片割れの黄金比-6
誠司は俺を背に隠すと、強い口調でリンネに凄んだ。
「嫌がっているじゃないか!」
「気のせいだろう?」
リンネが誠司の襟を掴み、誠司がその腕を払う。
「彼女、泣かせないでくれるかな」
「悪いが今は取り込み中でね」
「おい、待て。どちらも手は出すなよ。血は見たくないからな」
俺が真っ当な娘であれば、窮地を救う王子様の出現に運命を感じてしまうような局面だろう。
しかし、乙女をかどわかす悪も乙女も俺だと思うと、誠司の示した勇気に謝罪したい。
だが当の誠司は「心配しないで」とキラリと輝くような瞳で目配せをよこし、リンネは「相手にならん」と、鼻に皺を寄せている。
「誠司、助けに入ってくれてありがとう。だが、もう大丈夫だ」
罪悪感からか無意識にニコリと微笑んでいた。随分と女が板についてきたな。と自分でも思う。俺のこの笑顔にほだされ沸いていたリンネの頭も、誠司のおかけで少しは冷えただろう。
「本当に?ひどい事されてない?」
酷い事はされたが、真剣に俺を心配する様子の誠司に、それを説明するとややこしくなりそうだ。
不本意ではあるが「ああ、問題ない」と答え、猛獣を躾けるようにリンネを睨んだ。
「誠司は俺の大切な友だ。傷を負わせるような真似はするなよ」
「フン!全く人間の分際で不愉快だな」
苛ついたリンネの言葉で、誠司に緊張が走ったのが背中越しにも伝わってくる。
「人間って……」
……新たな誤解が増えては困る。
「リンネは悪魔だが追っ手では――」
ずい、と誠司の前に半身を構えてみたが、誠司の力強い腕に遮られてしまう。
「リュウトは渡さない!」
「ほう、騎士気取りか?まったく人間風情になめられたものだな」
誠司の正義感には感動すら覚えるが相手が悪い。男の俺であるリンネに誠司が勝てるとはまるで思えない。
リンネは「ハンデをやろう」と両手を背に回し、邪悪な笑みさえ浮かべているのだ。
「俺の話を聞けって!」
緊張した表情で「僕に任せて逃げて」と、握りこぶしを作る誠司の硬い腕を両手で抱える。「落ち着け」そう一瞥をくれ、リンネに「お前もだ」と念を押し、なんとか二人の間に割って入った。
「誠司、リンネは魔界の者だが敵ではないんだ」
「本当に?」
疑うような視線に「ああ」とまっすぐ返した。本当のところリンネの存在はあやふやだが、ここで否定するわけにはいかなかった。
ふっと息をつくように笑ったのはリンネだ。
「愚かな誤解をしたようだが、その小さな脳で理解ができたのなら恥を上塗りする前に消えるが良い」
そして、リンネは、己の所有物であるかのように俺の肩を抱き、せせら笑って見せたのだ。
触れないと誓ったあの言葉はなんだったのか!
「誠司は俺の大切な友だと伝えたはずだ。態度を改めろ」
「フン、騙されるなよ?下等な生き物だ、美しいお前と、繁殖する事ばかり考えているに違いない」
それはお前の方だろう。と、喉元まで出かかったが、嘲笑するリンネに、温厚な誠司が怒りに目を血走らせたので慌てて、腕から抜け出し、リンネの胸を押さえ誠司の腕を取り二人の距離をとる。
「誠司すまない、気を悪くさせたな。リンネの代わりに詫びさせてくれ」
「リュウトが謝る事なんてないよ」
「いや」と首を振る。リンネは俺だ。そして俺はリンネから謙虚になる事を学んだのだ。己の傲慢で思い上がった姿をこれ以上、晒すのは耐え難い。
「おい。ずいぶんとその人間の肩を持つじゃないか?まさか、お前の男という分けではないだろうな」
「あのなぁ……」
溜息しか出てこなかった。なんて短絡的で馬鹿なんだ。
そして、お前達の瞳には美しく愛しいリュウトが映っているかもしれないが、俺の目線では、この場に男しか居ない。
「有難う、リュウト。僕は別に何とも思ってないよ。ただ、ずいぶん自意識過剰なんだなって、呆れているけど」
「なんだと!」
リンネに胸倉を掴まれても誠司は怯まない。その豪胆な態度には感心するが、いささか無鉄砲がすぎる。
「僕は、思ったままを言っただけ」
「ああ、もう!リンネ、手を出すなよ。誠司も挑発するんじゃない」
「もう遅い!気高き悪魔を人間が侮辱する事など許されん、後悔させてやる」
「後悔?肯定でしょ」
「やめろって!」
一触即発な緊張した雰囲気にたまらず叫んだ。
「いい加減してくれ、こんな愚かな争いで怪我などされたら堪らない!」
しかし、睨み合う二人は俺に目もくれない!
「見下されたまま黙って耐えるだけ。なんて、僕だっておもしろくないよ。一矢を報いる事だって在るんだ」
「フン!虚勢だな。どちらがリュウトに相応しいか、手っ取り早く勝負しようではないか」
「望むところだ!」
「何を勝手な事を!」
これ以上、振り回されるなんて御免だ!
「リュウトも強い男が傍にいれば心強いだろう?」
「力だけが強さじゃない」
鼻息の荒い二人を見つめ、呆れていた。
争いを好むのは男の本能か?それとも俺の性格か?その上、人間界での良心だと信じていた誠司までリンネの提案に乗り「広い所に行こう」と息巻いているのだから、たちが悪い。
「……」
押し黙り俯いた俺は、目頭にぎゅっと力を入れた。悲しい事を考える。ああ、ハンバーグが世界から消えるのだ。もう二度と口にはできない。
するとツンと鼻先が刺激され、乾いた目元が再び湿り気を帯びてくる。今だ!と、確信したタイミングでゆっくりと瞼を閉じ、柔らかく見開くと都合よく涙が一粒だけ頬を伝って地面に落ちていく。
俺は、嘘泣きを完璧に習得したのだ!
「……何度、言ったら分かるんだ」
鼻にかかった声。ゆっくり顔を上げると、今にも掴み合いそうだった二人は、目を丸め、慌てた様子で身を引いた。
「な……!お前は、またそうやって……」
「リュ、リュウトごめん、頭に血が上って、そんなつもりじゃ」
だが、俺の気は治まらない。
「どいつもこいつも独りよがりな事を言いやがって!そんなに喧嘩がしたいのなら俺が相手になってやる!かかって来い!さぁ、どっちから来る!」
言うが早いか、引き攣り顔のリンネの厚い胸をドスッと拳で殴り、誠司の固い腕を強く押すように小突いた。誠司は短く呻き声を上げ、顔を歪ませる。上半身が大きく後ろに傾き、ガクッと膝から崩れ落ちた。
「そんな大げさな……」
言いかけたその瞬間、目の前を赤い飛沫が散った。
頬に生暖かい何かが付着し、反射的に拭うと白く細い指が赤く濡れている。まさか、と空を見上げたのと、リンネが俺を突き飛ばしたのは同時だった。
ざらりとした痛みと共に、頬が地面にこすり付けられる。誠司が膝を付きゆっくりと前のめりに倒れるのが見えた。
「誠司!?」
リンネが素早く、羽織っていた黒い外套を投げ、それは大きな影のように倒れた誠司を覆った。
ふと視界が暗くなった。俺を庇うようにリンネが折り重ったのだ。
目の端に銀色の軌跡が降り、口笛にも似た、鋭く風を切るような音が幾つか聞こえ、鈍い衝突音と共に地面で弾けた。
「顔を上げるな!俺達は今、何者かに攻撃されているようだ」
「攻撃!?誠司は!」
リンネが俺の顔の前に組み敷いていた腕をわずかに上げると、その隙間から地面に横たわる誠司の足だけが見えた。リンネの投げた外套に覆われ、顔は見えない。
鼓動が早まる。外套は切り刻まれ、地面に染み出したあの赤は……誠司の体から流れ出る血液に違いない。
「誠司!」
リンネの冷たく硬い手が俺の腿を這い、慣れた手付きで短剣を引き抜いた。
「借りるぞ。後は言わなくても分かるだろう」
「ああ!」
リンネの言葉に短い返事で答えた。リンネは俺だ、言葉にせずとも何を求められているのか、するべき事は理解できる。
俺の役割は一つ、誠司を救出する事だ。
背中越しに伝わるリンネの呼吸。そのタイミングが重なり、互いに集中するように呼吸をヒュウと細くさせた。
耳鳴りのような高音が空から落ちてくる。その瞬間、リンネはしなやかに体を跳ねさせ、弾丸のように空へと上昇していく。俺は振り返る事無く、真直ぐ誠司の元へと駆け出し、掛けられた外套を捲った。
「誠司!大丈夫か!」
「なんとか……」
自嘲するような声には張りがあり、わずかな安堵を覚えた。しかし、誠司の身に着けている紺色のジャケットは血に染まり、黒に変色して見える。
上空で大きな破裂音が聞こえた。今すぐこの場から離れなければならない。
「立てるな?」
誠司の肩の下に身体を潜り込ませ、支えあうようになんとか道路脇の植栽へと身を寄せると、誠司は力尽きたように、どさっと座り込んだ。
「出血が多いな、どこをやられた?」
素早くジャケットを脱がし、血を含み重たくなった上服をめくる。左胸から脇腹にかけ大きく一筋に、まるで刀で斬られたかのように皮膚が深く裂けていた。傷口は熟れた柘榴の果汁のようにじくじくと鮮血を滴らせている。
「酷いな」
思わず眉をしかめてしまう。
傷は胸だけではないようだ。左腕の一部は断裂し、赤黒い筋肉と筋が露出して見える。
「……大丈夫だよ、こんな傷」
「唾でもつけとけば治るか?」
「だと良いけど」
誠司は青白い顔で笑った。
「傷口は見るなよ、痛みが増す」
シュッと小気味の良い音を立て、ブラウスの襟からリボンを引き抜き、口に咥え二つに裂いた。それを手際よく誠司の体に巻き付け固く結ぶ。
一体何が起こったのだ、とは口には出さなかった。いや出せなかった。
誠司も分かっているだろう、俺のせいだ。
一瞬だけ見えた銀色の軌跡は真空の刃、それは的確に誠司を狙い放たれたものだ。
そして、それは確実に死に至るよう、誠司の心臓を狙っていた。
「大丈夫か?」
気丈に振舞っていた誠司だったが、とうとう苦痛に耐えかね、背を丸め横たわった。
息をする事も苦しいのだろうか。呼吸は浅く、時折、呻き声が混じる。
早く手当てをしないと命にかかわるだろう……。
「様子を見てくる、リンネがどこかで戦っているはずだ……っ」
立ち上がった俺の足を誠司が弱々しく引いた。
冷たい指先は震えている。
「危ないから……」
「何をバカな!俺よりもお前の方が危ないだろう!早く手当てをしないと死ぬぞ」
俺に魔力があったのなら、この程度の傷、癒す事も容易いというのに!
助けを求め空を見上げたが、リンネの姿はない。
「誠司、通信機で助けを呼ぶか、そこの民家へ駆け込もう。動けるな?おい!冗談じゃねぇぞ」
無意識に握りしめた手の中が、血と汗でぐっしょりと濡れていた。
この凍てつくように感じる寒さは恐怖だ。
「誠司、しっかりしろ!」
返事はない。だが、呼吸はある。まだ生きている。
濡れた手のひらを、制服のスカートにこすりつけた。しかし緊張と恐怖で体の震えが治まらない。
人間とはこんなにも脆いのか?こんな傷で命を落とすはずがない。
「誠司!死ぬなよ、俺が助けてやる」
だが、泣きマネしか芸の無い今の俺に、何が出来ると言うのだ。
誠司の顔から刻一刻と赤みが失われ、体からは力が、生気が抜けていくのが見て分かる。
こんな馬鹿げた事で誠司を逝かせるわけには行かない。
しかし俺が誠司を助けなければ、誰が救えるというのだ。血が逆流していくような高揚感が胸を締め付ける。友を死なせはしない!
「暁の陣を湛えよ!」
癒しの術を怒鳴るように叫ぶ。その声はただ虚しく響くだけだ。何も起こらない。
無駄な悪あがきか、俺の魔力は封じられている……。
「命をつかさどる精よ!」
諦めきれず精霊を口寄せしたがその姿を現すことも無い。
冷たく震える誠司の手に、俺の手を重ね、ぎゅっと目を瞑った。
「誠司……!すまない。全て俺のせいだ!いくら懺悔しても足りない、無力な俺を憎んでくれ」
誠司は瞼を固く閉じ、歯を食いしばり痛みに耐えていたが、ふっと力を抜き口元を緩めた。ふわりと笑う誠司の目元には笑い皺が浮かんで見える。
「……ありがとう」
「誠司……」
パンッ
自分の頬を両手で叩いた。ぬるりとした感覚は誠司の血だ。
「しっかりしろ!」
自らを奮い立たせるように叫んだ。
「絶対に助けてやる!」
躊躇う事無く指を歯で傷付け、滴り落ちたその血を横たわる誠司の胸に押し付けた。
力がある者は、所作を省略しても魔術は起動するが、そうでない者は手順を踏まねばならない。
姿勢は正しく、声は気取りすぎなほど、凛と空間に響かせるのだ。
集中しろ……!
初めて術を習う子供のように丁寧に、力に驕る事は無く!
まずは己の名を示すのだ。
「我が名はリュウト・エテルナ賢人の真理、常闇の王」
やはり一度目と同じように手ごたえはまるでない無い。
だが諦めるわけにはいかかった。今度はより強く、全身を引き絞るように集中し、再び術の起動の手順へと戻る。
「我が名はリュウト・エテルナ賢人の真理、常闇の王……!」
汗が頬をつたい、顎から滴り落ちる。乱暴に額の汗を拭って大きく息をついた。
誠司の端整な顔から、表情が消えていく。
「誠司!苦しみから解放されると思うなよ、俺が生きる苦しみを実感させてやる……!」
俺になら出来る。
俺は誰だ!
俺は、大悪魔を冠し異名を名乗り、夜を駆け魔界に君臨する絶対的強者!
「我が名はリュウト・エテルナ賢人の真理!常闇の王!」
一息で名乗り上げると、大きく息を吸った。祈るような気持ちでその時を待つが、術の起動は感じられない。
誠司の胸の上で俺の白く華奢な両手は血に赤く染まり、酷く残虐に見えた。
俺が誠司を死に追いたてたのだ。
いっそ、一思いに。これ以上苦しまぬよう、俺の手で誠司の命を絶つべきだろう。それが無力な俺が誠司にしてやれる唯一の救いなのかもしれない。
誠司の首に視線を移した、その瞬間。
背後から冷たい風がヒュウと起こった。町の空気とは違う、痛いほど張詰めた冷気だ。胸に確信めいた期待が膨らむ。
だが、気は抜けない……。術は最後まで紡がなくてはならない!
「深遠の淵……玄奥の教理」
空気の渦が俺の体を包み、甘栗色の長い髪を逆立たせる。
指先がビリビリとした熱を持ち、橙色の柔らかい光が四方から、ゆらりと集まってくる。
覚えのあるこの感覚……!
「深奥の道理……聡明の潮」
痛いほど胸が高鳴った。頬が高揚し熱くなる。
集まった光は巻き上がる空気の渦の中で、赤と紫、青と黒と刻々と色を変えながら弾け、バチバチと音を立てその時を待つ。
「暁の陣を湛え、生命の輪を繋いでみせよ!」
光は輪となり珠となり、輝きながら大きく砕け、なお強い光を放ちながら次々と誠司の体へと吸い込まれていった。
術が成立したのだ!
肉が抉れ筋のように見えていた腕も、見る間に復元され僅かな傷跡へと変貌を変えて行く。
気を失い白い顔で眠っていた誠司の頬に、赤みが差した。
「誠司!」
黒い瞳が俺をぼんやり見つめ返した。
「気が付いたか!」
「……ここ天国なの?」
「いや、逝きそびれたんだよ」
誠司は穏やかに目を細め「制服が血だらけだ、七瀬さんに心配されるね」と、苦笑いを浮かべ半身を起こしたが、俺は脱力から、へなへなと腰が抜け、しなだれるように誠司の胸にもたれかかってしまった。
誠司は戸惑いながら、俺の腰を強く抱き支えた。
「……まだ痛い所はあるか?呼吸は苦しくないか?」
「大丈夫だよ。泣かないで。僕はどこも痛くないから」
「そうか、良かった!誠司が死んでしまうかと思った……」
「ありがとう」誠司は爽やかに礼を述べ、優しく俺の涙を拭ってみせる。
「……俺の術が正しく成立したようだな」
ふいに覗き込んだ誠司の瞳に写る俺が、ぐにゃりと頬を緩め、大きく魅力的な目をうんと細めた。
「フハハハハハ!」
堪えていた笑いは止められなかった。だが、握りこぶしを作り、腕を手前に引いてしまいたくなる衝動は抑えた。
誠司がぎょっとしたように仰け反るが、俺の高笑いは止まらない。
俺は今、魔力の漲りをその手中に感じている。俺はもはや、か弱き乙女では無いのだ!
いや、乙女であるのも時間の問題かもしれない。
封じられた魔力が戻ったのなら、男にも戻れるはず!
「ククク……誠司!この姿でお前に会うのもあと僅かなのかもしれん、その目に焼き付けておけ」
「え?」
トスッ音を立て、男の俺、リンネが空から舞い降りてきた。
そして何も言わず、俺の肩を掴み誠司から引き離すと、カランと何かを地面に放り投げた。割れた仮面が二つ、地に転がっていた。
見覚えのある、あの赤い仮面。
それに「わっ」と、勢いよく身を退けたのは誠司だ。
リンネは不満そうに「命拾いしたのか」と誠司を一瞥した。
「リュウト、この仮面からカリガネの声がしたが」
「……この仮面はカリガネ依代だ」
「ああ、なるほど。しかし、あんな狼狽したカリガネの声を聞いたのは始めてだ」
リンネの姿を見たカリガネは、俺が男の姿に戻ったと勘違いしただろうか。
そうであれば都合が良い、これで誠司を危険に晒す事はもう無いのだ。
「だが、どうしてカリガネは俺の居場所が分かったんだ?やつの指輪はもう処分したはずなのに」
「指輪?これの事か?」
リンネが胸元から取り出したのは、金の指輪。ホズミに捨てさせたあの指輪だ。
「ど、どうしてそれがここに……!」
「どうしてって、最初から持ち合わせて居たが……」
「それがカリガネに居場所を知らせているんだ!捨てたはずなのに……って、あ……あれ……」
熱い飴を伸ばすように視界がぐにゃりと伸びていく。
「リュウト?」
「おい、どうした」
二人の男の輪郭と青い空が霞み、白い世界に意識が攫われていく。
苦しくは無かった、心地の良い真綿に包みこまれるように落ちていった。




