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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第5章 魔王再臨と送還魔術

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155/200

第155話 爆弾魔は相棒の提案に魅せられる

 俺とアリスは私室を移動し、盗聴防止の細工が施された部屋を訪れた。

 室内には僅かな事務用品しかない。

 基本的には使用禁止で、よほどの密談をする際にしか使われないためである。


「念のために仕込んでおくわ」


「任せたよ」


 部屋に到着した途端、アリスが何重もの結界を張り始める。

 薄いフィルム上の結界が、室内を完璧に囲っていた。

 元の細工に加えて、アリスまでもが魔術で盗聴を防いだ。

 控えめに言っても、かなり厳重な準備だろう。

 今から二人で話す内容は、第三者には絶対に聞かせられないということだ。


 アリスが胸中に抱えていた悲願――世界滅亡に関するのだから、妥当な処置だと思う。

 彼女はホワイトボードもどきの前に立った。

 俺はその向かい側に並んだ席の一つに座る。


「順を追って図説していくわ。分からなかったら教えて」


「了解だ、先生」


 俺は少しおどけた口調で応じる。

 懐かしい感覚だ。

 学生時代を思い出す。

 あの頃は半ズボンを穿いていたし、髭もまだ生えていなかった。

 チャイムと同時に校庭へ飛び出したものだ。


 まあ、当時はそこまで物騒な内容ではなかったが。

 授業では世界滅亡の方法なんて教わらなかった。

 我ながら危険な人生を渡り歩いていると思う。


 俺がノスタルジックな思考に浸っていると、アリスはいつもの調子で話を切り出した。


「まず結論から述べると、この世界の中枢機能を担う存在――世界核を破壊することにしたわ。別の案も考えたけれど、この方法が一番確実みたい」


「ハハッ、いきなりぶっ飛んでやがるな。マジでやるつもりかい?」


「まじ、よ」


 思わず笑う俺に、アリスは淡々と反応する。

 冗談は通じない雰囲気である。

 ちゃんと話を聞いた方が良さそうだ。


 それにしても世界核とは、初めて聞いたワードだった。

 詳細は知らないものの、その響きでおおよその意味は分かる。

 すなわち世界の心臓ということだろう。

 都市核とはわけが違う。

 この世界には、そういった代物が存在するらしい。


「世界核の破壊は、基本的には不可能なの。正確な座標も分からない上に、破壊方法も不明だから。前提条件として、この二つの問題を突破しないと話にならないわ」


「それが判明したというわけか」


「ええ、そうよ。座標の特定にはかなりの時間がかかったわ。今朝、ようやく割り出せたところなの。確認作業も済んでいるわ」


「執念だな。リスペクトするよ」


 目の下にうっすらとクマを浮かべたアリスに、俺は軽く拍手をする。

 エウレア関連の仕事の合間で、彼女は研究に没頭していたようだ。

 研究自体は知っていたが、まさかここまでの進捗具合だとは思わなかった。

 本気で世界を滅ぼすつもりだからできることだろう。

 彼女なら、きっと躊躇いなく成し遂げる。

 何かと忘れがちだが、アリスは芯の通った狂気を持ち合わせている。


「世界核の場所の特定。それができたのは分かった。だが、どうやって破壊するんだ。そこが肝心だろう」


 俺は脳内の情報を整理しながら質問する。


 世界核などと言うくらいだから、そう簡単には壊れないはずだ。

 そうでなければ、とっくに世界は滅んでいる。


 かと言って、アリスが見栄を張って嘘をつくこともない。

 彼女は常に正直だ。

 下手な誤魔化しはせず、ただ真実だけを口にする。

 そんな彼女が破壊方法を見つけたと言ったのだ。

 おそらくは高確率で成功するものと思われる。


 質問を受けたアリスは、おもむろに指を差す。

 彼女の示す先には、俺が座っていた。


「そこであなたの出番よ、ジャックさん」


「おっと、まさか……」


 話の流れで察する。

 ここで分からないほど鈍くはない。

 俺の出番と言われれば、やることなど一つしかなかった。

 答えを聞く前からなんとなく確信してしまう。


 案の定、アリスはこくりと頷いた。


「そのまさかね。あなたのスキルを使って、世界核を爆弾にしてしまえばいいのよ。そして起爆する」


「世界を爆弾にして、起爆……」


 ドクン、と鼓動が高鳴る。

 呼吸が浅くなり、自然と口角が吊り上がっていく。

 喉奥から笑い声も洩れていた。


 自ら口にした言葉に魅力を感じてしまったのだ。

 気分はひどく高揚し、まるで酩酊しているかのような感覚に陥っていた。

 それも悪くない気分だった。

 ともすれば小躍りしたくなる。


 世界そのものを起爆。

 それはとんでもない偉業だ。

 誰にも到底真似できない。

 爆弾魔を名乗る者として、これほど名誉なことはないだろう。


 思考が警鐘を鳴らしている。

 しかし、これは理性で考えるべき問題ではない。

 本能的な欲求だ。

 ダイレクトに刺激されては、ちっぽけな理性で抗えるはずもない。


 ――アリスの大胆な提案を前に、俺は断る道理を持たなかった。

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