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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第5章 魔王再臨と送還魔術

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第156話 爆弾魔は一つの提案をする

「今更だけれど、協力してくれるかしら」


 アリスがじっと俺を見て言う。

 俺は迷いなく頷いた。


「もちろん手伝うさ。そのために俺達は一緒に行動してきたんだからな」


「ありがとう。とても嬉しいわ」


 アリスは可憐に微笑む。

 こうして見ると、クールな美人だ。

 まあ、実際は誰よりも狂っている。

 自身の能力と経験を継承して、複数の人生をやり直しながら世界を滅ぼそうとしているのだ。

 正気でやり遂げられる行為ではないだろう。


 俺は胸ポケットを探る。

 煙草を持ってきていないことに気付き、仕方なく手を下ろした。


「俺のスキルで世界核とやら爆弾にするのは分かったが、実際にそれは可能なのかい?」


「そこは心配しないで。既に設計図も完成間近よ。準備期間と材料集めが必要だけれど、理論上は可能ね」


 アリスは背後のホワイトボードもどきに図や文章を走り書きする。

 ただ、難解すぎる。

 俺がこの半年で身に付けた知識では、とても理解できないレベルだった。

 内容の一割も分からない。


 テンションが上がっているせいで、アリスはこちらの理解度を考慮できていないようだ。

 いつもの彼女なら、内容を噛み砕いてくれたに違いない。

 それだけ喜ばしい事態なのだろう。

 こんな風に舞い上がっているアリスも珍しい。


 次々と謎の理論を書き込んでいくアリスを前に、俺はわざとらしく咳払いする。

 彼女は五回目で手を止めてこちらを振り向いた。


「世界滅亡には手を貸すが、その代わりに約束してほしいことがある」


「何かしら」


「滅ぼすのは、俺が元の世界へ帰ってからだ。それまでは待ってくれ」


 これは絶対条件だ。

 世界滅亡の巻き添えを食らうのは遠慮したい。

 さすがに高レベル補正があっても関係ないだろう。

 問答無用で死ぬ気がする。


 俺の提案に、アリスは首肯する。


「いいわ。私もジャックさんを殺したくないもの」


「サンキュー、助かるぜ」


 おそらく無いとは思うが、アリスが逸って勝手に世界を滅亡させる可能性がある。

 彼女にとっては長年に渡って目指していた悲願だ。

 こうして環境が揃ったことで、ようやく目途が立った。

 冷静さを失ってしまう恐れも考えられる。


 俺がきちんと見張っておかねば。

 できれば最後まで仲良くしたいが、暴走するようなら殺害しなくてはならない。

 それに関して躊躇いは無い。

 殺すには惜しい人材だが、結果的に俺が死ぬ行動を取るのなら始末するまでだ。


 結局、俺とアリスと手を組んでいるのは、互いの利害が一致しているからであった。

 善意なんてものは存在しない。

 あくまでもビジネスライクな関係である。

 少しでも事情がずれれば、たちまち殺し合っても何らおかしくない。

 そこを忘れてはいけない。


(しかし、世界滅亡の手伝いか。改めて考えると、とんでもない悪行だな)


 俺は苦笑する。

 犯罪どころの騒ぎではない。

 どこかのコミックに出てくる悪党が考えるような計画だった。

 壮大な上に派手だ。

 ともすればチープな感じさえする。

 端的に言って、現実味が薄かった。


(……ふむ。コミックに出てくる悪党、か)


 俺はそのワードを頭の中で反芻する。

 そして、とあることを閃いた。

 降って湧いたそのアイデアを確立するため、俺は相棒に話しかける。


「なあ、アリス」


「何?」


「送還魔術の進捗はどうだ?」


 アリスは少し難しい顔で述べる。


「術式自体はほぼ完成しているけれど、起動のための魔力が不足しているわ。都市核を何百と用意しても足りないと思う。あと術に耐えられるだけの触媒も必要ね」


「そんなに大変なのか。召喚魔術はもっと手軽そうだったが……」


 しかもあの時は俺を含めた七人が召喚された。

 今回は俺一人でいい。

 労力は減りそうなものだと思うが、どうやらそうもいかないようだ。


「召喚と送還では、工程がまったく違うのよ。実物の術式を見ていないから断言はできないけれど、ジャックさんを召喚した魔術は不特定の次元から不特定の人間を呼び寄せているわ」


「じゃあ、送還はどうなんだい」


「特定の人間を特定の次元に戻しているわね」


「なるほど、確かに送還の方が大変そうなイメージだ」


 無作為に選んだ七人を呼び出すより、任意の一人を決まった場所に送り届ける方が難しい。

 アリスの説明はそういうことだ。

 仕組みとしては分かりやすい。

 メカニズムに関しては専門外だが、アリスが言うのだから大きく間違っていることはないだろう。


「それがどうかしたの?」


「いや、ちょいとユニークなアイデアを閃いてね」


 アリスから問われた俺は微笑む。

 そして先ほど閃いたばかりの考えを告げた。


「世界核の爆発エネルギーで元の世界に戻る、というのはどうだろう。互いの目的を一気にクリアできるはずだ」

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