トライカー編13 刹那トラッカー!
もぐもぐ。
ガルデニアがたこ焼きを頬張り、目を細める。
「んく、んふーー!おいしーですなー!」
にこにこと笑顔で次のたこ焼きに手を伸ばす。
「あなた」の視線は、マチコに向かう。
「そー見つめられたら照れるって。」
冗談めかして手を振り、マチコは笑う。
A、「次にマチコと戦うんだ。観察くらいするよ。」そう、トライカー地区大会決勝の相手はマチコとなる。彼女に手ほどきを受けたとはいえ、お互いの戦術などは過去の戦いの記録、動画から研究している。
A、─「んまー、確かにナインの研究に来たってのはあるぜ。」マチコは手の中のスマートフォンを撫でる。恐らく撮影しているのだろう。
「来歴不明、戦歴不明、調べたが「あんた」とガルデニアはどこの国にも所属していないし、AADAやそれ以外の防衛機構、そのどこにも出生記録と現在までの記録が無ェ。まさにぽっと出だ。無から産まれたのか?」
そして彼女の指先は、「あなた」のランサーホルスターを示す。
「別の国の軍人って言ってたが、それも嘘だ。そんな装備は何処の国にも無ェ、」
次に「あなた」のトライカーを。
「の割にゃ、トライカーの知識や経験が無ェのに戦闘センスは抜群だ。そんでよ。」
チャキ。
マチコがスマートフォンに見せかけた銃を構える。
「もうAADAが包囲した。準々決勝で「お前」がガルデニアに言った言葉は、唇の動きで解析済みだ。」
異星文明人と、地球人類に握手をさせる─大会がAADA主催で行われているのだから、連勝を続ける「あなた」はマークされて当然だ。
ぱくぱく。
ガルデニアがたこ焼きを食べ続ける。
「大事な夫が銃を突きつけられてるのに飯を食うたァ、大した度胸じゃねェか。軍人ってのは嘘じゃ無ェらしいな。」
「んー♪」
ガルデニアが、口の中で何かをコロコロと転がす。
「さっきから何を口に入れてやがんだ?」
ガルデニアが、にんまりと笑う。
「ちょっと、見せてくんねェか?」
ゆっくりと、ガルデニアは口を開ける。
ぼと、ぼとぼたっ。
少女の口の中には収まり切らないほどの、銃器と、恐らくはロミネンシアの操縦桿、血まみれで肉組織が剥き出しの人差し指が、無数に落ちた。
「…ッ!」
思えばエリアのリーダーなのだから、マチコもAADAで訓練を受ける軍属なのだろう。
A、「良い反応速度だ。」
「あなた」は指先でマチコのスマートフォンを弾き、たん。細い鉄芯が落ちる衝撃と共に発射された。ぴす、壁に突き刺さる。
A、─「何だ、お前ら何なんだ!」壁を背にして跳ね飛んだマチコは、絶叫する!
「あなた」は落ちたスマートフォンを拾い上げる。まだこの録画に見せかけた通信は、指揮所などに通じているのだろう。
A、「ただの騎士だ。」そう告げる。ただ文明と技術レベルに違いがあるだけ。「ナインのお嫁さんだよー。」ガルデニアがくるくると回り、一礼をする。
す。
マチコへスマートフォンの画面を向ける。
A、─「な、何が目的だ!なぜ異星文明と地球人類に握手をさせようなんて言う!」
それは当然だ。
AADAが複数の部隊を展開しこのアパートメントを包囲していたのは、ガルデニアの口から零れ落ちた、溢れ出した無数の人差し指の量からも見て取れる。
B、「個人的な理由だ。」滅ぼしてもいいし、異星文明と絶滅戦争を行なってもらっても構わない。それが関係の無い常人の反応だろう。
だが、
ただ崩れてゆく砂の山を、それでも水と練り合わせ、形を保って欲しいと願って、手で押し固める。
個人的な、理由。
「わたしも、ナインとおんなじですなー。」
ザザ。
マチコのスマートフォンから、音がする。
B、─「君たちの、なぜトライカーの試合に出るのか、その理由が知りたい。一瞬で部隊を行動不能にするだけの能力があるのだから、出る必要も無いだろう。」
恐らくは司令官。
合理性を求めるその質問には、この溢れる衝動をどう伝えれば良いか、
とんとん。
ガルデニアに肩をつつかれる。
振り向く、
「る、る、るるらららー♪」
ガルデニアの口から、音が、リズムが溢れ出す。
これはかつて、エルヴィエルナで潜次元戦艦リコペルシカの建造時に作者おおとろべふこが、太陽系第三惑星人とクルルガンナ星人に歌わせた、合唱。
頷いて、口ずさむ。
言葉に出来ない想いなら、歌に乗せればいい。
C、「ゆけ、ゆけ、」
ガルデニアと声を揃える。
「刹那トラッカー!」




