番外編ライジット将軍の事情。
私は王弟だ、沢山の兄弟の中で同母の陛下と仲が良かった。兄である陛下が即位する前に王位争いが起き、沢山の血が流れた。
「ライジット!私はもう、こんな思いはしたくは無い!」
「分かっています。兄上!」
「…すまないライジットには、辛い思いをさせる。」
「いいえ!兄上!国を守る為に必要な事です。」
兄上にもう一度あの時の、苦しみを与えたくない。今の皇太子が成人する迄、跡取りを作る事は出来ない!
しかし、あれから十五年権力が欲しい周りの貴族達が妻を貰えと、五月蝿くなったきた。国内に力を及ぼさない、妻が必要になり探した。
「ライジット隣国の王女はどうだ?」
「周りの押さえになりますね。兄上話しを、進めてください。」
初めは隣の国の王女に、決めようとしたが思い人が居ると王に断られた。他の貴族令嬢はどうだろうか?兄上に書簡が隣国から届いた。
しばらくすると、私から見れば不思議な条件付きの婚姻が見つかった。だだ一つ、甥と一緒に暮らしたい。後は、どんな条件も呑むと書いてある。
数日後、同じ伯爵家から王弟殿下の妻に相応しいのは、双子の妹である私しかいないでしよう。と色々自分に都合の良い言い分を押し付ける書簡がきたのだ。
「こちらの令嬢を妻に迎えたいと思います。」
「その娘でいいのか?こちらは美しいぞ。」
「高慢な娘は王家に不和を呼びます。争いごとは避けたいですので。」
こんな自分勝ってな事を言う女に、碌な者は居ないので無視する事に決めた。
都合が良かった私は、不思議な条件を出した令嬢を娶る事にし、陛下にこの婚姻に了承する書面をしたためた。
相手から返事が届き、一月後に迎えに行くことなった。豪華な馬車と護衛兵を連れて。
隣国ではあるが小さい国なので、多少の無理は聞かせられる為、今度妻になる少女に訳を聞いた。痛ましい話しだった、その時凛として話す娘を、心から守ってあげたい気持ちが芽生えた。
「王弟殿下、ありがとうございます。真実を白日に晒す事が出来ました。」
すっきりした顔をしている。荷が下りたのだろう。
「気にすることはない、穏やかな暮らしを約束しよう。」
屋敷に暮らすようになっても、何一つ文句も願い事を言う事もなく静かにしている。ただ、甥にだけは厳しく勉強を教えている。
「ここまで、書いて覚えてね。アークなら出来るわ。」
「うあ、難しいよミリー。」
「大丈夫、百歩の道も一歩からよ。」
「はーい」
「終わったらおやつよ。」
いつか子供が生まれたら、今見たいな穏やかな暮らしをしているのだろうか?
久し振りに夜会に出ることにした。ミリアリアを連れて挨拶周りして、用事の
出来た私は、少しの間ミリアリアの側を離れた。
「貴女がライジット殿下の妻なのね。殿下には相応しくないわ!」
昔、私が愛していた人が彼女に酷い言葉を言っていた。
「はい、私もそう思います。」
「…認めるのは何故?」
「貴女は、グラエス侯爵夫人ですね。聞いております、殿下の思い人であったと。」
「そうよ!愛していたわ!でも、妻には慣れなかったわ!」
「グラエス侯爵夫人は殿下に愛されていたのですね、心から」
そう、あの時は仕方なかった。
「どうしてなの?…どうして貴女にわかるの!」
そうだ!誰にも言った事はない。何故わかる。
「殿下は兄上である陛下を守りたいのです。王位争いを避ける為、結婚することも跡取りを望む事も、許され無かったのだとおもいます。」
どうして彼女はそんな事が分かるのだ!
「そんな…嘘だわ!」
シャーラの身体が震えている。泣いているのか。
「いいえ、嘘ではありません。嫁ぐ前この国の歴史を学びました。貴女を守る為に付き放したのだとわかります。」
「…私は、何も知らなかったわ。」
「秘かに貴女を思っていた親友の侯爵に、貴女を託したのです。幸せにして欲しいと。殿下の事を知っている人達は、貴女の事も心配していましたよ。」
「…ライジット殿下が私のために?ジークに頼んだの?」
一番信用できる人に貴女を託した。
「今まで、一人だった殿下を見れば答えは分かるはず、グラエス侯爵夫人幸せですか?」
「…そうね、幸せよ。これから最も幸せになるわ。ありがとう」
私はテラスの陰で聞いていた。そこ迄気持ちを分かってくれてるとは思わなかった。心に有ったわだかまり解けるようだ。私も彼女と共に幸せになろう。