功績がセットで歴史に残ったりして!、その前に、今はこの女を倒さないと!どうなるや…
おっと…スウェンさん舐めプしすぎた? 金角・銀角ってよくお世話になってる道具達の使用者だっけ
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