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私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠
第4章 破滅フラグは降妖伏魔

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108 エミリア

「お嬢様、おはようございます!」

「おはよう、ダグダさん」


 ギフトを駆使してエミリア嬢を追いかける! くらいのつもりだったんだけど。

 彼女は普通に街に出て挨拶をしていた。

 ズッコケそうになる私。

 領主娘なので、地元では有名で人気者のようだ。

 あ、そういう感じで外に出るのね。気を張っていた私はいったい。

 もう領民も慣れたものといった様子だ。よくあることなのだろう。


 ただ、彼女が外出する前に男爵家の動きは外に漏れていた。

 どうやら男爵家お抱えの騎士が入念に準備しているらしいとか。

 そういったことは以前にもあったのかと聞いたら、そこまではなかったそう。

 まぁ、山にお出かけするような子だったのだ。

 領地で、これまでは奔放に過ごしていたのかもしれない。


 ……考えてみたらエミリア嬢は学園で誘拐されそうになっている。

 そのことを誰にも相談しなかったなんてこともないだろう。

 話を聞けば親は心配になっただろうし。

 護衛を増やすことになるのも、むべなるかな。


 領民と言葉を交わすエミリア嬢を改めて遠目から観察する。

 ブラウンの瞳にダーティーブロンドの髪を大きめのオレンジ色のリボンで束ねている。

 赤髪だの、青髪だの、銀髪だのがいる世界観的にいえば、そこまで目立たない。

 以前見た彼女は、薬を嗅がされて拘束された状態だったため、印象が当然違う。

 ちゃんとした貴族令嬢だが、今日の服装はパンツスタイルでアウトドア寄りだ。

 黄色と赤色、青色、三つの彩色を取り入れた、かなり珍しい色合いの上着を着ている。

 ……山で視認されやすいようにかな? リボンの色もそうかも。

 違う世界でも遭難対策の色合いとかは意識されるみたいね。


 彼女はいったい地元の山に何をしに行くのかしら?

 虫が苦手な私は、あんまり山に憧れはない。

 そういうのが気にならないタイプとしたら、やっぱりフィナさんと気が合いそうだ。

 いえ、別にフィナさんの地元での振る舞いを知っているわけじゃないけど。


「じゃあ、私も服装を合わせましょうか」

「ウキ?」


 遠目に見つつ、私は人目のつかないところへ移動する。


「七十二変化、変われ!」


 村娘のスカートスタイルから、エミリア嬢に寄せた肌を見せないパンツスタイルへ。

 夏場なので布地は薄く涼しい感じに仕上げている。

 あとは水分補給と栄養補給の物資を背負い鞄に詰めて、しっかり閉じておいて、と。

 村娘スウェン、山歩きバージョンの完成だ。

 まぁ、私が山で遭難することはないのだが、そこはそれ。

 いざとなれば筋斗雲に乗って空から出られるからね。


 表通りに出ていくと、いかにも今、騒ぎを聞きつけたように振る舞う私。

 近くにいるおばちゃんに話しかけてみる。


「あれ、あの方。もしかして、話に聞いた男爵家の娘さんですか?」

「ん? ああ、そうだね」


 前日までの長めスカートを履いた村娘スタイルとは様子の違う私に、おばちゃんは少し驚く。


「山によく遊びに行くんでしたっけ?」

「そうだねぇ」

「あの方、男爵家の娘さんなのに山へは何をされに?」

「んー? 確か、珍しい薬草が採れるってんで、よく行っているんだって」

「珍しい薬草……?」


 それは初耳だ。


「エミリアお嬢様にしか見つけられないって噂だよ」


 そんなことあるの? まぁ、私が行っても見つけられなさそうだが。

 ふぅん。地元に珍しい薬草の生えている山が?

 なんの効能があるのかしら?

 あまり、その手の噂を王都でも聞いたことがないけど。


「薬草ってことは、どなたか身内の方に病気の方がいるんですか?」


 つまり、珍しい薬草を身内で消費していて、やむなく彼女が採取に行っているとか。


「いや? そういう話は聞かないねぇ」

「じゃあ、趣味で薬草採取に?」

「そうじゃないかい?」


 そうか。趣味か。趣味なら仕方ない。

 現代日本人は趣味と言われたら許容するのがマナーというものだ。

 今はもう現代日本人ではない私だが!


「ふぅん……。ご一緒したいって申し出たら受け入れてもらえるかしら?」

「あんたが?」

「ええ、ここには私も旅行に来ているんですけれど。ぜひ、話を聞いてみたいわ」


 私がそう言うと、おばちゃんは値踏みするように私を観察する。

 どうよ、今の私はちゃんと村娘スウェンちゃんじゃない?

 なお、肩に乗っているミニは透明状態だ。


「あんた、どっかの商家のお嬢さんかい?」

「ふふ、まぁ、そんなところです。何事も歩いて経験! が家訓でして」


 嘘だけど。移動は歩きではなく〝雲〟を少々(たしな)んでおりますわ。


「まぁ、無下にはされないと思うけどね。相手はお貴族様だってことは弁えておきなよ。男爵家だって私ら平民にとっては貴族には違いないんだ。そりゃあ、他の貴族よりは近しいとは思うけどね」

「はい、それはもう」


 というわけで、領民のおばちゃんにお墨付きをもらった私は、正攻法。

 正面突破でエミリア嬢に話しかけることにした。

 街から同行しておくのがベターである。


「すみません、エミリア様!」

「……!」


 領民に挨拶しながら山方面へ歩いているエミリア嬢に声をかける。

 護衛に騎士が一人、それなりに年上っぽい男性が同行しているようだ。

 ただ、声をかけた瞬間にエミリア嬢の間に入るとか、そういうことはしない。

 のんびりした様子で、本当にただの同行者のように私に顔を向けた。

 護衛としての練度が足りないのでは?


「私、スウェンと申します。今から山に行くと聞いたんですけど、よければ、ぜひ私も一緒に行けないかな、と。声をかけさせていただきました!」

「…………」


 流石にいきなりな声かけ過ぎたのか。

 エミリア嬢は固まってしまう。あら、アプローチ失敗?

 これは透明化ストーカー行動、待ったなし案件?


「貴方、その声……?」

「声?」


 想定外のリアクションに私の方が首を傾げてしまう。


「あれ……? ええと」

「エミリアお嬢様、どうしたんです?」


 領民たちもそうだが、護衛もエミリア嬢と親しい雰囲気だ。

 もしかしたら本当に領民全員が知り合いとか、そういうタイプかもしれない。

 そんな領地で、領主娘の襲撃を狙っている奴がいるとか。


「……それで。山に一緒に行きたいの?」

「はい! あ、もちろん、よければです! 私、いろいろと経験のために旅をしていまして」


 見ず知らずの他人からの突拍子もない申し出。流石に無理があったか。

 作戦行動、ドストレートは失敗か。


「……いいよ。一緒に行きましょう」

「え、本当に?」

「貴方が言い出したんじゃない」


 それはそう!

 意外にも快く受け入れてもらい、まんまとエミリア嬢の同行者になることができた。



「へぇ、それで薬草採取を?」

「ええ、そうなの。初めはいろいろと知りたいことがあって、何がどうとか気にしていなかったんだけどね。気になって調べたら、どうも珍しいものだったみたいで」


 エミリア嬢と同行するにあたって、世間話をいろいろと振ってみた。

 彼女は小さい頃から領地の散策に出ていたらしく、こうした山歩きもなんのそのな令嬢らしい。

 フィナさんといい、貴族令嬢とは? 地方出身の貴族令嬢ってけっこう奔放なタイプいるのね。

 王都に来ると皆がお淑やかな仮面を被るようになる。

 ……全体的にお前が言うな? お黙りなさい、ウッキィ!


「街でも聞きましたけど、どう珍しいでしょう? 色合いが綺麗とか?」

「ううん。単なる〝火傷なおし〟よ。火傷によく効く薬草なの。珍しいだけ」

「火傷なおし」


 火傷といえば火炎。火炎といえばラグナ卿? 無理があるか。


「それって山奥にあるんですか? 山頂にしか生えないとか」

「あはは、そんなことはないわ。山の中腹辺り、山道が続いていて、比較的斜面がなだらかな場所に生えているの。日当たりの関係でよく育つみたい」

「なるほど、日当たり」


 自然環境に左右されるみたいだけど。

 領地の特産とするほどじゃあないのかな?

 火傷なおしに効く薬草だけでは、少しニッチすぎるわね。


「大々的に収穫するわけじゃないけど。あると助かる人もいるからね」

「確かにそれはそうですね」


 それで趣味も兼ねて山歩きと薬草採取か。


「びっくりした?」

「え?」

「貴族らしくないから」

「まぁ、確かにそうですね」


 私が人のことを言えないからなんとも、とは言わない。


「でも、男爵家なんてそんなものよ。ほとんど市井の人たちと変わらないもの」

「そういうものなんですねぇ」


 私は中身の魂に庶民根性が染みついております。


「貴方、意外と話やすいね」

「意外とですか?」

「だって、すごく綺麗なんだもの。背も高いし」

「いやぁ、それほどでも……」


 変化で弄っているのは、基本的に髪色と服装だ。

 あんまり別人すぎる顔で長く過ごすと精神がやられそうだからね。

 本来の私を知る者もそういないだろうし。

 髪色・髪型・服装が変われば、他人はもうわからなくなるものよ。


「……。ねぇ、貴方、スウェンって名前だったわよね」

「はい! スウェン・ウーコンと言います!」

「珍しすぎる家名ね……」


 たぶん、この国にはない家名と思うわ!


「それでね、貴方ってもしかして──」


 場所は山をある程度、進んだところ。

 エミリア嬢が何かを言いかけたタイミングで。


「誰か! 助けてくれぇ!」

「……!」

「悲鳴……!?」


 どこからともなく、近場から悲鳴が上がった。

 私とエミリア嬢、護衛の男性の三人は互いの顔を見合わせる。


 師父、このような山で、あのような声を上げる者などおりませぬ。

 きっと、あれは妖魔の類ですから無視をしてしまいましょう。


「助けなきゃ!」


 ……とは言えないので、エミリア嬢はとても良心的な判断を下した。

 でも、猪突猛進で突っ込んでいこうとしないのはエラい!

 フィナさんだったら言った瞬間にダッシュし始めていたわ!


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― 新着の感想 ―
声・・・ある意味案の定というか、お約束ネタですかな?因みに西遊記でも悟空さも変化に失敗する描写があります。彼らの変化にはお約束毎があって元々持っている「相」というモノは自力では隠し通すのが無理っぽい…
ああ、火傷について、同じ感想を持った方がいて安心しました。  当人が火傷していないから、発想がラグナ卿に結び付いちゃったけれども、推定原作を考えれば、そっちな気がしますよね。
声で以前の人だとバレてる予感…。そして、助けを求めているのは誘拐犯!?どんな事件になるのやらw 火傷に効く…推定原作で、カーマイン様は火傷してたけど、地味に関係ありそう?
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