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ふたりで騎士をやめたら  作者: 智慧砂猫
第二章

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EP32.『隠れた能力』

 オーラの関連書籍はそれなりに読んだが、最も正確に書かれているのが、今開いている書籍に他ならない。多くの人間が知らないオーラの知識を一冊にまとめられた本ならば、必ず答えがあるはずだとジョナサンは信じた。


 そして、数分後に、紛れもないオーラ消失に関する記述を見つけた。


「うん、記憶は正しかったな。此処を読んでみて、アダムスカくん」


「あ、はいっ。えっと────え?」


 オーラを消滅させるのは、難しい事ではない。魔力に作用する紅いオーラという極めて稀な事例が存在するように、逆もまた然りである。オーラに作用する極めて希少性の高いオーラが存在しているのだ。


「ははっ。魔力ではなかったようだが、程々に当たったかな」


「それでもすごいですよ、魔塔主様。……しかし特殊なオーラとは?」


 ニコールも覗き込んで続きを確かめる。記述の続きは、希少性の高いオーラを所有する人間のパターンと、そのオーラ・カラーリングについてだ。


 あらゆるオーラは人間の精神の具現と言われており、自らに使命を強く感じて生きた人間は赤く。あらゆる状況に陥っても心が微動だにしない人間は青く。深い悲しみや絶望に突き落とされた者は黒く。清らかな心の持ち主であれば白く。


 そして何より、淀んだ世界に絶望せず、高潔と自己犠牲を厭わない精神を伴い続ける者だけが辿り着ける境地。────それが、白銀のオーラである。


「……ですって、ニコール。あなたのって白じゃなくて白銀ですよね」


「うん。え、というか白と白銀ってオーラの種類違ったんだ?」


「確かに、なんだか普通の白よりもキラキラ輝いてますよ、いつも」


 そうだったんだ、とニコールが口に手を当てて意外そうにする。品行方正に生きていれば勝手に発現するようなタイプのオーラだと、気にも留めて来なかった。


「それで、ニコールのオーラは、どんな能力を持ってるんですか?」


「オーラを殺す、と書いてある」


「殺す。消すではなくて、殺すなんですか」


 アダムスカが不満げな顔をするも、ジョナサンも分からないと頬を指で掻く。


「此処にある記述だけならね。元々のオーラの成り立ちからして、精神が大きく影響するのは、誰もが知っている事だ。この本に書いてある事も、まさにそれに関わる入内な問題であって……オーラを殺す、と表現するのにも理由があるんだよ」


 なぜ物騒な表現になるのか。オーラに作用できる白銀のオーラが他者のオーラに対して消失現象を引き起こす方法が、あまりにも残酷であるからだ。


 手順はそう難しくない。オーラを纏った刃物で胸を一突きするだけ。何も殺す必要はないが、かといって手段としては死ぬ可能性が非常に高い。


 身体能力の飛躍的な上昇についてオーラが影響する以上、失ってしまえば、これまでは生き永らえてきた傷も致命傷になり得る。よって現実的な手段とは言えない。命懸けでも構わないというのなら、それも一つの選択肢ではあるだろう。


「……やはり魔力がオーラに作用する方法を研究するかい?」


「私はその方が安全だと思います。アダムは────」


「アタシも流石に研究に賛成ですね。ちょっとリスクが高すぎる気が」


 一突きと書いているのが、針でも良いなら楽なものだ。だが残念ながら、オーラを纏った『刃物』である事が前提にある以上、それは不可能だと分かる。特に優れたオーラ使いであるニコールとアダムスカには、前提条件としてオーラを纏って攻撃する事は、相手の命を奪うに等しい行為であると理解できる。


「おそらく私のオーラは、多種多様なオーラ使いに対する対抗策。いわば悪人を裁く機構のようなものなのでしょう。だから、私は対オーラ使いに特化していると考えていいはず。これまでは自分の持つオーラの能力なんて使えなかったので、身体能力に特化しているだけのものとばかり……あ、そうか。だから負けたのか」


 今まで剣を振るった記憶を振り返ってみると、ニコールは自分よりも弱い相手か、あるいは強者とされる相手は全てオーラ使いであった。アイデンの特異な戦い方を見抜けず、あまつさえ苦戦したのは、彼が純粋な実力と謀略を重ねていたからだ。オーラに敏感であればあるほど、暗がりの戦いはニコールには不利だった。


「ふふ、君たちも随分と苦労しているようだね。では頼み通り、魔法の研究に励むとしよう。だが、オーラの強度を考えれば相応の人材が必要だね」


 うーん、とジョナサンは考え込む。自分も大魔法使いとまで呼ばれるほどには成ったが、かといって才能自体はとびぬけたものでもない。彼女たちに準ずる、あるいは超えた才能を持つ人材が必要になるだろう、と。


「ひとり、今回の研究について頼りにできそうな子がいるんだが、今は訳アリで魔塔にいなくてね。呼び戻すまで時間が掛かるから、しばらくはこの島か、もしくは港町に戻って過ごしてくれて構わないよ」


「では、我々は船の迎えもありますから、ひとまず戻ります」


 せっかくなら魔塔も見ていきたかったが、研究熱心な魔法使いたちの邪魔になってしまったら申し訳ない、とニコールたちはひとまず戻る決断をする。


 ジョナサンが、小さな紙にメモを記して渡した。


「三日後の午前十時頃に、また島を訪ねておいで。それまでの間、私の方でも色々と調べてみるから。安心しなさい、命に係わる事は確実に成し遂げてみせるよ」

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