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11月22日(金)

 どうして、土曜日祝日は振り替え休日がないんだろうか。

 私はスケジュール帳をじっと見つめ、のちにため息をついた。


 合法的に休みたい。

 有休とか使うのではなく、こう、全体的に休みだから休みです、となってほしい。

 もちろん、私にとっての休日に働いている人たちはたくさんいるし、ありがたいと思っている。だが、我が社が土日祝日が休みだという規定である以上、堂々と休める日が増えていただきたい。


 何がどうかといえば、明日23日は勤労感謝の日であり、本当ならば祝日で堂々と休める日であるにも拘わらず、たまたま土曜日だったという事である。


 休みたいなら休めばいい、と言われるかもしれない。私でもそう思う。

 しかし、そうじゃない。

 休みたいから休むのではなく、休みだから休むという状態に意味があるのだ。

 仕事が嫌な訳じゃない。いや、時々嫌なこともあるけれど。


 そんなどうでもいいことを考えていると、着信があった。

 桂木 圭(かつらぎ けい)だ。

 ひょんなことから知り合い、彼に関わると非日常体験をするようになった。

 私が「厄付(やくづき)」という、圭の力の原動力である厄を引き寄せる体質であるからだ。

 そういえば、最近はめっきり燃料係としての声をかけてこないな、とは思っていた。時折、思い出したように何気ないメッセージが送られてきたことはあったけれど。


「もしもし」


 電話に出ると、いつもの声で「よ、おっさん」と声がかかった。


「明日、一緒に来てほしいんだけど」

「急だね」

「急に決まったから。結構歩くことになると思うから、動きやすい恰好と靴で来て」

「また、山とか……?」


 先月の事を思い出し、恐る恐る尋ねる。

 なんやかんやあって、表向きはキャンプを行った事を思い出した。

 色んな体験やドキドキした出来事やら、とにかく体力と気力をごっそりと持って行かれてしまったキャンプだった。

 後で思い返せば、まあ、面白かったというか、楽しかったというか、ご飯がおいしかったというか。


「山じゃないけど、何て言ったらいいんだっけ……スタンプラリーとか、そういうのに近い」

「スタンプラリーって、一体どこで」

「街中で」

「いや、そうじゃなくて。また、遠くに行くのかい?」

「遠くじゃないな。おっさんの家から電車で10分くらいの所。明日は片桐(かたぎり)じゃなくて、おっさんの家の最寄駅で待ち合わせね」


 圭の勤務先である「浄華(じょうか)」の専属ドライバー、片桐さんの運転にはあやかれないらしい。先月の表向きキャンプで、ちょっと仲良くなれたと思っていたので、会えない事が少し残念だ。


「駅か。珍しいね」

「まあね、でも仕方がないことだから。ってことで、朝9時に駅で」


 よろしく、と言って、圭は電話を切った。

 相変わらず、唐突に電話をしてきて、物事を頼んで、用事が終わったら世間話をすることなく通話を終える。


「動きやすい服と靴か」


 通話終了から待ち受け画面に戻ったスマホを見つめ、私は自然と顔を綻ばせるのだった。

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