トライカー編④ぬいぐるみ
「んー、こーゆー感じの兵器を、かってに作ってた都市がありましてなー。」
ガルデニアは、塗装済みフィギュアの棚に陳列された、ホラー系作品のクリーチャーの入った箱を見ながら言う。
「お、おう。」
マチコは、ガルデニアの子どもっぽい喋り方と、その内容のあまりにもの落差に飲み込まれてしまっている。
「その都市管理者は相当なつわものでしたが、ナインが見事両腕を切り落として、捕縛したのですなー。」
「きりおと…そ、それで、その兵器は…?」
ガルデニアは、「あなた」の首に腕を回して抱き着く。
「ナインとわたしが引き取って子どもにしたのですなー。」
「うぉ…。」
マチコは「あなた」の手にある買い物カゴをちらりと見て、
「ああ、その年式にしたんだな。外装は既製品でもいいし、こだわるなら自分で練り上げてもいい。」
そしてまた、ガルデニアと「あなた」が普段どんな暮らしをしているかの話題に移った。
外装。
トライカーは主にユキの搭乗したような、シャープなデザインが多い。
「あなた」は選択した年式、つまりトライカーの基本的な戦術を騎乗するUltraSuperGiganticと同じ、跳躍型にした。そのため、外装は空力抵抗なども考える必要が出る、がまずは重心バランスの調整だ。ウサギとのギャップを減らすほど、思い通りに動かせるはずだ。見た目にこだわる余裕は無い。
既製品の外装パッケージを、これも他パーツと同じく複数手に取り、カゴに入れる。
これは戦闘挙動時の不用意な事故でトライカーが爆散した時の、スペアパーツとして。
「ナイン、私はこちらの軽量パーツを選択します。」
胸元ポケットのスマートフォン、アロエもトライカーに興味を持ち、潜次元戦艦リコペルシカへのフィードバック送信との名目で、アロエの分も買うことになった。
向こうの世界ではアロエにもひとの姿が与えられた。彼女なりに訓練も受けているとの事なので、トライカーの運用にも興味が沸いたのだろう。
「決まりましたかなー?」
ガルデニアの声の方を向くと、恐竜のぬいぐるみを抱えていた。
「きょーりゅーじゃありませんぞー、わたしとリピニィエーラは、ハゴロモオトヒメリュウですなー。」
「そんな生き物は地球にいねーから、恐竜のぬいぐるみだな。」
マチコは首長竜のぬいぐるみを撫でた。どうやら慣れたらしい。
レジで会計を行うと、
「こちらをどうぞ。」
店員さんから、コスプレイベントのチラシをもらった。近いうちに近くであるらしい。
「ほー、ふーむ。」
ガルデニアが覗き込む。
「ナインはいつもの騎士制服で出れば大人気ですなー。」
「いや、どう見てもガルデニアはそのままコスプレした外国人にしか見えねーって。」
マチコはガルデニアのブーツを指差す。
「特にこれだな、最初はびっくりしたけど、動いてる所見るとキマってるぜ。」
指摘されたガルデニアは、かかとから首筋までのラインを強調するかのようなポーズを取る。
「これはアネモネお姉ちゃんが、よくない大人たちからわたしたちを遠ざける時に、連れて行かれる時のお誘いのポーズですなー。」
「あなた」は、思わずガルデニアを抱きしめようとする。が、止める。名も無き街で生まれ育った彼女たちは、そうする事でしか生きられなかったのだ。安易な同情をするより、ガルデニアの姉たちの行動に敬意を払うべきだ。
「うぉぉー!ガルデニアー!」
マチコが「あなた」の代わりに、抱き着いた。
「もー、最初の頃のナインみたいですなー。」
ガルデニアはあやすようにマチコの頭を撫でて、「あなた」の顔を見る。
「ふふ、ナインには2人っきりの時にいっぱい甘えちゃいますからな、覚悟しておいてほしいですぞー。」
「う、うお…子持ち人妻ムーブ!」
マチコは驚愕した。
トライカー編④ぬいぐるみ




